フウセンアカメガシワ
風船赤芽柏
Kleinhovia hospita Linn. (1763)
科 名 : アオギリ科 Sterculiaceae
属 名 : フウセンアカメガシワ属
Kleinhovia Linn. (1763)
原産地 : 原産はインドか?
インドア大陸から東南アジア、オーストラリア、台湾、南西諸島の南部に分布する
『朝日百科/植物の世界』
用 途 : 街路樹、緑陰樹、庭木、防風林
柔らかい材は家具などに使われる
撮影地: シンガポール

シンガポール植物園正門(タングリン・ゲイト)をはいってすぐの所、斜面を流れる小川の向こう側の目立たない場所に、何本も植えられていた低木である。
名札が無かったため図書館で質問を出し、学名は、後日メールで回答を得た。

『朝日百科/植物の世界』には、写真はないが簡単な記述があったので、参考になった。
 
高さ 約 3m 別の木 幹の太さは 8cm

 
この一角は最近整備されたのか、木の廻りにチップが盛り上げられていた。

しかし木の間隔は混んでいて、うまく全体を写すことができなかった。
左の写真、右側に写っている太い木は 枯れた木が切られた端部である。

今回は、全般的に写真が良くない。
 
葉の様子
細い枝は垂れ下がってしまう。
ハート型をした、艶のない 薄手の葉である。
 
枝先に付く 円錐花序

 
離れて見ると美しいが、一つの花は小さく また 咲き方がまちまちで、近づくと・・・、 である。
 
実の様子
5つに分かれた実は、茶色く熟してもなかなか割れずにぶら下がっている。

中の種子の数は少ない。
直径 約3mm。丸いが小さな突起のある種子である。
 
熟した果実 種子のアップ

 
名前の由来 フウセンアカメガシワ Kleinhovia hospita
 
和名 フウセンアカメガシワ : 
フウセン」の由来について『朝日百科/植物の世界』では、単に「果実の形が風船を連想させ」 となっている。

確かにそうであるが、私は、実がぶら下がる様子が「フウセンカズラ」に似ていることも大きいと思う。
 
フウセンアカメガシワ フウセンカズラ

 

後半の「アカメガシワ」は、本種の葉がトウダイグサ科の「アカメガシワ」に似ているためである。
 
アカメガシワ
アカメガシワの葉柄が赤いところまでは似ていないが、葉脈のパターンもそっくりである。

アカメガシワは雌雄異株で、右の写真は若い実が生りかけているところ。
 
種小名 hospita : 厚遇する という意味
『植物學名辞典』に、「(寄生者を)厚遇する」とある。

本種になにか寄生植物 あるいは 虫が付くのかも知れないが、詳細は不明である。
 
Kleinhovia フウセンアカメガシワ属 : 人名に由来する
『植物学名辞典』には、「オランダ人の M. Kleinhof 氏」となっているが、これも詳細は不明である。

属名の命名者はリンネであるから、M. Kleinhof 氏も 18世紀あるいはそれ以前の人であろう。
 
Sterculiaceae アオギリ科 :
アオギリ科のアオギリ属 Sterculia の一部に、悪臭のある花や実を付ける植物があることから、ローマ神話の便所の神、Sterculius ステルクリウスの名が付けられた。

ラテン語の Stercus は「糞」である。
 
 
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  フウセンカズラ 風船葛 Cardiospermum halicacabum Linn.
 
フウセンカズラの 小さい花 と 若い実

 
フウセンカズラ の種子
属名 Cardiospermum は、ギリシア語の「cardia 心臓」+「sperma 種子」を合成したもので、黒い種子に「ハート型」の模様があることにちなんでいる。

種小名の halicacabum ハリカカブム は、規約上はリンネの『植物の種』(1753) による命名である。

しかし、その基となったのは リンネより 150年以上も前の時代の、フランドル地方出身の医学者 ドドネウス (1517-1585) の書物によっている。
 

『植物の種』のフウセンカズラの項には、自書以外に2つの参考文献があり、そのひとつがドドネウスの 『Stirpivm historie pemptades sex』 (1583) である。

その 455ページに「フウセンカズラ」の記述があり、名称は Halicacabus peregrinus (外国種のハリカカブス)となっている。

デジタル時代の恩恵で、著作権の切れた昔の書物を、高精度の画像でダウンロードできるようになっている。
 
Botanicus Digital Library のホームページより
 
デザイン化された植物画には種子の絵はないが、当然のことながら、文章には説明がある。

  「色は黒、しかし、へその部分は純白」
     (へそ とは、種子が子房と付着していた所 である。)

残念ながら Halicacabus の意味は不明。
 

ドドネウスは 16世紀のこの当時から、学名を2つの言葉で表す 今の2名法のような表現を行っていた。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press
        園芸植物大事典/小学館
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社
        植物學名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
        シンガポール植物園ガイド/シンガポール日本人会
        Botanicus Digital Library/
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