チョウジノキ 丁子の木
 Syzygium aromaticum Merrill et L.M. Perry
                      ( 1939 )
  ← Eugenia aromatica Baill. (1877)
  ← Caryophyllus aromaticus Linn. (1753)
科 名 : フトモモ科 Myrtaceae
属 名 : フトモモ属 Syzygium
Gaertn. nom. cons. (1760)
中国名: 丁字香、丁香 ding xiang 、公丁香
英 名 : clove , clovetree
原産地 : インドネシアのマルク(モルッカ)諸島
用 途 : 乾燥させたつぼみを香辛料として使う。
精油を採取し、消化器の薬、香料として石鹸・歯磨き粉・菓子などに加える。
撮影地: シンガポール

香辛料として有名な クローブ。 学名は知らなかったが、形を見てすぐにチョウジだろうと思った。  シンガポール植物園で 2009年1月17日に撮影したもの。

                 樹 形        2009.1.17
高さ 5m。 10mぐらいになるそうだ。

葉の様子 新 葉 (熱川バナナワニ園)
革質でツヤがある。 新しい葉はピンク色、紅紫色である。

つぼみ
残念ながら 花が咲いている状態は無かった。 
中央がつぼみ。 左上が開花の途中。 その他は散ってしまった後のようだ。
右下のものには雄しべが残っている。

香辛料のクローブは 開花直前のつぼみ、 丁度中央にあるような丸く膨らんだものを摘んで 乾燥させる。 肉料理の臭い消しとして よく使われる。

たくさん落ちていた 葉と 咲き終わった花
花の色は白ということだが、赤い子房の方がきれいかもしれない。

名前の由来 チョウジ Syzygium aromaticum

チョウジ 
丁子 : 丁字 とも書く
香料としての丁子はもっと早くに入って来たようだが、植物としてのチョウジが日本に伝えられたのは8世紀 奈良時代頃といわれている。
中国(唐)や新羅を通じてのことであろう。名前も中国名と考えられる。

「丁」は象形文字であり、古い字形「●」はを上から、「┳」は横から見た形である。 現在の日本の「丁」には 釘の意味は見あたらない。

チョウジの蕾がに似ているために、古く中国で 「丁」の字が当てられ、「丁子」 「丁香」と呼ばれたものである。 和名は その音読み。
 
種小名 aromaticum : 香気のある、の意味 
残念ながら花が咲いていなかったので その匂いを嗅ぐ事ができなかったが、枝や葉にも良い香りがある。
 
フトモモ属 ( 蒲桃 属 ) :
フトモモ Syzygium jambos は熱帯アジアの植物である。 中国でも 福建、広東、貴州、海南、四川省などに自生している。
フトモモ
京都植物園
「蒲」の字は通常「ガマ」として使うが、柳の一種である「カワヤナギ」の意味もある。 
蒲桃の由来ははっきりしていないが、葉が細長く、甘くてバラに似た香りのある果実が生る植物を、「川柳の葉を持つ 桃」 としたのかも知れない。
 

フトモモ」も中国名に由来するが、意味としては 「桃」 が重複している。
現代の 「蒲桃」 の発音は「pu tao プ タオ」。 
「プータオ」 が 「プートオ」に変化したのだが、蒲桃としてはそれだけでよいのに、さらに理論的には不要な「モモ」が付いている。

「フト」だけでは物足りなかった?のか、漢名を見て 「モモ」を付け足したくなったのか?
 
Syzygium 属 :
事典のふりがなは「シジギウム」。 ギリシア語 syzygos で「癒合の、結合した」という意味である。 フトモモ属のある種の花弁の状態にちなんで名付けられたという。         『園芸植物大事典』

約 500種がある。
 
フトモモ科 Myrtaceae :
科の基準属は Myrtus ギンバイカ属 である。
ギンバイカ
小石川植物園
「ギンバイカ」は5枚の白い花弁を持つ小さな花を「銀の梅」としたものである。 地中海から南西ヨーロッパの原産で、常緑の葉と良い香りが古代人に尊ばれて、様々な神話や伝説に登場する。

属名は ある種のギリシア古名 myrtos に由来するそうだ。

なお、フトモモ科の中国名は「桃金娘 tao jin niang 科」。 これは日本にも自生する 「テンニンカ 天人花 Rhodomyrtus tomentosa」を科名に用いているためである。 

各国それぞれで科名や属名を付ける時に、学名的に科や属を代表する植物が自国にない場合、代わりに その国に自生する植物を代表として命名する事がよくある。 
テンニンカ
小石川植物園
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        Wikipedia、
        図説 花と樹の大事典/植物文化研究会
        芳香植物/南方日報出版社
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