パパイア
Carica papaya Linn. (1753)
科 名 : パパイア科 Caricaceae
属 名 : パパイア属 Carica Linn. (1737)
別 名 : チチウリ(乳瓜)、モクカ(木瓜)
原産地 : メキシコ、西インド諸島、ブラジルにかけての熱帯地方
英語名 : papaya
用 途 : 実を生食、ドライフルーツ、シロップ漬けに。
青い実や若葉、花を 野菜としてサラダや炒めて食べる。 
未熟果を切った時に出る白い液体(パパイン酵素)を粉状にし、精製したものは洗顔料や入浴剤として使われる。 洗浄力が強く消毒作用があることからニキビ用洗顔料として人気がある。
撮影地 : ガイアナ協同共和国、ドミニカ、ハワイ
モザンビーク、日本(温室、奄美大島)

最初にパパイアを撮影したのは 原産地にも含まれる「ガイアナ」。 南米北部にあって旧英国領なので、英語が公用語である。

             雄 花      2004.10.27
熱帯では高さ 10mにもなるそうだが、この木は5mぐらいだった。 原則的には雌雄異株で、これは雄株。 長い花柄の先に多くの花が付く。
栽培品種では両性花を付けるものが選択されている。

ガイアナ国の特徴は家屋が木造であること。 バックに見える2階建ての住宅ばかりでなく 公官庁や大型の教会まで、古いものはみな木造である。

                    樹 形             2007.7.28
モザンビークの地方都市で。 高さ 4mだが2年目だと思われる。 手前が1年目、パパイアは極めて成長が早く、9ヶ月から14ヶ月で実を付け始めるそうだ。 その代わりに衰えるのも早く、経済的に有効な実を付けるのは樹齢4〜5年まで! 果樹園では 5〜6年で更新するそうだ。 

幹の様子 幹の上部
枝分かれは少なく、古い葉はどんどん落ちて 幹の上部だけに残る。 落ち跡がくっきりと残る。 丸い部分が花あるいは果実が付いていた跡。 若い幹は青く その後木質化するが、草本という考えもある。

                    葉の様子             2007.4.8
奄美大島、屋外で。

                      花は葉腋に付く              2007.10.15
伊豆熱川バナナワニ園。 五枚の花弁は外側にねじれて巻く。 雌花 あるいは 両性花だと思われる。
右は葉柄や花筒が赤いもの。 果肉も色が濃いだろう。

                     雌花 と 若い果実              2007.10.15
フラッシュ使用
               5 数 性        2008.2.11
伊豆熱川バナナワニ園。 雌しべが落ちた跡が星形になる。 果実の形も五角形だ。 開花後、3〜4ヶ月で成熟する。

果肉 と 種子
食べる部分は子房壁が発達したもの。 黒い種子は半透明の膜で包まれている。 よく見ると気持ち悪い・・・。 繁殖はほとんどが種子で行われる。
半透明の膜を洗い流して乾燥した種子。 細かな突起がある。


名前の由来  Carica papaya

別名 チチウリチチウリノキ 乳瓜の木 :  
若い果実や幹など 植物のほとんどの部分で、傷を付けると白い乳液が出るためだが、実の形が乳房に似ているためでもあろう。

別名 モクカ 木瓜 :
青い実を 瓜のように利用するため。 ただし「木瓜」は通常「ボケ」を指すので、漢字だけだと間違える。

種小名 papaya :
アメリカ原住民が「papaia」と呼んでいたものを、発見者スペイン人が papaya(果実の部分)、papayo(木の名)と呼んだもの。
元の意味はわからない。

Carica : 
属名はリンネが 『植物の種』(1753)以前に、『植物の属』(1735)に記載している。 トゥルヌフォールが「Papaya属」としていたものを あえて Carica属 とし、種小名に papaya を使った。

carica はリンネが命名した イチジク (Ficus carica)の種小名である。 現在ではアラビア半島南部が原産地といわれているが、以前はその原産地が、小アジア(現トルコ)のカリア地方と考えられていたためである。 

リンネがイチジクの種小名 carica をパパイアの属名とした理由として、ふたつの説がある。

ひとつは イチジクと同様に、原産地をカリカ地方と誤認したため。 しかし、『植物の種』に記載されているパパイアの原産地が「Indiis」(インドは India と書かれるので、西インド諸島を示すと思われる)と書かれているので、可能性は少ない。

もうひとつは、パパイアのがイチジクに似ているため。
 
イチジクの葉
切れ込んだところは似ていなくもないが、パパイアは二重に切れ込みがあり、しかも尖っている。 『植物の種』の参考文献でも「プラタナスのような葉の」という表現が複数あるように、葉が似ているためでもなさそうだ。

むしろ、参考文献に 「Ficus イチジク属」という以前の見解があるように、実の付き方がイチジクに似ているからではないか?
リンネは トゥルヌフォールが属名としていた papaya を種小名とした Carica papaya のほかに、もう一種 Carica posopora を記載したが、アメリカ農務省『GRIN』の見解は、両者は同一種。

 ハワイのパパイア農園

ハワイ島 の植物観察ツアーに参加した折、パパイア農園を訪ねた。
 
              Diamond Head Papaya farm       2012.6.22
3年以上経った木で 高さ 4m近い。 間隔は 約 2.5m × 1.5m と 通常の農園よりも狭いそうだ。

日本で売っているパパイアの主流は 果肉がオレンジ色のものだが、この農園では「レインボー」という黄色い果肉の F1品種(first filial generatio)を栽培していた。 フィールドはハワイ島東部 ヒロ郊外で、溶岩が流れた後が風化して細かくなった状態。 大きな石もある。 

ヒロは雨の多いところ
トラクターで深さ20センチぐらいの溝を掘り、購入した種子を 7 ・8粒直まきする。
条件が良ければ2週間ぐらいで発芽する。 すぐには間引きせず、1m近くなって花が咲くのを確認し、雌株の中で育ちが良いものを1本残す。 まれに 2本残すこともある。
およそ 1年で結実しだし、その後は定常的に収穫できるので、売上高まで想定できる。 

ハリケーン 無し
パパイアは風に弱いが、ハワイは貿易風だけでハリケーンは来ない。 ただし雨が続いたときなどには結実しないことがあり、一つの農場だけでは一定期間の「欠品」が起こってしまう。 このため、離れた位置に農場を分散することが望ましい。
果実のギャップ
パパイアは傷みやすいために 落ちたものは売り物にならない。 このため収穫はすべて手摘みで、手が届かなくなってくると棒を使うそうだが 効率が悪い。 それもあって、まだ実が採れる状態でも 4年ほどで更新するそうだ。
試 食
癖がなく、さっぱりとした味で おいしかった。

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