ハナニラ 花韮
Ipheion uniflorum Rafin. (1836)
← Milla uniflora R. Grah. (1833)
← Triteleia uniflora Lindl. (1830)
科 名 : ユリ科 Liliaceae
属 名 : ハナニラ属 Ipheion Rafin. (1836)
異 名 : Brodiaea uniflora Engl. (1887)
Leucocoryne uniflora Greene (1890)
Tristagma uniflorum Traub.(1963)
英 名 : spring starflower
原産地 : メキシコからアルゼンチン
用 途 : 観賞用に栽培される
 
 
撮影地 :
日本

春になると どこにでも咲いているハナニラ。
 
樹木を中心に掲載しているが、毎年何気なく「白い花」として眺めていたハナニラの花弁に、とてもきれいな青い筋や斑紋がはいっているのを発見し、美人を見直したので紹介したい。
 
しゃがんで写真を撮っていると それだけでニンニンク臭が漂うが、さらに顔を近づけて花の匂いを嗅いでみると、強くはないが 「良い香り」がした。
 
「観察」ということの大切さを再認識した。
 
小石川植物園 2001年4月7日
 
ハナニラは「バックシャン」である。
 
花弁の内側は真っ白でも、外側にははっきりとした縞模様がある。
正面の姿とは大違いで、隠れたところでおしゃれをしている。
 
花芽が伸びてくる 縞模様
 
表側は 灰青色の筋
 
よくよく見てみると、
表側にも、青紫で さまざまなかたちの「化粧」をほどこした美女たちが!
 

 
花弁の先端だけ ストライプ
 
園芸品種には、藤色が濃い「ウィオラケア」や紫青色の「ウィズレー・ブルー」というものもあるようだ。
 
(恐らく) 園芸品種のウィズレー・ブルー

 
名前の由来 ハナニラ Ipheion uniflorum
 
ハナニラ
 : 花の美しいニラ
葉や鱗茎に、同じユリ科の「ニラ」のような臭気があり、花は大型できれいなところから名付けられた。
 
ただし、ニラはネギ属で別属である。
種小名 uniflorum : 一輪の花の という意味
一つの花茎に一つだけ花を付けるため。
 
まれに2花が付くことがある と事典にあるが、見たことがない。
 
種小名を尊重すると、「ニライチゲ 韮一華」となろうか。
Ipheion 属 :
ギリシア語ということであるが、意味は不明。
 
「イフェイオン」という語感からすると、ギリシア神話の女神の名前がイメージされる。
 
ハナニラの学名を Tristagma uniflorum Traub. (1963)とする考えがあるが、参考にしている2つの事典にならって、Ipheion属とする。
 
ユリ科  Liliaceae
ユリ といえば 白。 でも「カサ・ブランカ」ではありません。
 
世界でもっとも古くから栽培されていて、キリスト教のマリアのシンボルでもある、マドンナ・リリー (Lilium candidum) に付けられたギリシア名 leirion と同じ意味を持つ、ラテン古名が lilium であったことによる。
『園芸植物大事典』
 
ケルト語で li が白の意味を表す。
 
ユリはかなり寒い地方も含めて、広く世界中に分布しており、日本でも古事記や日本書紀にも登場している。
 
ところが、百合の花の色は、白のほかに 黄・橙・朱・赤・ピンクなどがあり、人によっては「白」というイメージではないかも知れない。
 
 
ハナニラ
← ニラ 韮  Allium tuberosum Rottl. ex Spreng.
パキスタンから印度、東南アジア、中国に分布し、日本にも古くから伝えられて、体に良い おいしい野菜として利用されている。
ニ ラ (写真 : Wikipedia より)
 
ニラ は古代には「ミラ」、「カミラ」、「ククミラ」、「コミラ」などと呼ばれており、「ミラ」 が 「ニラ」に転訛したものである。
 
残念ながら「ミラ」の意味は不明である。
 
韮の葉は長く、また立ち上がるのに対して、ハナニラの葉は黄味がかっていて柔らかく、地面を這うように伸びる。
 
ニラと違って毒があるために、食べると下痢をするそうだ。
 
ハナニラの葉の様子

 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        図説 花と樹の大事典/植物文化研究会、
        Wikipedia
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