ホベニア・アケルバ
シブケンポ 
渋玄圃 (仮名)
Hovenia acerba Lindley (1820)
科 名 : クロウメモドキ科 Rhamnaceae
属 名 : ケンポナシ属 Hovenia Thunb. (1781)
中国名 : 拐棗、枳椇
原産地 : 中国河北、河東、西北、西南
用 途 : 種子を薬用に、また木材も利用する。
種子の薬効は、清熱解毒・利尿・二日酔
 
撮影地 :
中国

はじめに
 
学名は昆明植物園で見かけたものである。
 
しかし 調べてみると、ケンポナシ属は2・3種しかなく、Index Kewensis には、「本種は ケンポナシ Hovenia dulcis のこと」 となっており、Kew のインターネット版にも登録されていない。
 
「アメリカ合衆国農務省 GRIN Taxonomy for Planrs」のデータと、「Flora of China」のデータ、「雲南天然薬物図鑑」にはあったので、「シブケンポナシ 略して シブケンポ」という仮名を付けて掲載するが、ケンポナシと同種という可能性も大きい。
 
樹形 高さ 約4m
幹 の様子
緑のコケや藻?に覆われてしまっている。
太さは根本で 12cm程度。
 
枝振り と 葉
まだ背が低いので、丁度いい高さに枝がある。
 
7月下旬で、たくさんの実が生っていた。
 
実の様子

 
果実の柄(果柄)が太くなりかけている。
 
名前の由来 Hovenia acerba
 
和名 : なし
シブケンポナシ 渋玄圃梨(仮名):果柄の味が渋い ケンポナシ
 
種小名 acerba : 渋い、未熟な という意味
ケンポナシ属の肥大した果柄は食べられるが、ケンポナシ Hovenia dolcis に較べて、味が渋いために命名されたもの。
中国名 枳椇
「枳」は柑橘類のカラタチの事。なぜカラタチ かは不明。
 
「椇」はまがる・たわむ の意味で、曲がりくねって肥大する果柄を表している。
Hovenia ケンポナシ属 :
ケンポナシ属は1775年(江戸時代 安永年間)に1年以上日本に滞在した、チュンベリー(1743-1828) による命名である。
 
南アフリカ、ジャワ島、日本への探検に当たっては、多くのひとから資金を援助してもらったり、借金までしたようだが、そのひとり オランダ人 ホーフェン(ホーフェ?) D. ten Hoven に捧げられた名称である。
 
ケンポナシにつていは、後半で詳細を述べたい。
クロウメモドキ科 :
黒い実の生るウメモドキ の意味
 
この次に掲げる「ウメモドキ」と較べていただきたいが、あまり 似ていない・・・。
クロウメモドキ
東大理学部付属植物園 日光分園
 
Rhamnaceae / Rhamnus属 Linn.
クロウメモドキ属 Rhamnus は Rhaphithamnus の短縮形で、ギリシア語の raphis 針 +thamnos 灌木、つまり「針のある低木」を意味する。
 
上の写真でも見られるトゲは、短枝(長くならない短い枝)が変化したものである。
 
 
クロウメモドキ ←
 
  ウメモドキ 梅擬き Ilex serrata Thunb. (1784)
ウメモドキ
東大付属植物園 日光分園
 
モチノキ科モチノキ属のウメモドキの名は「ウメに似た」「ウメのような」という意味だが、いったい どこが似ているのか?
 
強いて言えば、「葉の形」であろうか。
葉のサイズはウメよりも少し小さい。
 
ウメ ウメモドキ
 
シブケンポ (仮称) ←
 
  ケンポナシ 玄圃梨 Hovenia dulcis Thunb. (1781)
 
ケンポナシは、テンボナシ または テンボウナシが転訛したものである。
 
小石川植物園正門のすぐ右手にあり、道路からもよく見える。
特記以外の写真は 小石川で撮影したものである。
 
ケンポナシ
この2枚は、秋田植物園
 
枝 と 新葉

 
ケンポナシの花 6月下旬
 
以下は、尖端に実ができたあと、果柄が肥大していく様子である。
 

7月下旬


8月下旬

10月下旬
 
まだ少々渋い


11月下旬~12月

房ごと落下する
 
 
てぼう

 
テンボ・テンボウは「手棒 テボウ」が撥音変化したもので、差別用語にもなりかねないが、指や手首の無い状態 あるいはその人を指す。
 
ケンポナシの脹れた果柄を、はれぼったい手に例えたもので、「ナシ」は、熟したその味が甘く、食感も含めてナシに似ているためである。
 
いつ頃名付けられたものなのであろうか。
食べることが前提で「ナシ」なのに、その名が「手棒」とは・・・。
 
 
ケンポナシの英語名 :
 
『MABBERLEY'S PLANT-BOOK』によると、英語名は「Japanese (Chinese) raisin tree」で、干しブドウ つまり、干からびた状態が名前になっている。
 
 
ケンポナシの由来 別案
 
子供たちがケンポナシを食べ過ぎておなかを壊した時には、「健康保険がきかない」 ので 「ケンポ 無し」!
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館
        朝日百科/植物の世界/朝日新聞社
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        雲南天然薬物図鑑/雲南科技出版社
        広辞苑
        MABBERLEY'S Plant-Book/Cambridge University Press
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