ダカール大学構内、薬学部の小さな植物園の近くに生えていた。 めったに雨が降らない カラカラの道端にひょろひょろと、しかし ちゃんと花を付けていた。 よっぽど深くまで根を下ろしているのであろう。
種子に付く綿毛が「詰め物」として利用されるそうだ。
今回 何度目かのドミニカ共和国で、ついに実と種子を見ることができた。
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樹形 セネガル |
街路樹として |

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右の写真はドミニカ共和国
高さ4m弱
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花と葉 |
花のアップ |
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葉の形 |
葉の形 |

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これぞ 対生 !
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長さ 15cm の果実 |
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ガガイモ科であり、フウセントウワタなどと同じである。
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果実が開いた状態 |
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鱗のように並んでいるのが種子である。
種子にはタンポポの綿毛のような毛が付いている。
開いて少し時間が経っているが、まだひとつも飛んでおらず、綿毛はタネに隠れて目立たない。
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すべて飛んでしまった跡 |
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種子たちはハンモックのように両側で吊られた、舟形の部分に付いていたのである。
全部がうまく風で飛ばされるような仕組みとなっている。
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綿毛の付いた種子 |
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種子自体の長さ 5〜7mm。綿毛の長さ 15mm。
風が弱くて すぐに道路に落ちてしまったが、さらに風が吹くと、道路の上をどこまでも転がるように動いて 行ってしまった。
左下は4色ボールペン。
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名前の由来 Calotropis procera |
和名はなく、学名をカタカナ表記した。
仮名は「ムラサキカイガンタバコ」である。
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種小名 procera : 「高い」という意味。 |
proceraの由来を説明する前に、リンネが命名した「Calotropis gigantea カイガンタバコ」の方を先に説明する必要がありそうだ。
リンネは本種と同じ属の「カイガンタバコ Calotropis gigantea」を、『植物の種』(1753年)でガガイモ科の「トウワタ属」
Asclepias として分類した。
トウワタ属のほとんどは草本で背丈は低い。一方でカイガンタバコは5mにもなるため、「gigantea
巨大な」という名にしたわけである。
その36年後にカロトロピス・プロケラを命名したのは、イギリスの William Aiton
である。Aitonはキュー植物園の植物 5,500種を記載した"Hortus Kewensis"を1789年に出版した。
彼は本種を同じく ( リンネに倣って?) トウワタ属として分類したのであるが、本種は通常2m程度(環境適地では5m)であり、カイガンタバコよりは背の低い種であるため、「巨大な」に対して控えめに、「高い」という名にしたものと思われる。 |
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Calotropis カイガンタバコ属 : 海岸煙草属 |
タバコに似た葉を持ち、海岸近くの乾燥した地に生える植物「カイガンタバコ」を代表とする属名である。
学名はギリシア語で美しいという意味の"kalos" と、竜骨という意味の"tropis"を合成したもので、小学館の園芸植物大事典によると「花の各部の美しさにちなむといわれている」 とある。
竜骨というと普通、恐竜の背骨とあばら骨を考えるが、マメ科植物の蝶形花で一番内側の花びら、下部が合着した一組のことを竜骨弁(別名
舟弁 keel)と呼ぶ。
もし花に由来するのだとすると、この属特有の、下部がくるりと丸まった雄しべ
(肉柱体) が竜骨弁に似ているため、という事になりそうだ。
ハワイ大学のホームページから借用した「カイガンタバコ」Calotropis giganteaのアップの写真を参考に見ていただきたい。
これを見る限りでは、「タツノオトシゴ」の尾のように見えて、竜骨とは少し違うようである。
私は葉脈に注目した。右の写真はカロトロピス・プロケラの葉の裏側である。葉緑素が少ないためか、細かな毛が多いためか、白く しかも出っ張った「中央脈」と「側脈」が「美しい竜骨」に見えないだろうか?
私はこれが属名の根拠のような気がする。 |
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カイガンタバコ
Calotropis gigantea の花 |
Calotropis procera の葉 |
[ Copyright ] Dr. Gerald Carr
(Univ. of Hawaii )
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タバコの葉について
現在は品種改良されているためか、一般的なタバコの葉のイメージはもっと薄手で巨大である。
確かに形だけはカイガンタバコに似ているかも知れないが.....。
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参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
園芸植物大事典/小学館、
朝日百科/植物の世界/朝日新聞社、
植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
ハワイ大学 Dr. Gerald Carr のホームページ
(転載許可取得済み) |
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