ユキヤナギ 雪柳
Spiraea thunbergii
Sieb. ex Blume (1826 または 1827)
科 名 : バラ科 Rosaceae
属 名 : シモツケ属 Spiraea Linn. (1734)
別 名 : コゴメバナ
中国名 : 珍種繍線菊 zhen zhu xiu xian ju
原産地 : 不確かだが、原産は中国とされる
日本では、川岸の岩場などで野生化している
用 途 : 庭木、花材

ラクウショウの先の広場。名札はないが、ユキヤナギ だろう。

咲き始めの状態       2011.3.23.
落葉低木で 花は前年の枝の腋から出る。付き方の細かな観察はしていないが、多数の総苞? がある。
樹 形           2013.3.19.
大小2株がある。今年は昨年に較べて、満開になったのが20日も早かった。高さは2m程度。
2012.4.9.

満開の状態        2012.4.9.
萼、花弁、子房はそれぞれ5つ、雄しべは多数。子房が赤くなっている。この後、種子ができるスピードが 驚異的に早い。

若い実         2012.4.22.
満開から 約2週間後。

完熟して落ちる種子      2012.5.5.
満開から 1ヶ月以内で タネができてしまう。

ナノハナの葉に落ちた種子      2012.5.5.

新しく伸びる枝   2013.4.23.
2013年は 色々な花が2週間ぐらい 早かった。

葉の様子        2013.4.28.
葉の形は「皮針形」で、細かな浅い鋸歯がある。

モモヤナギ
諏訪湖のほとりで、白いユキヤナギに混じって ピンクがかったものを見かけた。雑種か 色変わりの栽培品種か。
色が付いてしまっては「ユキヤナギ」とは呼べないだろう。

 
ユキヤナギ の 位 置
写真@: F8 b

70番通り ラクウショウの先、左側
F12 ab 60番と70番通りの間、チョウセンレンギョウと混在している

名前の由来 ユキヤナギ Spiraea thunbergii

ユキヤナギ : 雪 柳
ビッシリと付く白い花が雪のようで、葉が柳に似ているため。雪 と 柳 が一緒なのは不自然なのだが、花が咲く時には葉も出ているので、よしとしましょう。

ヤナギとの共通点は、葉の形が「皮針形・狭い皮針形」で「細かな鋸歯」がある事だが、同じ個体でも場所によって差があるので、サイズはまちまち。ユキヤナギの葉裏は白くない。

 ← ヤナギ : 柳
柳と言えば、まず 「シダレヤナギ」 や 「ネコヤナギ」が思い浮かぶが、シダレヤナギの葉は「線状皮針形」であるし 裏も白いため、ユキヤナギとは似ていない。
シダレヤナギ

ネコヤナギは葉の形が「長楕円形」で、ユキヤナギよりも幅広のことがあるが、結構似ている。

似たような葉を探すと、タチヤナギがあった。
ネコヤナギ タチヤナギ

別名 コゴメバナ、コゴメヤナギ : 小米花、粉米柳
小さな白い花が 米粒のように見えるため

種小名 thunbergii : 人名による
命名者 シーボルト(1796-1866)が、自身の約50年前に渡来した先輩である ツュンベリー(1743-1828、来日は1775年) を顕彰したもの。

中国名 珍種繍線菊 zhen zhu xiu xian ju
この名前は『Flora of China』www.eFloras.org による。
同ホームページの 繍線菊 は「ホザキシモツケ」で、その特殊なものという名称になっているが、花の付き方はまったく違う。

漢名 噴雪花『園芸植物大事典/小学館』

シモツケ 下野 属 :
シモツケが 下野の国(栃木県)で古くから栽培されていたため。『植物の世界/朝日百科』
シモツケ

Spiraea 属 :
ギリシア語 speira (英語の spiral )渦巻き に由来し、この属に 果実が螺旋状になっている種があるというが、はっきりしない。

バラ科 Rosaceae :
ケルト語の 「赤色 rhod あるいは rhodd」 を語源として、古代にバラのラテン名となっていた。
バラ科の中は次の3つのグループ(亜科)に分けられる。
主な属として、
  ・ シモツケ亜科 :シモツケ
  ・ サクラ亜科 :サクラ属、バラ属、キイチゴ属、
          ヤマブキ属
  ・ ナシ亜科 : セイヨウカリン属、ビワ属、ナシ属、
          リンゴ属 Malus 、ボケ属


リンネが名付けたシモツケ属
シモツケ属は北半球の温帯・亜寒帯に広く分布しており、リンネは『植物の種』(1753) で、北米やシベリア原産のものを中心に11種を命名している。当然、リンネ以前に多くの学者が書物に記載しているが、リンネが名付けた(選んだ) シモツケ属の学名には、葉に注目したものが幾つもある。

学 名 種小名の意味 和 名 備 考
 属名 Spiraea  シモツケ属 属名については、すでにトゥルヌフォールが
使っていた
S. chamaedryfolia  (テーブルヤシ属のような葉の?) 意味は未確定、英語名は elm-leaf spiraea
S. crenata  鈍鋸歯のある 原産地:ヨーロッパ、シベリア、コーカサス ほか
S. filipendula  シモツケソウ属のような(葉の)  − 現在の正名は 不明
S. hypericifolia  オトギリソウ属のような葉の 原産地:コーカサス、シベリア、ヨーロッパ ほか
S. opulifolia  カンボク あるいは コゴメウツギのような葉の 現在の正名は 不明
S. salicifolia  ヤナギ属のような葉の  ホザキシモツケ 原産地:アジア・ヨーロッパの寒冷な湿地帯
S. sorbifolia  ナナカマド属のような葉の  ホザキナナカマド   → ホザキナナカマド Sorbaria属に訂正
  現在の学名は、Sorbaria sorbifolia
S. tomentosa  毛の多い 原産地:カナダ、アメリカ
S. trifoliata  三葉の   → ギレニア Gillnia属に訂正
  現在の学名は、Gillnia trifoliata
S. ulmaria  ニレ属のような(葉の)  セイヨウナツユキソウ   → シモツケソウ Filipendula属に訂正
  現在の学名は、Filipendula ulmaria
 葉の形容 以外の命名
 S. aruncus  ヤギの髭のような     → ヤマブキショウマ属の一種
  現在の学名は、Aruncus dioicus
色を付けたものは 正名、そのほかは異名となった


植物の分類 : APG II 分類による ユキヤナギ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
以前の分類場所  バラ目 トベラ科、アジサイ科、ベンケイソウ科、ユキノシタ科、バラ科、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
バラ目  バラ科、グミ科、ニレ科、アサ科、クワ科、イラクサ科、など
バラ科  シモツケ属、サクラ属、ボケ属、リンゴ属、ビワ属、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ