ナンバンキカラスウリ 南蛮黄烏瓜(南蛮木烏瓜)
Momordica cochinchinensis K. Spreng. (1826 or 1816?)
← Muricia cochinchinensis Lour. (1790)
中国名 : 木鼈、木鼈子
科 名 : ウリ科 Cucurbitaceae
属 名 : ニガウリ属 Momordica Linn.
(1735)
原産地 : 中国雲南省中部から南部、台湾、ベトナム
用 途 : 種子を薬用とする
 
撮影地 : 中国


昆明植物園で「モモルディカ属」というつる植物を見て、これは珍しい!と、帰ってきて調べてみると、なんと ゴーヤー(ツルレイシ)がモモルディカ属、和名は「ニガウリ属」であった。

ウリ科といえば「草本、一年草」という頭があったが、本種はツル性の「木本」である。

パーゴラから垂れ下がる
この棚には2種類の植物があり、緑の濃い、モミジ葉状の方が本種である。
わかりにくいが、上の方に花が咲いている。
 
太い「ツル」の様子 葉の様子 長さ 20cm
左のツルの写真は、2枚をつないだもので、繋ぎ目が少しずれている。

本種は雌雄異株で、この木は雄株であった。
葉の写真の右下に蕾があるが、大きな苞に包まれている。

以下は、その苞の様子と 苞を半分取り去った状況である。
 
苞の様子 と 苞内部の蕾(左下)



 


花は葉腋の下側から出ている。

これはツルが垂れ下がっているので、上下が逆さまとなっているためである。

この蕾はまだまだ小さい。
葉そのもののような苞は、葉よりも緑が濃い。
萼はとても尖っている。
 
苞 と 花
苞の下側が割れて花が咲く。

花弁は5枚に分かれているようだ。
 

 
まだ実は生っていなかったが、熱川のバナナワニ園に、昆明植物研究所の 曽 孝濂 氏が書いた本種の絵があり、実も描かれていた。

昆明植物園教授の絵がバナナワニ園に飾られているのは偶然のことではなく、以前、同園の研修生をバナナワニ園が受け入れて以来、現在も昆明植物園との交流が続いているためである。

花の色が、かなり白く描かれている。
コピーライト
曽 孝濂
 
名前の由来 
ナンバンキカラスウリ Momordica cochinchinensis
 
和名 ナンバンキカラスウリ : 南方産のキカラスウリ 黄烏瓜
ナンバン 南蛮 の本来の意味は「南方の野蛮人」の意味で、もともとは中国が、インドシナなどの諸民族を指す言葉として使っていた。

日本ではそこから派生して東南アジアを指す言葉となり、ひいては室町から江戸時代に、南から伝わってきた「植物や文化・技術・宗教」までをも表す言葉となった。
 

考え過ぎかも知れないが、「ナンバンカラスウリ」ということもあり得る。

キカラスウリの名前の根拠は「実が黄色くなる」ことである。
曽 氏の絵によると、手前の果実は朱色がかかってきている。

ウリ科は草本が多いだけに、「南蛮の木本のカラスウリ」という名でも、ちっともおかしくはない。
その証拠に、中国名には「木」が付いている。
 
中国名 木鼈子
本種の種子が「亀甲状」と言うことで、中国の名札には「鱉 ベツ すっぽん」の字が使われている。
日本の植物事典の字は別の「鼈」であるが、意味は同じ スッポン である。
ベッコウ細工の「鼈甲」と書けば、なじみがある。
種小名 cochinchinensis : 交趾支那の
原産地(のひとつ)を示している。
「交趾支那」は牧野らの『植物学名辞典』にあった言葉である。

広辞苑を引くと、
 ・ベトナム北部トンキン・ハノイ地方の古い名称
とあった。
前漢の武帝がそこに郡を置いたようだ。
 
Momordica ニガウリ属 : 苦瓜属
学名は、ラテン語の mordeo (噛む、かじる) に由来し、タネの形がかじったような不規則な突起があるためという。

是非とも種子を見てみたいものだ。
 

ニガウリの正式?な和名は「ツルレイシ」であり、その意味は「ツル性のレイシ (ライチ)」である。

ライチとニガウリでは大違いなのに、どうしてこの名が付いたのであろうか?

 ツルレイシ Momordica charantia Linn. (1753)
 
ツルレイシ (ニガウリ) 京都植物園
食用で見かけるのは青いものばかりだが、ここまで熟れるとグロテスクである。
内部にある黒いものは、果肉に群がる蟻。
 
 
ナンバンキカラスウリ
 ← キカラスウリ 黄烏瓜 Trichosanthes japonica Regel (1869)
日本特産のカラスウリで、その実が黄色く色付くところから名付けられた。

あいにく写真がないため、春日健二氏の『日本の植物たち』からお借りした。いつもありがとうございます。
 
キカラスウリ  (春日健二氏撮影)
撮影:春日健二 kasuga☆mue.biglobe.ne.jp(☆を@にして下さい)
 
 
キカラスウリ
 ← カラスウリ 烏瓜 Trichosanthes cucumeroides Maxim.
カラスウリの分布は、日本本土のみならず、琉球諸島、台湾、中国本土にも及ぶ。

和名の由来は「カラスが好んで食べる」ため となっているが、私は「カラスぐらいしか食べない劣ったウリ」という意味が込められていると思えてならない。

熟した実は鮮やかな朱色になるため、唐から輸入された朱の原鉱の形に擬えて、「カラシュウリ 唐朱瓜」という説もある。

属名 Trichosanthes は、ギリシア語の「trichos 毛 + anthos 花」で、花弁が糸状になっていることによる。
とてもきれいな花である。
 
カラスウリ 花 と 若い実

 

 
驚くべきはそのタネである。

まるで「結び文」のような、「昆布巻き」のような・・・
そして見方によっては「カマキリの頭」に似ている。

サイズは、長さ9mm。乾燥する前は、もう少し大きかった。
 

「噛んだ跡」に似ている というナンバンキカラスウリの種子も、こんな感じなのであろうか?
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        広辞苑
        『日本の植物たち』のページ/春日健二
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