ウグイスカグラ 鶯神楽
Lonicera gracilipes Miq. (1782)
科 名 : スイカズラ科 Caprifoliaceae
属 名 : スイカズラ属
Lonicera Linn. (1737)
別 名 : ウグイスノキ、グミ
原産地 : 本州、四国、九州の山野。日本固有種
用 途 : 庭木

植物園でも まれにウグイスの声を聞くことがあるが、この木にとまっているのを見たことはない。色が似ているメジロを見かけたことはある。
優雅な あるいは ユーモラスな名前であり、花は小さくかわいらしいが、木の姿は優雅とは言えない。

70番通り        2012.9.25.
典型的な 低木・灌木の樹形。高さは2m強   ↑

落葉樹    2011.1.23.
1月だから まだ枯れ木に見える。ところが・・・・

早くもつぼみが       2011.1.23.
2010年の暮れから寒い冬だったのに、新葉の展開とともに花が顔を出している。でも すぐには咲かない。

本格的には3月から      2000.3.18.
初めのうちは花柄が伸びずに咲いている。花も小さめ。

盛んに咲いている状態       2011.3.27.
葉が少ないので目立たないが、全体としてピンク色をしている。

次第に花柄が伸びてから咲くようになる 2012.3.22.
雄しべから花粉が出ている。初期の葉の周囲は赤紫色。

まれに 花が二輪付くことも    2010.3.30.

ほとんどは 一輪      2012.4.10.
次第に葉の数が増えてくる。花筒の基部に膨らみがあり、そこに蜜があるようだ。花のサイズは 直径・長さとも 1.5センチ程度。5月まで咲き続ける。子房の基部に付いた細長い苞がかわいらしい。

幹の様子
道路の反対側から見たもの。根際または地下で数本の幹が分かれている。灌木は 高木のように「主幹」が明瞭でなく、次々と新しい幹が生えてきて、一般に10年以下で枯れて更新する。

新葉の様子        2011.4.24.
筑波植物園。黄緑色が 今年伸びた枝に付いた葉で、枝はまだ1節か2節しか伸びていなかった。やはり赤い縁取りがある。

産毛あり
全国に分布するウグイスカグラには、毛の多い少ないの変異差が多く、学名では変種名、和名では ミヤマ・・・、ヤマ・・・ などを付けて区別しているそうだ。
ミヤマウグイスカグラ    2011.5.6.
 L. gracilipes var. glandulosa 筑波植物園

若い実         2011.4.24.

熟した赤い実        2011.5.4.
早くに咲いたものか、熟すスピードが速いのか?。甘くて食べられるそうだが、試していない。
秋の葉         2012.9.25.
この枝では 5節が伸びている。

 
ウグイスカグラ の 位 置
F8 c   70番通り右側、ラクウショウの向かい側
 
名前の由来 ウグイスカグラ Lonicera gracilipes

ウグイスカグラ 鶯神楽 :
「ウグイス」は 鳥のウグイスに由来することは間違いなさそうだが、「カグラ」には 諸説ある。

まず、よく言われているのが
①「ウグイス ガクレ 鶯隠れ」の転訛。
「小枝が多くてウグイスが隠れるのに都合がよいことから」というのがその理由だが、3月頃のウグイスカグラにはまだ葉が茂っておらず、隠れることができないのではないか?
次は ②「ウグイス カグラ 鶯神楽」そのもの。
鶯が たくさんある小枝の上下左右に飛び移る様を、神楽の舞に喩えたもの。
③「ウグイス カクラ 鶯狩座」の転訛。
狩座 とは狩をする場所を意味するのだが、ウグイスに限らず 小鳥を捕まえる格好の場所という意味である。そんな言葉があったのか、という印象だ。
曲がった花の形を神楽の舞に見立てたもの という説もあるが、それでは ウグイスの出番がない。
②が単純でわかりやすい。

鶯谷駅や旅行先などで ウグイスの声を聞くことはあるが、姿は見たことがない。「鶯色」のイメージや声から想像するよりも、小さく地味な色の鳥だ。
ウグイス
Wikipedia より
小石川の園内では 春にメジロをよく見かける。

種小名 gracilipes:細長柄の
スイカズラ属の花は 通常2つの花が対になって、花柄(かへい)は 無いか 短い。ウグイスカグラの花は 細く長い花柄の先に付いてぶら下がるため。
スイカズラ (ニンドウ)

たまに二輪が対になっているものがある。大昔は、ウグイスカグラも みな二輪生だったのではないだろうか?

Lonicera属 :人名による
命名者は リンネ (1707-1778)。ドイツの植物学者 Adam Lonicer 、 Lonitzer (1528-1586) を顕彰したもので、『植物の属』(1737) に記載した。
それ以前には、トゥルヌフォールなどによって5属にわたって記載されていたものを、ひとまとめにした。
その5つとは、Caprifolium , Periclymenum ,
  Chamaecerasus , Xylosteum , Symphoricarpos
であり、『植物の種』(1753)に 13種・1変種を ロニセラ属として記載している。

現在は 最後の Symphoricarpos属は 復活している。

スイカズラ属 :
長い花筒(かとう)の奥に蜜があるので、花を摘んで蜜を吸うカズラ、吸い葛 がその由来である。

Caprifoliaceae スイカズラ科 : 保留名
トゥルヌフォール(1656-1708)が提唱していた Caprifolium 属は、リンネが『自然の体系 第一版』(1735)で発表していた。『植物の属』ではリンネがロニセラ属に統一して、スイカズラ科の基準属となっているものの、科名としては アントワーヌ・ジュシュー(1748-1836)が記載した Caprifoliaceae が一般に普及したために、保留名となっている。

ラテン語の caper ヤギ + folium 葉 だが、その名が付けられた Lonicera capifolium はヨーロッパ原産の種だが、花冠の外側に毛が生える以外は無毛とのこと。『園芸植物大事典』



植物の分類 : APG II 分類による ウグイスカグラ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
マツムシソウ目  レンプクソウ科、スイカズラ科
スイカズラ科 ツクバネウツギ属、スイカズラ属、オミナエシ属、タニウツギ属など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ