ホウガンノキ 砲丸の木
Couroupita guianensis Aubl. (1775)
科 名 : サガリバナ科 Lecythidaceae
属 名 : ホウガンノキ属
 Couroupita Aubl. (1775)
英 名 : cannonball tree
原産地 : 南アメリカ
用 途 : この珍しい実と良いにおいのする花を持つため、世界中の熱帯植物園に植えられているという。
街路樹にも使われているとあるが、ほんとうだろうか?
撮影地: ガイアナ協同共和国 、シンガポール、米国 ハワイ

ガイアナ(正確にはガイアナ協同共和国)は南米の北部、ベネズエラの隣りに位置する小さな国である。
旧英国領のため、南米唯一の英語国で左側通行。しかも国民はインド人と黒人がほぼ半分づつという、特異な国である。

ガイアナの首都ジョージ・タウンには広い公園(名前は植物園)とは別に、市民の憩いの公園 プロムナード・ガーデン があり、ホウガンノキはその両方に植えられていた。

プロムナード・ガーデンの木

奥の高い方がホウガンノキ。
高さは 10 数m。
 
木に近づいていく

花 と 実 ! 幹の様子
近づくと、太い幹から直接出ている細い枝のような花序が、古いものも落下せずに絡まり合っている。
反り返って上を向く花、重みでぶら下がる実、まるでSFの世界の植物である !  根元の直径は 1m 40センチも。
上を見上げる


オアフ島 ホノルル フォスター植物園

花には2種類の雄しべ

花の中央の雌しべをドーナッツ状に取り巻く短い雄しべと、そこからU字型に前方に付き出した、ピンクの長い雄しべがある。

長い方の花粉は、量は多いが結実しない不稔花粉だそうだ。 やってくる昆虫のための花粉 ( 撒き餌 ) と考えられている。


シンガポール植物園には 3本の大木があった。

家族連れが行き交う通路から少し入り込んだ所にあり、そのうちの1本には、おびただしい数の花が咲いていた。

ガイアナの花より心持ち黄色がかっている。
バラバラになって落ちている花を集めて、形がわかるように並べてみた。

シンガポール植物園のホウガンノキ

名前の由来 ホウガンノキ Couroupita guianensis

ホウガンノキ
英語名の cannonball tree を訳した名前と思われるが、英名があろうがなかろうが、「砲丸の木」間違いなしである。

もっとも現代のことであるから、砲丸は「大砲の弾」ではなく、「砲丸投げの玉」となろう。
男子用の砲丸は直径 12.5cm、重さ 7.26kg。サイズはピッタリである。実を持つとズシリと手応えがあるが、さすがに鉄ほどには重くない。
実の大きさは 15cm 大砲

『園芸植物大事典』には「現地ではこれを食用とする」とあるが、現在でも食べているのかどうか。市場では見かけなかったような気がする....。
実を割ってから時間が経っているためか、食べられるような状態とは思えない。 オアフ島 ワイメア渓谷公園で。

種小名 guianensis : ガイアナの という意味
原産地(のひとつ)を示している。
  ガイアナ共同共和国 : 南アメリカ大陸北部の国
Wikipedia より
 
ベネズエラの東に3つの小さな国が並んでいる。西から「ガイアナ協同共和国」、「スリナム共和国」、一番東は1946年まで植民地だったフランス領ギアナ(現在はフランスの海外県)であり、中南米にあって、それぞれ英語、オランダ語、フランス語が公用語の国々である。
 
有名な「ギアナ高地」はガイアナ、ベネズエラとブラジルにかけて広がっている。
 
Couroupita ホウガンノキ属 : Aubl. (1775)
この属の現地での呼び名に由来するらしいが、どんな意味かは記載がない。
『植物学名辞典』には、南米土名。curupit tumu 。とあるがこれも意味不明である。
 
サガリバナ科 Lecythidaceae : 油壺 の意味。
サガリバナ科の基準属 Lecythis属/パラダイスナットノキ属 の果実がポット状であるところから、これを油壺にたとえたものと思われる。
熱帯を中心に18属約250種がある。Lecythiadaceae とすることもある。
パラダイスナットノキ属の一種
ガイアナ植物園にあったもの
 

 
 
サガリバナ (下がり花) : Barringtonia racemosa
← Eugenia racemosa Linn. (1753)
多数の花を付けた花序が垂れ下がって咲くところから名付けられたが、これはサガリバナの専売特許ではなく、たとえば「フジ」は典型的なサガリバナである。
 
日本本土では温室で栽培される。サガリバナの花は夜に開花し翌朝には落下してしまうために、咲いているところを見ることができない。
 
ところが、沖縄本部町、国営沖縄記念公園の植物園にある株は、昼頃まで開花しているおかげで写真を撮ることができた。
 
高さはあまりなく 2m強 何本もぶら下がる花序

熱帯では10mにもなるとか。
 

長いものは60cm以上ある。
丸い蕾はホウガンノキと同じ 長い雄しべが目立つ花

 


上から下(先端)へと咲いていく。
 Barringtonia 属: サガリバナ属 J. R. Forster & G. Forster (1775)
18世紀イギリスの博物学者、バーリントン (1727-1800) を記念して名付けられている。 約40種があるという。
 
 種小名 racemosa : 「総状花の」という意味
サガリバナ属の多くは総状花であるため、racemosaという種小名はサガリバナ独自の特徴をとらえた命名ではない。
 
花と軸のあいだに柄(花柄)があるのが総状花序で、オオバコなど、花柄がないものは「穂状花序」
(スイジョウカジョ)と呼ぶ。
 
『植物の種』で名前を付けたリンネは、サガリバナをフトモモ科のエウゲニア属として分類した。

サガリバナ科の花は、見た目にはフトモモ科の花とそっくりであるため、長い間フトモモと近い仲間に分類されていたが、葉が互生する点などが違うようだ。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        植物学ラテン語辞典/至文堂、
        植物用語事典/清水建美、
        Infomotions, Inc.のホームページ/by Eric Lease Morgan
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