キバナノウゼンカズラ 黄花凌霄花 (仮称)
Tecoma stans Juss. (1789)
← Bignonia stans Linn. (1753)
 


ダカール植物園に植えられていたもの。
科 名 : ノウゼンガズラ科 Bignoniaceae
属 名 : テコマ属 Tecoma Juss.(1789)
英 名 : yellow bignonia, yellowbells yellow elder
中国名: 黄鐘花
原産地 : 北アメリカ南部、西インド諸島、メキシコ、ペルー
用 途 : 観賞用
日本では温室に地植えすると、花付きがよいそうだ
撮影地: セネガル

実は、小学館の『園芸植物大事典』朝日新聞社の『植物の世界』ともに、和名が記載されていない。"キバナノウゼンカズラ"は私が勝手に名付けたものであるが、本種は直立性の低木で、つる性ではないので最適とはいえない。
テコマ属を、近縁のTecomaria属と合わせてヒメノウゼンカズラ属とする考え方もある。 → 参考:ヒメノウゼンガズラ
 
この株は高さ 2m程度 花は茎の先端に数個付く




花の大きさは 4〜5cm。
名前の由来  Tecoma stans
 
Tecoma
テコマ属 :
この属のメキシコでの名前、tecomaxochitl に由来する。
北アメリカから南アメリカにかけて、約 16種が分布する。
種小名 stans : 「直立の」という意味。
リンネは当初、ノウゼンカズラ科の中でつる性である、ツリガネカズラ(Bignonia)属として分類した。本種はつる性ではなく、直立する低木であるところを特徴としてとらえ、種小名を「直立の」という形容詞にしたものである。
リンネの命名の約30年後、フランス人植物学者のジュシューによって、テコマ属に分類しなおされた。
テコマ属では直立低木というのは共通した特徴であるため、stans は不適切な名前となってしまった。
 
ノウゼンカズラ科 : Bignoniaceae
主として熱帯、亜熱帯に約120属800種がある。
ほとんどが直立高木、低木あるいはつる性の樹木である。
左右対称の鐘状・筒状・漏斗状の花が特徴である。
 
Bignonia の名は、フランス ルイ14世の司書 ビニョン (A. J. P. Bignon 1662-1743) にちなんで名付けられた。
 
 参 考
 
ノウゼンガズラ(凌霄花) : Campsis grandiflora K.Schum. (1894)
←Bignonia grandiflora Thunberug (1784)
中国原産で、日本には古く平安時代に渡来したという。
ノウゼンガズラ Campsis 属にはこのほかに、アメリカノウゼンガズラの2種のみがある。属名はギリシア語kampeに由来し、「曲がっている」という意味である。これは雄しべが湾曲していることによる。
 
初めの命名は、日本にやってきたチュンベリーが、ツリガネカズラ Bignonia 属として『日本の植物』に記載したものである。
 
種小名 grandiflora は「大きな花」。
"キバナノウゼンカズラ"の花の形によく似ているでしょう。

東京豊島区 向原
さて、ノウゼンガズラの名前の由来である。
ノウゼンガズラは古くは「ノショウ」「ノショウカズラ」と呼ばれていた。ノショウが転じてノウゼンとなったということであるが、どうも納得がいかない。
 
中国名の「凌霄花」の漢字を漢和辞典で引くと、「凌」の音は「リョウ」、訓は「しのぐ」で、意味は「ふるえる、しのぐ」である。
次の「霄」の音は「ショウ」、訓は「そら」で、意味は「雨交じりの雪」の字の形から「消える」、また「遠い空」「かすみ」である。
併せて凌霄花は「大空をもしのぐ花」という意味になる。木々に絡みついて高々と成長した蔓、真夏の青い空をバックにして橙色の花がたくさん咲いている様子である。
古くには、空をもしのぐ高い意志をさして「凌霄(リョウショウ)の志」という言葉があった。とか...
 
「リョウ」が転じて「ノウ」になるのは自然である。「ゼン」はやはり「ショウ」が転化したものなのであろう。
 
 参 考 2
 
アメリカノウゼンガズラ(アメリカ凌霄花) :
Campsis radicans Seem. (1867)
←Bignonia radicans Linn. (1753)
北アメリカ東南部に分布するノウゼンガズラ。
種小名 radicans は「根着の」という意味で、気根を出して木などに絡みつき10m以上に伸びることから。
 
花の径はノウゼンガズラよりも少し小さく、密集して咲いている。

小石川植物園

淡い黄色の品種「アプリコット」
ボストン樹木園で
 参 考 3
 
ヒメノウゼンガズラ(姫凌霄花) : Tecomaria capensis Spach (1840)
  ←Tecoma c. Lindl. (1827頃) ← Bignonia c. Thunb. (1800?)
南アフリカ原産で、花の大きさは3.5cmぐらいと小さいために「姫」の名が付いている。花の形が縦長であるところもノウゼンガズラとは違う。
 
通常は紅橙色であるが、写真は黄色の園芸品種「アウレア」。
 
テコマリア属はテコマ属に極めて近く、学名もテコマ属にちなんで名付けられたが、現在でも本属をテコマ属に含める学者がいる。
 
種小名 capensis は「岬の」という意味で、南アフリカ喜望峰を指す。チュンベリーが探検して採取し、ツリガネカズラ属として命名したものが、初めである。

新宿御苑 温室
 参 考 4
 
ツリガネガズラ(釣鐘葛) : Bignonia capreolata Linn. (1753)
北アメリカ原産のつる植物。ツリガネカズラ属はこの一種のみである。日本でも関東以西では路地で越冬する。
 
花の形は確かに鐘の形であるが、花の付き方は横を向いており、「釣り鐘」の命名はいまいちである。
今回事典を調べて、この色からカレーカズラと呼ばれているということを初めて知った。
 
種小名 capreolata は「巻髭のある」という意味で、小葉の先の方がつる状に変化し、さらに先端が吸盤になって他のものに吸着する様を捉えている。

東京 八重洲通りの中央分離帯
ツリガネガズラ属 : Bignonia Linn. (1735)
ノウゼンカズラ科の基準属。
リンネはツリガネカズラ以外に、19種の植物を Bignonia属として分類したが、その後の研究で別の属に細分化され、残っているのはツリガネカズラ1種のみとなってしまった。
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
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