ベニサンゴも アルピニア・プルプラタと同様に深紅の花が美しいため、日本国内の温室でよく育てられている。
ドミニカ国立植物園では、正門広場の一角、遊覧トラム発着所からすぐの日の当たらない場所に植えられていた。
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日陰に生えるベニサンゴバナ |

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苞 と 葉の様子 |
花のアップ |
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葉は葉脈が目立つ。 |
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花が咲く前は先の尖った緑色の苞の集合が目立つが、花が咲き出すと派手な色で隠れてしまう。
キツネノマゴ科の花弁は筒状の花で、大きくは2つの唇状に分かれる。さらにベニサンゴバナの手前の花弁(下唇)は深く3つに割れている。
雄しべの黄色い葯のおかげで引き締まっている。
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名前の由来 ベニサンゴバナ Pachystachys coccinea |
ベニサンゴバナ : 紅色のサンゴバナ の意味 |
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種小名 coccinea : 緋紅色の という意味 |
苞の色が紅色のため。
coccinea という種小名を持つ植物も、極めて多い。
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英語名 Cardinal's guard : 枢機卿の番兵? |
枢機卿といえば「赤・緋色」の代名詞だが、Cardinal's guard が具体的になにを指しているのかがわからない。
バチカン市国のスイスの衛兵は、青と橙色が目立つ制服を着ている。 |
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Wikipedia より
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Pachystachys属 : 和名なし |
属名に名前を付けるとしたら、やはり ベニサンゴバナ属となろう。
Pachystachys はギリシア語の pachys (厚い) と stachys (穂 ) の合成で、穂状の花序にちなんでいる。
熱帯アメリカ、西インド諸島に6種があるそうで、ドミニカ共和国も含まれているかもしれない。
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キツネノマゴ科 Acanthaceae : |
キツネノマゴ科の「基準属」は ハアザミ属 Acanthus であるが、科の和名はキツネ...。 なぜだろうか...。
アカンツス属の植物は地中海沿岸、熱帯アジア、熱帯アフリカなどの原産であるために、「ハアザミ」と言われても馴染みがない。 このため、代わりに数少ない国産の本科のひとつ、キツネノマゴを科名としたものと思われる。
およそ何でも載っているはずの『園芸植物大事典』には、科名となっている「キツネノマゴ」の写真どころか解説もない。 同じくキツネノマゴ科の
イセハナビの記述もない。不思議である。
『花と樹の大事典』によるとキツネノマゴは「キツネノママコ」の転訛で、「ママコナ」に似ているが劣っているという意味である。
はっきりとした由来はわかっていないようだ。
「狐の孫」という字もあて字であろう。
由来を考えようにも実物を見たことがない。そこで、 |
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「キツネ〜」が付く植物はいくつかあるが、代表的なもとしては「キツネノカミソリ」「キツネノボタン」「キツネヤナギ」である。
いずれにせよ「キツネ」という名が、いい意味で使われることはなさそうだ。
Acanthus は苞に刺がある種類が多いところから、ギリシア語の「トゲ」という意味の言葉に由来しているとのこと。
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ハアザミ Acanthus Mollis |
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ハアザミの場合は花の下側にある苞の周囲に刺がある。
上側の紫色の部分は「蕚」だそうだ。
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ベニサンゴバナ ← サンゴバナJusticia carnea Lindl. (1831) |
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サンゴバナ |
サンゴバナもキツネノマゴ科であるが、ベニサンゴバナとは属が異なり、Justicia属 キツネノマゴ属である。
ひとつひとつの花の形はベニサンゴバナに似ている。
花序全体の形とその色が、ピンクのサンゴを思わせるところから名付けられた。 |

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参 考 |
キイロサンゴバナ (仮名) 黄色珊瑚花 : Pachystachys lutea
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ドミニカの ベニサンゴバナPachystachys coccinea の隣には、和名のない「Pachystachys lutea」も植えられていた。こちらは中米メキシコから南米ペルーにかけてが原産地となっている。
花弁は白であるが黄色い苞が目立つので、和名は「キイロサンゴバナ」とした。
種小名の lutea も「黄色の」という意味である。 |
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Pachystachys lutea |
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足もとに ベニサンゴバナ も混ざっている。
ルテアの「下唇」の切れ込みは1つで、浅い。 |
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参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
園芸植物大事典/小学館、
週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
Wikipedia、
春日健二氏のホームページ「日本の植物たち」 |
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