市街地北部「森林公園」内の植物園で
 
アラビアゴムノキ
Acacia sensgal Willdenow (1805)
← Mimosa senegal Linn. (1753)
SENEGAL
英 名 : gum-arabic tree , Sudan gum-arabic
科 名 : ネムノキ科 Mimosaceae
(マメ科
Leguminosae)
属 名 : アカシア属 Acacia Miller (1754)
原産地 : 熱帯アフリカ
スーダン、エチオピア、ケニア、タンザニアなど
用 途 : 樹液は張り付け用の糊、錠剤の結合材、艶出し材、など様々な用途に使われる。
樹皮の繊維はロープ、漁網などに利用され、材も使われる。
また医薬にも利用されている。
 
私が初めてアラビアゴムノキの名前を知ったのは、「ニセアカシア」 (ハリエンジュの別名)の名前の由来に興味を覚えて、色々なアカシアについて調べていた時であった。
senegal という、国名の種小名が付いた「アカシア」の樹から「ガム」が取れる、という意外性。そして、アラビアゴムノキに関しての記載はあるものの、花や葉の写真が事典に載っていないために、どんな木なのかイメージが掴めないでいた。
 
その時は、まさか仕事で「セネガル」に行くなどとは夢にも思っていなかった。
 
セネガルの首都 ダカールの植物園なら アラビアゴムノキ があるはずだ、と無人の園内を探し回ったが、目当ての名札はなかった。
あきらめかけていた時に植物園の管理者のひとりに出会い、早速 Acacia senegal はないかと尋ねたら案内してくれた。
フランス語がしゃべれなくても、学名は世界共通!便利なことを実感した。
 
樹 形 葉の形 と 刺

木が立て込んでいる場所で、全体を撮影することはできなかった。

京都植物園温室にあった「アラビアゴムノキ」。 ただし....
週間朝日百科『植物の世界』の記述によると、刺は3本で真ん中が湾曲しているという。
この木は刺が2本しかなく、葉の感じもこのページ トップの現地ものと違うため、どうも怪しい。
幹の様子 若い木の生えぎわ
この幹の太さは10cm程度であったが、表面がひび割れている。
この樹皮の繊維が強力なロープとなる。
 
名前の由来 アラビアゴムノキ Acacia sensgal
 
アラビアゴムノキ
 :
ゴムノキといっても、トウダイグサ科の「パラゴムノキ」や、クワ科の「インドゴムノキ」のような弾力のある「ゴム」ではなく、コロイド状に水に溶け、乾くとさらっとする糊である。切手の裏や封筒に使われている。
 
天然ゴムのかなりの部分が、合成ゴムに取って代わられているが、アラビアゴムはどうなのであろうか?
 
原産地はセネガルだけでなく、むしろスーダンやエチオピアなど「紅海」側が多いようで、そのために「アラビア」ゴムと呼ばれるようになったものと思われる。
もちろん「アラビアゴムノキ」は「和名」ではなく、英語名をカタカナにしたものである。
Acacia アカシア属 :  
「刺がある」という意味のギリシア語、akazo に由来する。
 
和名はこれも学名の読みそのままであるが、ラテン語の発音は「アカキア」のようだ。オーストラリアを中心とした熱帯・亜熱帯に、約 1,200種がある。
 
アカシアという属名は、17世紀後半のパリの植物学者 トゥルヌフォールがすでに使っていたものを、リンネが『植物の属』(1735)に記載している。ところが学名の出発点である『植物の種』(1753) では、リンネは現在の「アカシア属」の植物を、すべて「ミモサ属」としてまとめてしまい、アカシア属としての記載はないために、命名者は翌年1754年に新属を定義した Philip Miller となっている。
種小名 senegal : セネガルの」という意味。
セネガル産 第2弾!
 
事典にも記載があったので間違いない。
ただしセネガル特産というわけではなく、「原産地」に示したように、スーダンなどアフリカ北部の熱帯地方に広く自生している。
 
リンネの弟子たちが、ヨーロッパからアフリカの西海岸沿いに南下していった時に、セネガルで発見・採取したために学名となったものと思われる。
 
 
アラビアゴムノキ ←ゴムノキ
ゴムノキは「ゴム」が取れる植物およびその近縁の総称で、単にゴムノキという種はない。
 
観葉植物でおなじみの、クワ科イチジク属のインドゴムノキ、カシワバゴムノキ と、トウダイグサ科パラゴムノキ属のパラゴムノキ(ブラジル原産)がある。
 
インドゴムノキのゴムは質が悪く、現在は使われていない。
マレーシアを中心とした東南アジアで、パラゴムノキから天然ゴムが生産されているが、40年以上も前から合成ゴムの生産量の方が多くなっている。
パラゴムノキ Hevea brasiliensis Mull. Arg. (1865)
パラゴムノキ

京都植物園 温室
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
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