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科 名: | キョウチクトウ科 Apocynaceae | ||
属 名: | テイカカズラ属 Trachelospermum Lem. (1851) |
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中国名: | 亜州絡石 ya zhou luo shi | |||
英 名: | star jasmine | |||
原産地: | 本州、四国、九州。中国各地、韓国南部、台湾、インドシナ | |||
用 途: | 観賞用として 垣根や盆栽として栽培される。茎や葉を乾燥したものは絡石と呼ばれる漢方薬として、解熱・強壮剤に使われる。 | |||
2022.9.7 改定 |
一重で白い花。しかも良い香りがするので 好きな花のひとつで、自宅の垣根に這わせている。 |
つる性の常緑植物で、植物園では 柴田記念館近くの ナツミカンの木に絡んでいたが、高いところにあるうえに 実が生ったのを見た事がないので、写真はおもに自宅のもので・・・。 |
成長が旺盛で、ほっておくと気根を出して壁にへばり付くし、道路側にも伸び出すため、「つる」を剪定する手間が掛かるのが難点である。 |
本種の葉の形状は変異が多いようで、事典の説明でも「楕円、狭卵形、倒卵形に近い」の用語が並んでおり、葉の先端は「鈍頭から鋭頭、まれには尾形」となんでもあり。ごく近縁の
T. jasminoides トウテイカカズラとの違いがはっきりしないが、『園芸植物大事典』の萼についての記述、 テイカカズラ:長さ 2~3mm、花筒狭部より短い トウテイカカズラ:長さ 5~6mm、花筒狭部と同等か長い を根拠に、植物園、自宅の両方ともに T. asiaticum とした。 |
植物園の写真はタイトルを 白、自宅のものは 黒 とする。 |
①:ナツミカンに絡むテイカカズラ 2011.2.22. |
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中央のナツミカンの上部の茶色いツル。柴田記念館側から。 |
この後、ナツミカンを覆いつくすように繁殖してしまった。 |
取り払われたテイカカズラ | ||
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2022.9.1 |
上部には 枯れたツルが残っている。ナツミカンの特に右下半分の枝が無くなっている。テイカカズラの繁茂のせいで陽が当たらなくなり、枯れてしまったのだろう。テイカカズラは現在は、左側のイヌマキだけに絡まっている。 |
太いツル 2011.2.22. |
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葉の様子 ともに 2011.2.22. | |
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植物園の個体の葉は細長い。左:冬の冷気で赤くなった葉。 右:ナツミカンの幹の回りの葉は緑色である。 |
自宅の葉 と 冬芽 2019.2.10. |
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頂芽は混芽かもしれないが、側芽は花芽。葉はほぼすべてがこのような楕円形である。 |
.2016.4.12 頂芽の成長 | 乳液 |
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頂芽では、芽鱗の腋に数個の花序をつける。新梢の茎につく葉を苞葉と考えれば、全体を花序と捉えることもできる。 右:新梢には毛があるが脱落する。茎を千切ると、たちまち白い液が滴り落ちる。成長が旺盛で、芯摘みをしたつもりでもすぐに腋芽が伸び出してくる。 |
春の紅葉・落葉 2012.4.24. |
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無数の花 2004.5.9. |
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垣根に仕立て、年に数回剪定しないとこうはならない。 それぞれの花は、咲き始めからいい匂いを漂わせて数日間咲き続け、次第に黄色みを帯びる(次の写真)。開花にずれがあるため、比較的花期が長い。また、初夏に最初の花が咲いたあと、数は少ないが、伸び出した新梢にも花がつく。 |
花 2008.5.23. | |
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キョウチクトウ科の特徴、ねじれた花。もともと非対称の花弁が裏側に反り返るために、いっそう捩じれて見える。平均的な花のサイズは直径 約2cm。花柄は長く さらに首(花筒・喉部)の長い花がつく |
花の詳細 |
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花の断面 |
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柱頭のすぐ下で 雄しべが合着する。この個体の萼は、反り返らずに花筒に沿っている。 |
植物園の花 |
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萼▼は 花筒狭部より短いものの、反り返っている。 |
葉形が極めて細長いことも含めて、次の写真 T. jasminoides トウキョウチクトウ(トウテイカカズラ)の気配がある。 |
参考:T. jasminoides | ||
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Wikipediaより |
花筒の長さと比較しにくいが、額片は長く 反り返っている。 |
二股の果実 と 葉の様子 2007.10.7. |
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キョウチクトウ科の心皮は2つで、本種では完全に2本に分かれた果実となる。ただし めったに結実しない。 |
サヤが割れた状態 |
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果実の長さは 10~15cm。種子に付いている長い毛は 約2~2.5cmもあり、種子よりも長い。束ねた形で並んでいたものが莢から外れると わずかに「渦巻いた形」で水平に広がる。 |
毛が開いた状態の種子 |
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日本に自生する植物で、長い羽毛がつく種子は珍しい。 |
テイカカズラ の 位 置 |
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写真① : | C13 c | ● | 柴田記念館への道の曲がり角、イヌマキによじ登っている |
名前の由来 テイカカズラ Trachelospermum asiaticum | ||||||||||
テイカカズラ : 定家葛 | ||||||||||
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種小名 asiaticum: アジア産の という意味 | ||||||||||
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Trachelospermum : テイカカズラ属 | ||||||||||
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キョウチクトウ科 Apocynaceae: | ||||||||||
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テイカカズラ属 Trachelospermum の命名物語 |
GRINのリストを見ていたら、テイカカズラ属に「conserved (nom. cons.) with a conserved type」というコメントがあったので調べてみた。 |
は正名、 | は異名 | ||
内は 推定事項 | |||
肖像写真は Wikipediaより 図版は、Biodiversity Heritage Library より |
2022.11.9 内容を追加修正 | |||||||||
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年 | 学 名 | 命名者 | 属名・備考 など | ||||||
① | 1825 | Rhyncospermum属 | ラインヴァルト | キク科 | |||||
Rhyncospermum verticillatym | |||||||||
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② | 1844 | Rhyncospermum 属 | A. ドゥ カンドール | キョウチクトウ科 | |||||
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年 | 学 名 | 命名者 | 属名・備考 など | ||||||
③ | 1846 | Rhynchospermum jasminoides | 異名 | ||||||
リンドリー | |||||||||
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④ | 1851 | Trachelospermum 属 | ルメール | 正名 ただし 保留タイプ を伴った保留名 |
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Trachelospermum jasminoides | |||||||||
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考察: ひとつひとつの種には、基準となる標本「タイプ標本」が必要とされている。このため現在は、新種を定義する時には標本の提出が義務付けられているが、古い出版物では標本の代わりに「図」も「タイプ」となりうる。 |
そこで、確証はないが以下のように考えた。 |
④の定義では トウキョウチクトウ の図版・標本が無いので、異名となっている リンドリーの ③ Rhync(h)ospermum jasminoides の図を「保留タイプ」と認定した。 |
別の言い方では、 |
Trachelospermum属 の基本種は T. jasminoides だが、その「タイプ」は Rhyncospermum jasminoides の図で、「保留タイプ」となっている。 |
このような特殊な保留名であるため、通常の保留名に対応する「棄却名」は無い。 |
植物の分類 : | APG II 分類による テイカカズラ の位置 |
原始的な植物 |
↑ | 緑藻 : | アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など | |||||
シダ植物 : | 維管束があり 胞子で増える植物 | ||||||
小葉植物 : | ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など | ||||||
大葉植物(シダ類): | マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど | ||||||
種子植物 : | 維管束があり 種子で増える植物 | ||||||
裸子植物 : | 種子が露出している | ||||||
ソテツ 類 : | ソテツ、ザミア、など | ||||||
イチョウ類 : | イチョウ | ||||||
マツ 類 : | マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など | ||||||
被子植物 : | 種子が真皮に蔽われている | ||||||
被子植物基底群 : | アンボレラ、スイレン、など | ||||||
モクレン亜綱 : | コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など | ||||||
単子葉 類 : | ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など | ||||||
真生双子葉類 : | キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など | ||||||
中核真生双子葉類: | ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など | ||||||
バラ目 群 : | |||||||
バラ亜綱: | ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など | ||||||
マメ 群: | ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など | ||||||
アオイ群: | アブラナ、アオイ、ムクロジ、など | ||||||
キク目 群 : | |||||||
キク亜綱: | ミズキ、ツツジ、など | ||||||
シソ 群 : | ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など | ||||||
リンドウ目 | マチン科、リンドウ科、キョウチクトウ科、など | ||||||
キョウチクトウ科 | アリアケカズラ属、バシクルモン属、トウワタ属、キョウチクトウ属 | ||||||
↓ | キキョウ群: | モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など | |||||
後から分化した植物 (進化した植物 ) |
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