フラ・クレピタンス
Hura crepitans Linn. (1753)
SENEGAL
科 名 : トウダイグサ科 Euphorbiaceae
属 名 : フラ属  Hura Linn. (1737)
原産地 : 熱帯アメリカ?
用 途 : 街路樹



 
ダカール市街地北部にある「森林公園」の中のメインストリート。
大きな「ドライマホガニー」の並びに、街路樹として使われているた。
 
頼りの2つの事典『園芸植物大事典/小学館』 と 『植物の世界/朝日新聞社』 ともに記述がないが、「植物園の名札」および『Index Kewensis』と、現地で購入した『FLORE du SENEGAL』に記載があるので、Hura属は存在することとして、学名をカタカナ表記した。
 
森林公園 樹 形 高さ約2.5m

道路の左側奥に生えているのが、クレピタンスである。

 
葉の様子(ダカール大学) 雄花 (同左)

名札 若い実

この名札の種小名はミスプリで、 crepitens となっている。
 

実はタマネギを逆さにしたような形で、直径7〜8cm以上ある。
幼木の根元 直径 15cm程度

トゲが生えている
 

左とは別の木
トウダイグサ科の植物は雄花と雌花が別々、あるいは雌雄異株である。
この写真の撮影時には勉強不足で、赤い実のような雄花に気を取られて、雌花が別にあることに気が付かなかったため、雌花の写真が無い。
 
そこで、ハワイ大学のジェラルド・カー教授の許可をいただき、ホームページの写真コレクションの中から拝借した。
 
採取した枝を並べて撮影したもので、オールスターとなっている。
左上に赤茶色の「雌花」、中央に雄花、左下の青い実にはしおれた花が残っている。右下の熟した実は「破裂寸前」かも?

[ Copyright ] Dr. Gerald Carr (Univ. of Hawaii )

 
名前の由来 Hura crepitans
 
和名
 : なし
この木の実の形から、「タマネギの木」というのはどうだろうか?
Hura フラ属 :
『植物学名辞典』には、単に「南米植物名」とだけあって、名前の由来は不明である。
種小名 crepitans : 「轢声を發する」という意味。
牧野富太郎・清水藤太郎共著の『植物學名辭典』は、なにしろ昭和十年の発行である。時々難しい表記がある。
この「轢声を發する」も初めは意味がわからなかった。
 
一方で、ダカールの本屋で購入した『FLORE du SENEGAL』はセネガルの植物を網羅した、厚さが3cm以上もある分厚い本だが、「フランス語」という点が難点である。
 
辞書を引きひき調べた結果、「成熟すると種子をバラ蒔くために、音を立てて破裂する」とあった。
これで種小名の意味と一致した。音を聞いてみたいものである。
Euphorbiaceae トウダイグサ科 :
植物分類学が進んできた現在、どこにも分類できないものが残っているのがトウダイグサ科である、という表現は正確でないとしても、実に多様な植物が含まれている。
全世界に分布していて、321属 約8,000種があるという。
 
 
トウダイグサ (灯台草) : Euphorbia helioscopia Linn. (1753)
トウダイグサ科の代表選手、トウダイグサ属 トウダイグサ。
科名、属名、和名がすべて同じというのは、意外と少ないかも知れない。
日本でも、北海道以外の各地で見られる。
高さは 30cm程度 杯状花序


群生する茎の先端は5つに分かれ、それぞれに3つの花序が付くために、「ビッシリ」という感じになる。
小石川植物園 3〜4月
昔の灯りのひとつである灯台(燈台)のイメージは「長い一本脚に油皿が一枚」であるため、しっくり来ない。むしろ別名の「スズフリバナ」(鈴振り花)のほうが合っている。
 Euphorbia 属 :
紀元前1世紀ごろのローマ時代、アフリカ北西部に実在したマウレタニア王、ユバ2世の侍医、エウフォルブス(Euphorbus)の名にちなむものである。『植物の世界』より。
それだけ古くから、薬用にされていたということである。
 種小名 helioscopia : 「向日性の」という意味
向日性はヒマワリに代表されるが、トウダイグサは上を向いて咲いているため、どういう形で向日性が現れるのか、来春、一日かけて観察する必要がある。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        花と樹の大事典/植物文化研究会、
        FLORE du SENEGAL/J . BERHAUT、
        ハワイ大学 Dr. Gerald Carrのホームページ
               (転載許可取得済み)
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