コキオ
Kokia drynarioides Lewton (1912)
← Gossypium drynarioides Seem. (1865)
科 名 : アオイ科 Malvaceae
属 名 : コキア属 Kokia Lewton (1912)
原産地 : ハワイ島の溶岩と水はけのよい粗い火山礫が広がる、薄い表土の乾性林 標高 455~1,915 m に自生する。 現在はまれで、超絶滅危惧種とされる。
英 名 : Hawaiian tree cotton
用 途 : かつてハワイアンは、材の絞り汁で 漁網を赤く染めた。
撮影地 : ハワイ州ハワイ島、2012年6月。

ハワイ島コナ市近郊の「エイミー ギリーンウェル植物園」で撮影したもの。 参考文献は 『ハワイ魅惑の花図鑑 / 武田和男』。

園では野生種から実生されたものが数本育てられており、名札には、「野生種は、現在 恐らく 3本しかない」とあった。

樹 形
高さ 約 3m。 右側に 這うような形の株もある。 (次の写真)


幹の様子
石の際に生えているものも。 黒いホースは散水用。

葉の様子
通常は 7つに 浅く切れ込む。 葉脈が赤くなるものも。
イタヤカエデのようだが、葉の左右が葉柄の上で 重なり合っているところが違う。
古い葉は 紅葉する

つぼみ
花弁の数や子房の室数は5なのに、苞は3枚というのが 不思議。

リップスティック
開こうとしている花。 萼は合着していて分かれていないために、よけいに口紅に見える。

ねじれた花
重なり合った花弁は 外側に反り返る。 中心に雄しべ群、先端に白い雌しべが見える。
花は横向きに咲き、花柱が上へと湾曲する。 鳥の「ハワイミツスイの仲間」が花粉媒介をしていたのだが、それらの鳥が絶滅した事によって、コキオの繁殖も止まってしまったのだそうだ。 (ハワイミツスイの種類は多いため、どの種かは不明)

果実ができた状態

熟した果実
ワタの白い毛に相当する部分は、茶色く固まっているようだ。 種子ができているのかどうか。


名前の由来 Kokia drynarioides

和名 なし、 ハワイ名 : コキオ koki 'o
和名の仮名は ハワイ名より、「コキオハイビスカス」。 ハイビスカス属ではないのだが、花は似ているため。 しかし、肝心の「コキオ」の意味はわからない。

種小名 drynarioides
シダの仲間に Drynaria属 がある。 その属名は、ギリシア語の「 drys カシワ」に由来する となっている。

コキオ の葉が カシワの葉に似ているかどうか・・・。
カシワ餅の葉

属名 Kokia
初めは「ワタ属」に分類された。 
Kokia 属が立てられたのは 1912年、20世紀である。 ハワイ名の koki'o に由来すると思われる。 ハワイにポリネシア人が移ってきたのは 非常に古い時代であるため、当然 kokio の名が先にあった。
アメリカ農務省のデータベース GRIN によると、ほかにも2種が掲載されている。

アオイ科 葵科 Malvaceae :
「アオイ」は 現在は「タチアオイ」を指すことが多いが、フユアオイ、ゼニアオイ、トロロアオイ、モミジアオイ などの総称でもある。

万葉集に アオイ と詠まれているのは、古くに渡来し 初夏に花が咲く 「フユアオイ」 だが、アオイの語源には定説がない。
同じく 吉田金彦氏によると、「朝鮮語の ahok を基にして、わが国で アハウヒ→アホヒ→アフヒ→アオイ と変化したものであろう」
アオイ科の基準となる属は、ゼニアオイ属 Malva 属で、世界中に、約85属、約1,500種があり、衣料用として重要なワタを含んでいる。

Malva はギリシア語の malache (やわらかくする の意味) に起源するラテン古名に由来するということで、植物の粘液に「緩和剤」の効能があるためである。『園芸植物大事典』

なお、徳川のアオイの紋は、ウマノスズクサ科 フタバアオイの葉をデザインしたもの。 

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