チユウキンレン 地湧金蓮
Musella lasiocarpa Hu Lin Li (1978)
← Ensete lasiocarpum E.E. Cheesm. (1947or48)
← Musa lasiocarpa Franch. (1889)
科 名 : バショウ科 Hypoxidaceae
属 名 : チユウキンレン属 Musella Li (1978)
中国名: 地湧金蓮(di yong jin lian)
原産地 : 中国南部から、インドシナ半島。
標高 1,000〜2,500mの山に生える。
用 途 : 花を止血剤、葉の汁を解毒剤として用いる。
傾斜地の畑の縁に「土留め」として植えられていた。
撮影地 : 中国

雲南省 楚雄市街からバスで「紫渓山」に向かう途中の、傾斜地に建つ農家(民家)のまわりにはちょっとした畑があり、その縁に沿って植えられていることが多かった。
まとめて栽培している場所もあったが、大量ではなく、数も少なかった。

地湧金蓮は、小石川植物園の正門をはいってすぐの ソテツの裏に植えられているため、以前から知っており、「オウギバショウ」の項でも取り上げているが、食材になることがわかったので、改めてアップする。

正体不明 ? の料理
右は油で揚げたピーナッツ、これはおいしかった!
しかし、ハニカム・コア状の柔らかい植物、いったいこれは・・・・?

紫渓山のビジター・センター
中国雲南省 楚雄近郊の「紫渓山」は国立森林公園で、自然保護区となっている。
雲南ツバキの自生地として有名で、樹齢600年というものまである。

昼食を取ったセンターの食堂で出たものだが、通訳の人が聞いてくれて 初めて地湧金蓮だということがわかった。
すぐ目の前の中庭にも植えられている!

茎の断面
帰りがけに見てみると、茎を切り取った跡がある。 もしかしたら これをたべたのか?  こんなに青くはなかったなぁ〜・・・。

後日談
日本に帰って、改めて『朝日百科/植物の世界』を開いてみたら・・・・。
「中国の雲南省では農家の生け垣に植えられたり、地下茎と偽茎がブタの餌にされたりするほか、花が止血薬としてもちいられることもある。」
とあった!

どおりで、うまくも何ともなかったわけだ!


樹形 高さ2m 雲南

小石川植物園。

葉の幅が広い。大きさは同じ。HYSHDCKさん撮影

花序  金の蓮

ハスの花
金蓮のほうは、いつまでたっても ハチノス(花托)が現れない代わりに、茎の中が「蜂の巣状」になっていたわけだ。

苞に包まれた 花
中央の黄色が濃いものは、開花直前というところ。
 
同じ写真の拡大である。
花の中央に白い雌しべが見えるので、両性花のようだ。 花序の上部になると、雄花しか咲かなくなる。
花被片は6枚。 事典によると、「3枚の萼と2枚の花弁が合着して、浅く5裂した筒状になる。残りの1枚は離れている。」とあり、右側の花が それを示している。

名前の由来 チユウキンレン Musella lasiocarpa
 
チユウキンレン
 地湧金蓮 : 地面から生える金色の蓮
この4文字の漢名には文句の付けようがない。 ハスは水辺に咲くが、この蓮は地面から。
和名はこれを音読みしたものだが、小石川植物園の名札は「チウキンレン」となっていた。 私はチユウキンレンとした。
もし、「チヨウ」が標準和名なら、チユウ から転訛したものである
種小名 lasiocarpa : 「長い軟毛がある果実の」 という意味。
運良く実が生っている株を見かけたが、毛は長くはなかった。
 
チユウキンレンの果実

 
Musella 属 : Musa から
はっきりとした意味は不明だが、バショウ属 Musa に由来している。
「バショウ属に近い」とでもいう意味であろう。

「Musa」は、バショウ類のアラビア名 mauz から、という説と ローマ皇帝の医師 Antonio Musa を顕彰したもの、というふたつの説がある。

本種は1属1種で、以前はバショウ属の近縁の エンセテ属に分類されていたが、吸芽(側芽)でも増殖することから 別属として独立した。

上の写真でも、実ができて古くなった株の脇から、何本かの新しい緑の茎が出ているのがわかる。

参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
        雲南天然薬物図鑑/雲南出版集団公司
        Mabbrley's Plant-Book/G.J.Mabberley
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