ドライマホガニー
Khaya senegalensis A .Juss.(1830)
SENEGAL  
科 名 : センダン科 Meliaceae
属 名 : アフリカマホガニー属
 Khaya A.Juss.(1830)
原産地 : アフリカ
用 途 : 街路樹 また
恐らく、建築用材として
そしてもしかしたら、木彫りの材料として使われている。

 
市街地北部にある「森林公園」の中のメインストリートである。
市の中心部でも街路樹として使われているが、ここは公園内で大型の車は少ないためか、下の写真のように斜めに張り出した太い枝もそのままである。
 
樹 形 葉の形

葉は小葉の数が偶数の羽状複葉。
 
幹の様子 若い木の幹

太い幹の肌は、松の木のように
うろこ状に割れている。
 
名札 新葉 赤みがかっている

立派な名札。植物園であるからには、こうでなくては!
名札がないと、せっかく写真を撮っても名前がわからないことが多い。
 
若い実 2月に撮影

熟すと割れるはずである
 
名前の由来 ドライマホガニー Khaya sensgalensis
 
ドライマホガニー
 :
いつもまず一番に調べる小学館の『園芸植物大事典』には、あらゆる事が詳しく記載されていて驚くばかりであるが、不思議なことにKhaya 属どころか、マホガニーについても詳しい記載はなかった。
朝日新聞社の『植物の世界』には記述があり、和名や属名も判明した。
しかし なぜ「ドライ」を付けたのかは不明である。
マホガニーに比べて乾燥した地域に生えるためか、材が乾燥しやすいためか、材の含水率が低いのか?
 
種小名 senegalensis : 「セネガルの」という意味。
ついに出ました!セネガル産。
 
本当にセネガル原産かどうかは、事典に記載がないので確かではない。学名がそうであるからといって、正しいとは限らないためである。
たとえば エンジュは Sophora japonica であるが、原産地は中国である。相当古くに日本に渡来して野生化していたものを、17世紀末に来日したケンペルが日本産と間違えたようである。
 
senegal という種小名は 「Acacia senegal : アラビアゴム」 一種だけであるが、senegalense あるいは senegalensis という種小名は、かなりの数があるようだ。
 
Khaya アフリカマホガニー属 :
マホガニー属ではないものの、材が多少マホガニーに似ており、アフリカ原産であるために名付けられたものである。
Khayaの意味については不明である。
 
Meliaceae センダン科 :
センダンについては「インドセンダン」の項を参照のこと。
 
 
ドライマホガニー
  ← マホガニー : Swietenia mahagoni Jacq. (1760)
センダン科の属は、チャンチン亜科、センダン亜科、マホガニー亜科の3つのグループに分けられる。マホガニーが属するマホガーニー属とアフリカマホガーニー属は同じグループであるが、このマホガニーが本家本元である。フロリダ半島と西インド諸島に分布する。
 
熱帯に産する木材の中で、シタン(紫檀)、チークと並ぶ高級木材であり、家具などに使われる。それだけに、ドライマホガニーのように、マホガーニー属ではないのに これにあやかった名前を付けたものがいくつもあるようだ。
 
しかし、肝心の「マホガニー」の意味は不明である。
牧野氏の『植物学名事典』には、「南米名」とあるだけである。
 
 種小名 mahagoni : マホガニーの南米での呼び名のようだ
インターネット版の英語辞典、Merriam-Webster OnLine を見たが、語源は不明となっていた。
英語のつづりや日本語は「mahogany マホガニー」であるが、英語の発音は「マハーガニィ」である。
 
学名は1760年にオランダの植物学者であるジャカン(Nicolaus Joseph von Jacquin 1727-1817) によって命名された。学名を日本語読みすると「マハゴニー」で、英語の発音に近い。
 
 Swietenia マホガニー属 :
18世紀オランダの Gerard van Swieten氏 (1700-1772) を記念して名付けられたものである。
 
南米 ガイアナ国 ニュー・アムステルダムで
−−
市のはずれにある並木。高さは20mを超えている。
ガイアナは内陸部にサバンナ地域があるものの、国土のほとんどが森林で、古い建物は教会も市役所も”すべて”木造である。ただしマホガニー材が使われているかどうかはわからない。
 
ハワイのマホガニー [ Copyright ] Dr. Gerald Carr
ハワイ大学 Dr. Gerald Carr氏のホームページに掲載されている、マホガニーの実の写真である。
 
実は成熟しても垂れ下がることなく、直立したままである。
皮が5つに割れると、カエデのように羽根の付いたタネがばらまかれる。
傘のように実の下側が開くところが珍しい。普通の実とは異なる逆転の発想で、タネをまき散らしやすくするための、「植物の知恵」と言えよう。
 
ドミニカ共和国のマホガニー 日本にもマホガニー

5つに割れて地面に落ちた種皮と、羽の着いたタネ。
 

京都植物園 温室で
 トピックス
 
学名の優先権
 
学名のデータベースである「Index Kewensis」を調べていて「発見」した事であるが、マホガニーの種小名「mahagoni」に対して、二人の学者が別名を提起している。
 
ひとつ目はジャカンがまだ生存している1789年、フランスの植物学者で無脊椎動物に関する研究成果を上げたラマルクが Swietenia mahogoni (マホゴニー)と命名している。
もう一つはジャカンの死後、19世紀最大の植物分類学者と呼ばれる ド・カンドルが、1824年に Swietenia mahogani (マホガニー)と命名している。
 
恐らく二人とも、マハゴニー あるいは マホゴニー は間違っている!として、新しい学名を発表したのであろう。
しかし学名の命名規約によって、初めに発表された名前が「正名」として採用されることになっている。
 
出生届の時に、漢字を間違えて提出して受理されてしまうと、世の中に存在しない字であっても、戸籍上の名前は訂正できないのに似ていて、たとえ間違ったつづりでも、一度決まった学名は変えられない。
 
有名な「誤記」の例は イチョウ属の学名 Ginkgo である。
 
中国原産と考えられるイチョウは、17世紀末に来日したケンペルによってヨーロッパに伝えられた。
ケンペルの学名は中国名「銀杏」の日本での音読み「 ギンキョウ 」を Ginkyo と記していたのだが、著書発行の時に y g の誤植があり Ginkgo となってしまった。
これをリンネが『植物の種』の学名にそのまま採用してしまったものが、現在の学名である。なんとも発音しにくいつづりとなってしまい、植物事典の学名の表記には「ギンクゴ」とある。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
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