アルディシア・フミリス
Ardisia humilis Vahl (1794)
科 名 : ヤブコウジ科 Myrsinaceae
属 名 : ヤブコウジ属 Ardisia Swartz (1788)
英 名 : low shoebutton
原産地 : 中国南部、海南島、ベトナム、フィリピン、インドネシア・ジャワ島
用 途 : 花を観賞するために植えられる。
撮影地: インドネシア


ボゴール植物園のレストラン近くにクスノキ科の樹木を集めた区域があり、その一角にあったものである。

丁度花が満開だった。
 
樹形 高さ 約4m

 
幹の様子 葉の様子

 
つぼみ できたての 実

 
花の様子
花の色には、木によってピンクの濃淡があった。
 
ひとつ上の実の写真の種は、花が白くて、同種 別品種のようだ。
 
木の横はブロックの舗装となっているが、ピンクの星が散らばっていた。 

 
名前の由来 アルディシア・フミリス Ardisia humilis
 
和名 : なし
 
種小名 humilis : 低き という意味 

権威あるボゴール植物園であるから、名札は信用することにするが、この木は5mほどある。

ここで植物用語の高さの表現をおさらいしたい。





大高木
中高木
高木 喬木
亜高木
低木 灌木
矮性低木
: 30m 以上
: 8〜30m
: 8m 以上
: 3〜8m
: 0.3〜3m、主幹がはっきりしない
: 0.3m 以下 同上
植物用語事典/八坂書房 などによる
 

別の考え方もあるが、「低木」といえば3mまでである。

Wikipedia の本種の説明には「高さ1〜2m、まれに5m」とあったが、ボゴール植物園にあった何本かの木はすべて大きかった。

ヤブコウジ属といえば、ヤブコウジをはじめマンリョウやカラタチバナなど、灌木とも言えないような背の低い木のイメージが強い。
こんな大きな木なら、むしろ「高い」である。

「低い」という学名を付けた原因として考えられるのは・・・・

ひとつには、本種の命名は1794年で 200年以上前のことなので、「その時までにわかっていた Ardisia属がすべて本種よりも大きかった」 という事があげられる。

アフリカを除く世界の熱帯から温帯にかけて 約300種があるということなので、本種の命名時点で何種のArdisia属が定義済みだったのか、を調べるのは大変だ。

いくつかのヤブコウジ属の命名年を調べてみた。
和名  学名  命名年 樹高
本種 Ardisia fumilis 1794 ? m
マンリョウ A. crenata  ? 0.3〜1m
ヤブコウジ A. japonica 1825 0.1〜0.3m
シシアクチ A. quinquegona 1825 数m
カラタチバナ A. crispa 1834 0.5m前後
モクタチバナ A. sieboldii 1867 3〜10m以上

もう一つの可能性は、「低いのは木の高さではない」ということである。

例えば 「子房の位置」とか 「葯の付く位置」など、何か別のものがそれまでの種類よりも「低い」ために 命名されたのかも知れない。
 
Ardisia属 : 
ギリシア語の「ardis 矢の先 または 槍の先」に由来する。

本属の雄しべの「葯」が、鋭く尖っていることにちなんでいる。
5本ある雄しべは くっついているように見える。
雄しべの中央から、線状の雌しべの尖端が突き出ている。
 
ヤブコウジ属 : 藪に生えるコウジ 柑子 の意味
コウジ」という言葉は聞き慣れないが、日本固有の柑橘類で、別名を「ウスカワミカン 薄皮蜜柑」という。

コウジはタチバナの近縁種 だそうだが、その葉や果実に 「ヤブコウジ」が似ているために名付けられたことになる。

にわかには信じがたいが、コウジの実物を見たことがないので 何とも言えない。
 
ヤブコウジ 群落

小石川植物園 高さ 20cm

Wikipedia より
 
ピンクの花柄 落下した花
東北大学薬学部 薬用植物園
 
詳しい観察はしていないが、花弁の形だけは本種に似ている。
 
ヤブコウジ科 Myrsinaceae
科の和名はヤブコウジだが、学問上の基準属は 「Myrsine属・タイミンタチバナ属」 である。

Myrsine の由来は不明。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press
        園芸植物大事典/小学館
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
        Wikipedia
        図説 花と樹の大事典/植物文化研究会
世界の植物 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ