パンノキ パンの木
Artocarpus altilis Fosberg (1941)

Artocarpus communis J. R. Forst. et G. Forst. (1775)
Sitodium altile Parkinson (1773)

 
ドミニカ共和国 、ガイアナ協同共和国
日本 温室・沖縄
科 名 : クワ科 Moraceae
属 名 : パンノキ属 
Artocarpus J. R. Forst. et G. Forst. nom.cons. (1775)
英 名 : breadfruit
原産地 : ポリネシアともいわれるが、はっきりしていない
用 途 : 果実を食用とする。太平洋諸島では現在でも重要な主食のひとつである。
 
成長した太い幹を丸木舟に、樹皮は、棒で叩き延ばして作る「タパ布」の材料とする。
観賞用に栽培されることもある。
 
日本ではよく温室で栽培されていて、おなじみの木である。
ドミニカでは首都サント・ドミンゴの植物園、ガイアナでは首都に次ぐ人口第二の町、ニュー・アムステルダムで見かけた。
 
葉のようす 沖縄のパンノキ

葉は中ほどまで切れ込む。
大きなものは40cmぐらいあった。
 

小さな葉には、切れ込みが無いか少ない。
 
樹形 炎のような葉

高さは30mにも達するというが、この木は9m程度である。
ドミニカのパンノキの実 ガイアナのパンノキの実
実の大きさは 20cm程度。熟すと黄色くなる。
パンノキには色々な品種があるようで、二つの国の実には大きな違いがあった。
 
(タネ) ができる品種は「野菜」として利用したり、種子を煎って食べたりする。デンプンが蓄積される 種子ができない品種は、煮たり焼いたり、土の中で発酵させたりして食用にする。(『植物の世界』より)
 
名前の由来 パンノキ Artocarpus altilis
 
パンノキ
和名は英語名 breadfruit を意訳したものである。
 
南太平洋では古くから主食となっていたため、ヨーロッパ人が名前を付ける時に、彼らの主食である「パン」の名を付けた。
属名も同様である。
 
よく「焼くとパンのような味がする」と言われているが、『植物の世界』のパンノキの項担当 堀田氏の記述によると、「ふかしたジャガイモのような味であった」ということである。
種小名 altilis : 肥えた という意味
たくさんの雌花が合着して大きくなった「複合果」の状態を表している。
Artocarpus パンノキ属 : 
artos (パン) + karpos (果)の合成語である。
なお
属名の中国名は「波羅密属」で、パンノキと同じ仲間の「パラミツ」の名を取り入れている。
クワ科 Moraceae : mor (黒の意) から。
クワに対するラテン古名に由来する。そのもともとの語源はケルト語の mor で、熟した時の黒いクワの実からきている。
 
パンノキ ← パン
日本語の「パン」の語源はポルトガル語の「pao」(正確にはaの上には ~ が付く) から来ている。
ラテン語の「panis」の流れで、スペイン語はパンそのものの「pan」、フランス語も「pain」である。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
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