ルリゴクラクチョウカ 瑠璃極楽鳥花
Strelitzia nicolai Regel & Kotn. (1858)
別 名 : オウギバショウモドキ
科 名 : ゴクラクチョウカ科 Strelitziaceae
属 名 : ゴクラクチョウカ属
        Strelitzia Ait. (1789)
英語名 : white bird-of-paradise
原産地 : 南アフリカ
用 途 : 熱帯各地に、観賞用として植えられる
撮影地 : アメリカ, 日本 温室、沖縄

ハワイ島ヒロ市のホテル敷地内に植えられていたもの。 ヒロでは貿易風がマウナ・ケアにあたって雲ができるために、毎日雨が降って水遣り不要。

日本では、本土では温室だが 沖縄なら路地で育つ。

樹 形    すべて2012.6.22
高さ 7m 弱。 10mにはなるそうだが、いくら伸びてもこの広さがあれば問題なし。 さすがは?ハワイで、目の高さで花が咲いている。

樹形 その2 幹の様子
4m ほどの小さい木。葉はそれほど破れておらず、美しい。 根元には 10 センチぐらいの「幹」が見えている。

幹の断面       2006.11.4
伊豆熱川 バナナワニ園の温室で。 幹は 椰子と同じようだ。 成長は良好で屋根に届くまでに大きくなるが、高い所でしか花が咲かない。 

花の様子
一輪だけ咲いているものは、鳥が飛び立つ瞬間に見える。

同じ属に やはり白花の Strelitzia alba があるが、ひとつの花茎にひとつの花序(暗紫色の舟形の苞)しか付かないそうで、一般には栽培されていないそうだ。

大きくなってきた 実
苞に対して垂直に いくつもの実が並んでいる。 大きさは小さな卵ぐらい。


名前の由来 ルリゴクラクチョウカ Strelitzia nicolai

ルリゴクラクチョウカ
: 青い色のゴクラクチョウカ の意味
ルリゴクラクチョウカの名前は、熱川バナナワニ園にあったもの。 ゴクラクチョウカとの一番の違いは花被片(外花被片)が白い事であり、英語名は white bird-of-paradise (白極楽鳥花)となっている。
内花被片は ともに 青紫色なので、「瑠璃」は青黒い「苞」の色を指すものと思われる。
ルリゴクラクチョウカ ゴクラクチョウカ

ルリ 瑠璃
鉱物の ラピスラズリ のことで、それを粉砕・精製した「瑠璃色」は、少し白味を帯びる。 
改めて苞の写真を見ると、粉を噴いて白いところも瑠璃である。
ラズライト 瑠璃色
   R: 42
   G: 92
   B:170
色番号も含めて Wikipedia より
ラピス・ラズリーは日本では採れないので、非常に高価だった。 代用品として藍銅鉱から作る岩絵の具である「群青」が使われた。
アズライト 群青色
   R: 70
   G: 93
   B:170

 ← ゴクラクチョウカ 極楽鳥花
同じ南アフリカ原産だが、ゴクラクチョウカは 1m強にしかならない。
地際から葉を出して、茎はほとんど無い。
つぼみの状態のゴクラクチョウカ


真鶴岬で。
東京でも越冬できる。
名前の由来は、直立する オレンジ色の外花被片(萼片) が、パプアニューギニアの国鳥ともなっている、ゴクラクチョウの頭に似ているため、あるいはゴクラクチョウが翼をひろげているようなイメージから名付けられた。
ゴクラクチョウ ゴクラクチョウカ
Global technologies
 による
the Rainforest Habitat のホームページ から

別名 : オウギバショウモドキ 扇芭蕉擬き
同じゴクラクチョウカ科で 隣の属の、オウギバショウは葉が対生して 花の色も白と似ているため。

違いはオウギバショウの芯が 堅く木質化して、高さ 20 mにもなること。 葉も密に付いて扇を広げた形となる。 また花序では、花が入っている「仏炎苞」の数が多い。
 2005.11.17  オウギバショウの樹形(幼木) オオギバショウの花 序  2003.10.19

種小名 nicolai : 人名による
アメリカ農務省の GRIN にコメントがあり、Nicolai Nicolajewitsch を顕彰したものとなっているが、その人物についての詳細はわからない。 ロシア人だろうか?
 
 命名者(のひとり) Eduard August von Regel (1815 - 1892)
ドイツ生まれの 園芸家 ・植物学者。 50才の頃に サント・ペテルスブルグに移り、60才からは ロシア帝国植物園の園長を務めた。 この事から 詳細は不明の「ニコライ氏」は、ロシア人だと推測される。
Regel
Wikipedia より

ストレリチア属 Strelitzia属、ストレリチア科 :
                     シュトレリッツ家 にちなむ
ゴクラクチョウカの発見者は、イギリス国王ジョージ三世 (1738 - 1820) が派遣したプラントハンター、フランシス・マッソン (1741 - 1805) である。

1773年に南アフリカ喜望峰で発見されたものがヨーロッパに送られ、ウィリアム・エイトンによって命名された学名 Strelitzia regina は、ジョージ三世のお妃 シャルロッテ(シャーロット 1744 - 1818)に捧げられた。
すなわち、属名Strelitzia はシャルロッテの生家「シュトレリッツ家」にちなんだものであり、種小名 reginae は「女王の」という意味である。
シャルロッテ王妃
Wikipedia より
ストレリチア科は以前 バショウ科に含まれていたが、葉の出方が螺旋状ではなく、また 花は両性で 花被片も筒状にはならないなど 多くの違いがあるので、クロンキストノ分類の時から独立した科とされていた。 葉緑体のDNA解析でも、ショウガ目の中でバショウ科のすぐ近くではなく、少し離れた位置関係にあるそうだ。


 植物の分類 APG分類による ルリゴクラクチョウカ の位置

クロンキストの分類までは、「単子葉植物」全体が「双子葉植物」よりも 後から分化したと考えられていた。

葉緑体の遺伝子を解析した結果、単子葉植物は ごく早い時期に分化したことが分かった。 昔の分類学者はさぞかし驚いていることだろう。

原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
 ショウガ目  バショウ科、ヘリコニア科、ゴクラクチョウカ科、ショウガ科、など
ゴクラクチョウカ科  オウギバショウ属、ゴクラクチョウカ
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
以前の分類場所 単子葉植物  オモダカ目、ツユクサ目、ショウガ目、ユリ目、ラン目、など
ショウガ目  ゴクラクチョウカ科、ヘリコニア科、バショウ科、ショウガ科、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

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