ア サ 
Cannabis sativa Linn. (1753)
科 名 : アサ科 Cannabaceae
属 名 : アサ属 Cannabis Linn. (1735)
中国名: 大麻 (Dama)
英語名: hemp
原産地 : インド、イラン
用 途 : かつては麻酔剤、果実は七味唐辛子の一成分として使われた。
老人など体の弱い人の便秘薬、種子油は石鹸やワニスの原料、靱皮を繊維に用い、衣類・ロープ・キャンバス地に使われる。
皮を剥いだ茎(苧殻)はお盆の時に迎え火・送り火に用いる。
撮影地 : 中国

中国雲南省大理の湖、「じ (さんずい に耳)海」 西側の山のふもとで見たもの。 「大麻だ!」と教えられて、それだけで興奮状態・・・・。

国道から少し離れた民家が並ぶ道沿いであり、道端に生えているものと、明らかに栽培されているものとがあった。 

『雲南天然薬物図鑑』(2004)には、「現在、雲南全省で栽培されている」とある。幻覚成分を含まない品種もあるそうだが、日本では、手にとって間近に見ることはできない。

樹 形
一年草なので樹ではないが、高さは 1.8 m。 3mにまでなるそうだ。
すぐうしろに トウモロコシが育っている。

道端にも タチアオイと

根元
根元で直径 約 2cm。 採れる繊維の長さは 2cmとのこと。

葉の様子
長い柄に付く小葉の数は、事典によって、 5〜9枚 あるいは 3〜11片となっている。 右のものは10枚であった。 幅 20cm。

開花の様子
撮影時には、雌雄異株という知識がなかったが、この株は「雄株」であった。

雄花
5枚の萼だけで、花弁はない。 雄しべの大きな葯が下がっている。

名前の由来 アサ Cannabis sativa

アサ 麻
 : 
広義では繊維が取れるほかの植物(アマなど)も含まれる。
由来としては、
@ 青い皮から繊維(ソ)を採るところから、「アオソ」が転訛した。
A 青割「アオサキ」の略語。
B 「浅い」の意味から。     などの説があるが・・・。

漢字の「」の元の形は「林」で ”まだれ”が無い。
「木」と同じ形の古い象形文字 ”ヒン”(皮を剥ぎ取るアサ の意味)がふたつ並び生えている形を表している。

これに、反物を意味する ”ガン厂”、あるいはその変形”ゲン广”を加えて、麻で織った繊維を表した。

アサに麻酔作用があるところから、「シビレる」という意味が加わった。
 
種小名 sativa : 「栽培された」という意味。
有用植物であるために、中東では 紀元前20世紀には栽培されていた、ということであるが、植物の特徴を捉えて名付けるべき種小名に「栽培された、播種の」 はないでしょう。
日本での栽培も、有史以前からのようだ。 7世紀以降は、国家的に栽培が奨励されたという。
 
Cannabis 属 :
アサに対するペルシア名 kanb からできたギリシア語の古い名前。
                               『花と樹の大事典』
梵語の cana:アシ と pis:イラクサ からできたギリシア名 kannabis より。                     『植物学名辞典』
 
アサ科 :
2属 3種しかない 小さな科である。
もう一属は、ビールに欠かせない「ホップ」の ホップ属 Humulus属。

エングラーの分類法などでは、「クワ科」に含まれる。

参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
        雲南天然薬物図鑑/雲南出版集団公司
        花と樹の大事典/植物文化研究会
世界の植物 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ