マニラヤシ マニラ椰子
Veitchia merrilli H. E. Moore ( 1957 )
← Normanbya merrilli Becc. (
1909 )
科 名 : ヤシ科 Arecaceae または Palmae
属 名 : ヴィーチア属 H. Wendl. ( 1868 )
nom. cons.
英語名 : Christmas palm , Manila palm
原産地 : フィリピン諸島
 
用 途 :
 
果実が美しいために、植栽される。
ドミニカ共和国では、街路樹としても使われていた。
 
撮影地 :
ドミニカ共和国

植物園のマニラヤシ 幹の直径 17cm
マニラヤシはそれほど大きくならず、事典には5mとある。
この木は、高さ 6mぐらいあった。
 
葉の軸が大きく湾曲するのが特徴で、小葉はV字型に付く。
熟した赤い実がたくさん落ちていた。
 
サントドミンゴのこの植物園では、整備された正門広場の一部の木にだけ、陶板製のプレイトがある。
 
果実の大きさは 長径 27〜30mm

 
花の様子 花序の付け根

 
花の詳細 
この属の花は雌雄別々だが、ひとつの木に両方の花が咲く、雌雄同株である。
 
咲いているのが雄花、奥の方の小さな丸いのが雌花のつぼみである。
 
自家受粉を咲けるためか、同時には咲いていないようだ。
 
名前の由来 マニラヤシ Veitchia merrilli
 
和名: マニラヤシ 
フィリピン諸島原産というからには「フィリピンヤシ」でも良さそうだが、英語名 Manila palm にならったのかも知れない。
種小名 merrilli : 人名にちなむ
19〜20世紀のアメリカの植物学者、Elmer Drew Merrill (1876-1956)を記念して名付けられた。
 
メリルは 1902年から20年以上の間、アメリカ農務省の職員としてフィリピンに赴いており、アジア・パシフィック地域の植物に詳しい。
帰国後はニユーヨーク植物園やアーノルド植物園の所長も務めている。
 
初めの命名者 Odoardo Beccari (1843-1920)は、メリルよりも33歳も年上であるが、よほどメリルを買っていたと見えて、属の異なる7つのヤシ科の植物に、同じ「 merrilli 」という種小名を付けている!
 
あるいは そのすべてが、メリルが発見したものだったのかも知れない。
Veitchia ヴィーチア属 : 人名にちなむ
イギリスの園芸家 ジェームズ・ヴィーチU世 (1815-1869) を顕彰して、1868年に定義されたものである。
 
保留名 (nomen cons)となっているが、正式名は調べが付かなかった。
 
約18種がある。トゲはない。
 
ヤシ科 Arecaceae : 
ヤシ科の基準属 Areca に由来して ヤシ科は Arecaceae と呼ばれるが、Palmae も使われる。
 
『園芸植物大事典』によると Areca は、インド南西部マラバル地方での呼び名 areec によるといわれている。
 
約 200属 約 2,680種があるそうだ。
 
 
人名にちなむ学名の場合、本来はその植物とその人との関係まで掘り下げるべきである。
 
たとえ学名の「意味」がわかっても、「なぜ」その名前を付けたかがわからないと、「名前の由来」とは言えないからである。
 
インターネットのお陰で、上記の「メリル」のような、簡単な生い立ちなどを調べることができるようになったのは ありがたい。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        Wikidedia English版
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