アブティロン・サンドウィセンス
Abutilon sandwicense Christoph. (1934)
← Abortopetalum sandwicense O.Deg. (1932)
科 名 : アオイ科 Malvaceae
属 名 : アブティロン属 Abutilon Mill. (1754)
原産地 : オアフ島 ワイアナエ山の標高 300~600 m の乾生林の急斜面。 現在はまれで、絶滅危惧種とされる。
英 名 : green flowered abutilon
用 途 :
撮影地 :
ハワイ州ハワイ島、2012年6月。
 

ハワイ島コナ市近郊の「エイミー ギリーンウェル植物園」で撮影した、絶滅危惧種。 参考文献は『ハワイ魅惑の花図鑑/武田和男』。

樹 形
図鑑には 高さ 1.5 ~ 6m、とある。 ここでは 約 4m。 
見学者が花を撮影中。

ハート型の葉
中の枝は ぐじゃぐじゃ!

つぼみ

開花直後の花
花弁も黄緑色で、英語名 green flowered abutilon がぴったり。
時間が経った花
前図よりも 花弁に色が付いている。 

果実ができた状態

種子がなくなった 古い果実


名前の由来 Abutilon sandwicense

和名 なし
仮名は 種小名より、「ハワイイチビ」。

種小名 sandwicense : サンンドウィチ島産の
サンンドウィチ諸島は ハワイ諸島 の旧名称。 第三回目の航海の1778 年にハワイを訪れたキャプテン・クック (1728-1779) が名付けた。
サンンドウィチの名は航海のスポンサーのひとり、イギリスの貴族・政治家である 第4代サンンドウィチ伯爵、ジョン・モンタギュー (1718-1792) を顕彰したものである。 島の名前として 1840年代まで使われたが、その後、現地名の「ハワイ」の方が使われるようになった。

本種にこの名を付けたのは、アメリカの植物学者でハワイの植物を研究した、オットー・デグナー(1899-1988)。 1932年の命名時に、Abortopetalum 属を立てたが、すぐに古くからあった アブチロン属 に訂正されてしまった。

属名 Abutilon
ギリシア語の a (否定)+ bous (牝牛)+ tilos (下痢) で、この植物が家畜の下痢を止める効果があるといわれている 事に由来する。

イチビ属 : 
イチビ Abtilon theorhrasti は熱帯アジア原産で、昔は茎の繊維を麻の代用とするために栽培された。 また、茎や葉の炭を灯台などに火を付けて廻る時の、焠燈(つけぎ、)火口(ほぐち)として利用したため、「ホグチガラ」の別名がある。 
『語源辞典』の吉田金彦氏によると、イチビの由来は「早く火がつく」という意味でイチ(逸) ビ(火)、いち早く火が付くことから。
イチビ
Wikipedia より
 
アオイ科 葵科 Malvaceae :
「アオイ」は 現在は「タチアオイ」を指すことが多いが、フユアオイ、ゼニアオイ、トロロアオイ、モミジアオイ などの総称でもある。

万葉集に アオイ と詠まれているのは、古くに渡来し 初夏に花が咲く 「フユアオイ」 だが、アオイの語源には定説がない。
同じく 吉田金彦氏によると、「朝鮮語の ahok を基にして、わが国で アハウヒ→アホヒ→アフヒ→アオイ と変化したものであろう」
アオイ科の基準となる属は、ゼニアオイ属 Malva 属で、世界中に、約85属、約1,500種があり、衣料用として重要なワタを含んでいる。

Malva はギリシア語の malache (やわらかくする の意味) に起源するラテン古名に由来するということで、植物の粘液に「緩和剤」の効能があるためである。『園芸植物大事典』

なお、徳川のアオイの紋は、ウマノスズクサ科 フタバアオイの葉をデザインしたもの。 

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