クルシア・ロセア
Clusia rosea Jacq. (1760)
科 名 : フクギ科
Guttiferae または Clusiaceae
属 名 : クルシア属 Clusia Linn. (1737)
原産地 : 西インド諸島。  ドミニカも含まれる
英語名 : scotch-attorney , copey ,
Autograph Tree
用 途 : 熱帯では街路樹として使われる。
花がきれいなため庭園樹としても。
種子から採れる樹脂はボートのコーキング剤、薬用や香料として使われる。
撮影地 : ドミニカ共和国 、 ハワイ

ドミニカ植物園としては非常に珍しく、名札が付いていた。
現地産の植物であり、有用なためであろう。

以前は フクギ科にオトギリソウ属が含まれていたので、オトギリソウ科と呼ばれたことがあった。
 

copey という現地名は『園芸植物大事典』にも出ていたが、意味はわからない。
樹 形
事典には「小高木」とあるので、大きくはならないのだろう。 気根が出ているのがわかる。

この木は4m弱。 ドミニカ共和国には仕事で何度か出かけたのだが、2年前には、半分ぐらいのボリュームしかなかった。

ハワイ、オアフ島では各所に植えられていた。

緑陰樹               2013.7.6
オアフ島北部海岸の駐車場に植えられていたもの。 高さ 約 5m。

幹 の 様子
左の写真は2年前の状態。

葉 の様子
卵形の尖端がわずかに凹んでいる葉もあり、ハート型の団扇のようだ。

つぼみ
もう少しで咲くところだが、残念ながらドミニカでは 開花の写真は撮れなかった。 ハワイでは 間近ではないが開花を見ることができた。

ピンクのつぼみ            2013.7.5

芯だけ ピンク色            2013.7.6
つぼみの時の濃い色が、裏から透けて見えているのかも知れない。 直径 は 5、6センチ。 アップは撮れない。

そこで、
ハワイ大学 カー先生のきれいな写真をお借りする。

撮影:Dr. Gerald Carr
モナ・キャンパスの植物 より
この花の花弁は 完全な白。

実 の 様子
形は同じオトギリソウ科の「マンゴスチン」によく似ている。サイズは、やはり5センチである。 完全に熟すと 8つに割れる。

オアフ島の Wahiawa ワヒアワ植物園には 10m以上の大木があり、たくさんの果実が落ちていた。
落ちた実                          2013.7.4
タネも落ちているだろうと 木の下を探したがまったく無い。 

そこで梢を仰いで まだ生っている実を観察すると、小鳥が開いた実をついばんでいる。 鳥が食べてしまうことが判ったので、改めて落ちた実の中を調べてみると、朱色の小さな種子が見つかった。

種 子
残っていた種子を集めて 並べたもの。 実際には中央の8つの子房の中にあったもの。 種子が付いていた部分(白い髭)がはっきりとわかる。


名前の由来  Clusia rosea

和名 : なし
食べられないマンゴスチン、「マンゴスチンモドキ」。
 
種小名 rosea : バラ色の、淡紅色の、 の意味
カー先生の花の写真は白である。 萼や 実の萼には紅色がある。

『朝日百科/植物の世界』に載っている写真は、花びらにもピンク色がはいっていた。
 
Clusia  : 人名による
16世紀の園芸科学では最も影響力があったと言われる、フランスの植物学者、ドゥ・レクリューズ Charles de l'Ecluse (1526-1609)を顕彰したものである。 その ラテン名が Carolus Clusius
晩年はライデン大学の教授となり、ライデン植物園の創設にもかかわった。

熱帯アメリカに 約 100種。
 
英語名 scotch-attorney : 傷の薬 の意味
scotch : 切り傷 の attorney : 弁護士 である。
葉の汁などを塗りつけるのであろう。 
 
英語名 Autograph Tree : サインの木 の意味
葉に傷を付けると黒く変色するため、これに文字を書いてカード遊びをする、と 『Mabbeeley's Plant-Book』にあった。
 
タラヨウ
日本では「タラヨウ」の葉が同じように絵や文字書きの遊びに使われる。
Ilex latifolia Thunb. (1783)
「タラヨウ」の名の由来は、昔インドで経文を書き写す材料であったパルミラヤシが、江戸時代に「貝多羅葉(バイタラヨウ)」という名で輸入されたことに模したものである。
 
参考 : 以前の科名
オトギリソウ科 Culsiaceae : 弟を切った !

この項、「テリハボク」と重複、同じです。
オトギリソウ
オトギリソウの写真は、
『日本の植物たち』のホームページ、 春日健二 kasuga@mue.biglobe.ne.jp
から お借りした。

日本の植物たち』は、4,600枚 以上のきれいな写真を掲載したホームページです。

春日さん いつもありがとうございます。
まず「オトギリソウ 弟切草」の由来であるが、『朝日百科/植物の世界』には「植物の薬効」という囲み記事に詳しく載っているので、大意を引用させていただく。

出典は『和漢三才図会/寺島良安 編』で、18世紀初め 江戸時代中期に刊行された「図入りの百科事典」である。
国立国会図書館デジタル・ライブラリー より
 
 
平安時代中期の花山院の頃、晴頼という鷹匠がいた。
技術が高いだけでなく、鷹が傷を負った時には、ある種の薬草を使ってたちどころに治してしまうのだが、晴頼はこの薬草を秘密にしていた。
ところが その弟が薬草の名前を漏らしてしまい、怒った晴頼は、あろうことか弟を切り捨ててしまった。
そしてこの薬草は、「弟切草 オトギリソウ」として知れ渡ることになった。

オトギリソウ科は 40属 約 1,000種ともいわれるが、有名なのは果物の女王 マンゴスチン である。

園芸種として利用されているものは少ないが、オトギリソウ属のビヨウヤナギ や キンシバイ は街の植え込みでもよく見かける。
マンゴスチン属 マンゴスチン

ビヨウヤナギ キンシバイ

 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press
        園芸植物大事典/小学館
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社
        ハワイの植物/Dr. Gerald Carr
        MABBERLEY'S PLANT-BOOK/Cambridge Univ. Press
        日本の植物たちのホームページ/春日健二
        Merriam-Webster's online dictionary
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