ハマベブドウ 浜辺葡萄
Coccoloba uvifera Linn.(1759)
SENEGAL , Dominican Repubric
科 名 : タデ科 Polygonaceae
属 名 : ハマベブドウ属
 Coccoloba Linn.(1759)
英 名 : seaside grape , sea grape ,
platterleaf
中国名: 海葡萄
原産地 : アメリカ南部からメキシコ、西インド諸島、ブラジルにかけて分布。
用 途 : 果実は甘味、酸味があってそのまま食べたり、ゼリーなどに加工もされる。
 

ダカール大学植物園の入り口前に生えていた、大きな木である。
 
写真はまだ若い実であるが、熟すと紫色になるようだ。食べられることがわかったのは、日本に帰って事典を調べてからのことである。
粒のひとつの大きさは2cm程度。
 
葉の形 大きな木

葉は円形のものが多く、英語のplatterleaf "皿の葉"はここから来ている。
葉脈の中心が赤みがかって美しい。観葉植物として鉢植えにもされるようだ。
 

事典には通常は1.5〜2mの低木、時には6mになる とあるが、この木は7m以上ありそうだ。
雌花 雄花 ?
 
これも調べてからわかったことであるが、雄株と雌株が別々の「雌雄異株」である。
左は実が生っているので雌花で間違いない。別の日に撮った右の木の花は、どうやら雄花のようである。
 
生えている状態 名札あり

すべてにではないが、幅20cmぐらいの名札が立てられているものもある。
raisinierはフランス名。セネガルは旧フランス領である。
 
名前の由来 ハマベブドウ Coccoloba uvifera
 
ハマベブドウ
海岸地帯に生え、葡萄のような実が垂れ下がって生るためである。ブドウのように食べられるし、適切な名前といえよう。
 
ところで「ハマ」の付く植物は、ハマエンドウ、ハマギク、ハマナシ、ハマビワなど、索引を数えてみると40種近い種類があるが、「ハマベ」は本種だけである。なぜ「浜ブドウ」ではなくて「浜辺ブドウ」となったのであろうか?
「ハマ〜」の意味するところは、海岸地帯に生える ということで、必ずしも海の間近を意味するものではない。むしろ「ハマベ」の方が海に近いイメージがする。
 
中国名は「海葡萄」である。
和名で「海〜」の付く植物にはウミウチワ、ウミショウブ、ウミヒルモ、ウミミドリなどがあるが、高い濃度の塩分に耐える植物に付けられている場合が多いようだ。(塩生植物という)
 
ハマベブドウは海中で育つわけではないので、中国名の意味するところも「海辺葡萄」であり、英名の「seaside grape」がまさにこれにあたる。
 
伊豆熱川のバナナ・ワニ園では本種を「ウミブドウ」としていた。
 
ドミニカのハマベブドウ 見事なブドウ状の房

カリブ海のドミニカ共和国は、ハマベブドウの原産地に位置しているためか、海岸のいたるところに生えている。
左の写真は文句なしの「ハマベブドウ」である。
種小名 uvifera : ブドウ状の部分を有する という意味
和名では属名に「ブドウ」の名が付いてしまっているが、学名では属名・種小名を合わせて、ブドウ状の液果がなる木 という意味となる。
Coccoloba ハマベブドウ属 : Linn. (1759)
ギリシア語の kokkos (液果の という意味)と、lobos (莢サヤ)に由来するという。液果のほうはわかるが、サヤは違うような気がする。
200種あまりが中央アメリカ・南アメリカの各地に広く分布している。
タデ科 Polygonaceae : たくさんの膝 の意味。
ギリシア語の poly , polys (多くの) と gony (膝)からなり、タデ属の多くの植物にふくれた関節があることに由来している。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        植物学ラテン語辞典/至文堂
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