ユズリハ 譲り葉
Daphniphyllum macropodum Miq. (1867)
科 名: ユズリハ科 Daphniphyllaceae
属 名: ユズリハ属 
  Daphniphyllum Blume (1826)
中国名: 交譲木 jiao rang mu
原産地: 福島県以南から南西諸島まで
朝鮮半島南部、中国大陸
用 途: 庭木。 若葉を食用・飼料に
葉を正月飾りに使う

             ①:樹 形        2011.5.24.
下の段 70番通り、標識75番の手前の左手、塀の近く。写真は塀工事のために剪定される前で、奥から南を見ている。中央がユズリハで、左はヒメユズリハ。 
①:塀の外から       2011.11.4.
この後大きな枝が切られた。この木には 一部に両性花が付く。
      ①:剪定後   2012.2.21.
こんなに切らなくてもいいと思うのだが・・・。

  ②:本館横の大木  2012.1.18. ③:北側の良く繁った木 2012.8.9.
 奥の常緑の高い木、雌株で 約9m。  ここには 合計5本あり、雌株は2本。

③:幹の様子    2012.8.9.

①:譲 り 葉          2009.4.19.

①:未成熟の雄しべ  2008.4.19.
新葉 雄花 ともに展開してきたところ。 花序は前年の葉腋(葉の付け根)に付く。時に 葉が赤くなることがある。
この先の写真は すべて樹木① のもの。

開いた葯(黒) と 未成熟の葯(赤)   2008.4.19.
花被片・萼片はなく、雄しべだけが目立つ。
2012.4.24.

①:ほとんどが雄花      2012.4.24.
事典には ユズリハ属は「雌雄異株」となっているので、この木は雄株だと思っていたが いつのまにか実が生るので不思議に思っていた。今年になって よくよく観察したら、両性花が散在していた。
リング状に並んでいる雄しべの中央に、赤い柱頭と子房が見える。
飛散し終わった花粉が付いている。事典の雌花の絵は子房の周りに退化した雄しべが張り付いているが、これは完全な両性花である。中央は未成熟の葯。

①:できたての 実      2011.5.24.
黒いのが萎びた雄しべ。この木は両性花に実が付くので、数は少なめ


③:伸びた雌花序    2013.4.18.
園の奥 ③の位置には ちゃんとした雌株がある。雌花も 前年の葉腋(葉の付け根)に付く。花被片は無い。
雌花の詳細        2013.4.18.
前掲①の 両性花 に比べると シンプル。柱頭が唇のようだ。雄しべは子房の周囲に退化した形で残っている。( 部)

街路樹の雌株       2012.7.16.

葉の裏は白        2012.8.9.

赤黒くなった実 種子はひとつ   2011.11.15.
この年に伸びた枝の長さは 約10cm。来年の花が準備されている。

 
ユズリハの 位 置
写真①: F 7-8 70番通り 左手、塀際
写真②: D14bd 30番通り 右側、道路際。雌株
写真③: B4 ac 10番通り 右側、塀際。計5本

名前の由来 ユズリハ Daphniphyllum macropodum

ユズリハ 譲り葉 :
新葉が上に向かって開く前から 前年の葉が垂れ下がって、その座を譲るように見えるところから。「一部の葉」は春に落葉する。「譲る」という点では、すでに冬の間に済んでいる。 
事典の説明には「新葉が展開する頃 古い葉が落葉する」と書かれているが、一世代前の葉が落ちるのは おもに秋である。

養子を取ってでも「家系」を絶やすことなく引き継いでいった 徳川時代。だからといって、譲った後 すぐにおさらばではなく、隠居して子供を見守る「二世代同居」の形になっているところが目出度い・縁起がよいとされた。 しかも子孫を残すための花が咲き 実も生っている。 若葉と赤い柄、前年の濃い緑の葉とのコントラストもきれい。

正月の鏡餅には、代々(ダイダイ 橙)家督を譲るを(ユズルハ)、喜ぶ(コブ 昆布) などの語呂合わせで飾りに使われた。
なお、ユズリハは清少納言にも取り上げられている。
『枕草子』第40段に、葉の青さに対して「思いがけず」柄の赤がきらきらしく見えるのが「あやしけれどおかし」と表現されている。千年以上前から庭木として使われていたのだろうか?
 
種小名 macropodum:柄の長い
命名者のミクエルは、当時 トウダイグサ科であったユズリハ属に分類した。葉柄が湾曲するために「譲る形」となるわけで、重要な要素である。
 
科名・属名 Daphniphyllum:ゲッケイジュに似た葉の
ギリシヤ神話の女神 daphneは、迫られたアポロンから逃れるために 自身を木に変える事を望み、川の神である父が月桂樹に変えた という神話から、ゲッケイジュの意味を持つ。
daphne と「phllon 葉」を合成した語である。

なお、Daphne はジンチョウゲ属 でもある。

譲り葉 カレンダー
年によってずれがあるため、日付は参考
月日 葉の様子 備考
1月31日 北側 ③の木




(2012年)
3月18日 すでに新世代の場所は
空けてある



(2001年)
4月5日 新芽の芽鱗が見える
丸いのは苞に
包まれた花序



(2011年)
4月22日 新葉と雄花が展開
し出す



(2011年)
5月3日 (2011年)
7月8日 前年の葉柄の色が
淡くなる



(2011年)
9月10日 今年の葉が水平になる




(2000年)
10月21日 前年の葉が落ちる
この枝は伸びが大きい



(2001年)
12月9日 少し垂れ下がってきた

落ちずに残っていた
1年半前の葉が落ちる


(2000年)



植物の分類 : APG II 分類による ユズリハ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
以前の分類場所 ユズリハ目  ユズリハ科
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
ユキノシタ目  ボタン科、カツラ科、マンサク科、ユズリハ科、ユキノシタ科、など
ユズリハ科  ユズリハ属
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ