タカネゴヨウ 高嶺五葉
Pinus armandii Franch. (1834)
科 名 : マツ科 Pinaceae
属 名 : マツ属 Pinus Linn. (1735)
中国名: 華山松(hua shan song)、松子仁(song zi ren)
英語名: Armand pine , Chinese white pine
原産地 : 中国(中部、雲南省)、台湾の 標高 1,200〜3,500m の高地。
用 途 : 松の実を食用にする。
滋養強壮・慢性便秘、吐血、めまい、虚弱体質の改善などに効果があるようだ。
 
撮影地 :
中国

中国雲南省 楚雄近郊の「紫渓山」自然保護区(標高 2,500m程度)や大理の山などで見たもの。

樹 形 幹の様子
全体を取り忘れた。 高さは 15mぐらいだったが、『雲南天然薬物図鑑』には 大きくなると 35mとある。
樹皮は割れてくるが、クロマツのように亀甲形などにはならない。

葉の様子

 
一カ所から5本が束生する「五葉松」だが、日本のゴヨウマツ(後半に掲載) に較べると葉の密度が粗く、葉の長さも やく15cm と長い。

開花の様子
雌花は新しく伸びた枝の先端付近に着く。
花期は通常5月までで、ほかの実はすでに大きくなりかけていた。
撮影したのは7月初旬で、これは遅くに出てきた雌花が受粉した、出来たての果実と言った方がよい。

この林は 種子を採るために植林されたもので、木の高さは まだ 5m。

実の様子
ふた月ほど経った まだ若い実である。  熟すのは翌年の秋。
鱗片は三角・斜方形で、先端部の色が濃い。
球果に柄が付いていて、それが異常に太い。

落ちていた 球果

長さ 15cm。 時間が経っているためか乾燥しかけている

古い球果(種子なし) 長さ 17cm

未熟な種子
上とは別の 落ちていた球果の鱗片を剥いてみたもの。
まだ若いのに、卵状の種子が見えた。 熟すと褐色から黒褐色になる。
こんなに大きい種子であれば、さぞ食べでがあろう。

中国大理のロープウェイ 
大理の湖 「じ海」の西側には自然を手軽に楽しめる「玉帯雲遊路」がある。
遊歩道の入口には「蒼山大峡谷」があり、滝の景観が楽しめるはずだったが、雨不足で 岩だけだった。
ゴンドラは、ドイツ製の最新式 とか・・・。
 
じ海 と 松の木
途中の山の半分は「タカネゴヨウ」だった。 別種の「ウンナンマツ 雲南松」も。
中央は、大規模開発された別荘地。
 
滝には水がなかったが、冷たい湧き水による川は生きていた。
 

名前の由来 タカネゴヨウ Pinus armandii
 
タカネゴヨウ
 高嶺五葉 : 高い山に生える五葉松 の意味
日本の「ゴヨウマツ 五葉松」は 北海道南部から九州まで分布するが、事典には、生育する標高までは記載がない。
高山になると「ハイマツ」、その上は樹木が無くなり、富士山頂で 3,300mであるから、日本のゴヨウマツよりも高い山に生える五葉松、ということだ。
 
← ゴヨウマツ Pinus parviflora
ゴヨウマツ
一カ所から 5本の葉が「束生(束になって生える)」松を、ゴヨウマツ 五葉松 と総称する。
 
種小名 armandii : 人名による
19世紀 ラザロ騎士修道会の宣教師として中国に渡ったフランス人、Armand David (1826-1900) を顕彰したものである。

植物だけでなく、動物・鳥類・魚類、昆虫の調査も行い、ヨーロッパに ジャイアント・パンダを紹介したのもアルマンドであった。
もうひとつ よく知られる植物に「ハンカチノキDavidia involucrata がある。 姓の David が属名として残された。
Pinus 属 : 瀝青に由来する
ラテン語の古い名前による。 その語源はラテン語の pix , picis で意味は「瀝青」(レキセイ) である。
瀝青とは、天然アスファルトやコールタール、原油の残りカスであるピッチなどである。 人造物も同じように呼ぶ。

成分は違うと思うが 「マツヤニ」からの連想であろうか。
 
マツ属 マツ科 :
 @ マツが長寿・常緑・切っても葉が長持ちする所から「タモツ」の略転。
 A 同上、「モツ」の意味
 B 行く末を「待つ」の意味
 C 神を「待つ」の意味
など、いくつもの説がある。
中国名 華山松 :
固有名詞としての「華山」は、中国中部、西安(シーアン)を省都とするシャンシー省にあり、標高は mである。
『園芸植物大事典』の原産地の記述は、「中国中部、雲南、台湾などの高地」となっており、シャンシー省が含まれないことはない。

「華」を 「中国」と解釈すれば、「中国の(高い)山に生える松」 となる。

参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press
        植物の世界/朝日百科
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
        羅和辞典/研究社
        雲南天然薬物図鑑/雲南出版集団公司
        Mabbrley's Plant-Book/G.J.Mabberley
        花と樹の大事典/植物文化研究会
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