アカハダノキ 赤肌の木
ヒマメ 緋豆 (仮称)
Archidendron lucidum I. C. Nielsen (1979)
← Pithecellobium lucidum Bentham (1844)
科 名 : ネムノキ科 Mimosaceae
属 名 : アカハダノキ属 
Archidendron F. Muell. (1865)
原産地 : 西表島、石垣島、台湾、中国、インドシナ、タイ
英語名 : Scarlet bean
用 途 : 花や実を鑑賞するために栽培される。
撮影地 : シンガポール

シンガポール植物園では、離れた別の2カ所に植えられている。
1月と7月 ともに花や実を見ることができた。
ということは、かなり長い期間、あるいは通年で咲いているのだろう。
 
上に伸びた樹形 樹皮の色は不明


全体像を撮るのを忘れてしまった。

この木は7mぐらいあった。
事典によると、10mまでになる。
 
 
葉の様子
葉は6枚の「大きな」小葉の複葉である。
左の木は、前の写真とは別の木で、しだれている。

花は白い雄しべが目立つ。まるで フトモモ のようだ。
黄緑色の花弁は、くるくると丸まっている。 ミニ・シェービングブラシ。
 
落ちた花を小葉に乗せて
黄緑の 小さな花弁が丸まっている。
 
花 と 色付きかけた実
少々ピンボケだが、赤い実が、開く前から螺旋状になっているのがわかる。
開いた実 種子の内部
初め艶があった果実の皮は、さらに赤くなるとつや消しとなる。
そして、内部はだいだい色。種子は黒い藍色。

このコントラストがすばらしい!

種子の表面には青白い粉が付いており、裂開後も糸(種柄)でぶら下がる。
落ちていたタネを割ってみたら、鮮やかな緑色だった。
 
名前の由来 アカハダノキ Archidendron lucidum

和名 アカハダノキ 赤肌の木 :
『植物の世界/朝日新聞社』には、「枝に赤褐色の毛が密生するため、アカハダノキとよばれるらしい」 とあった。

現地で細かく確認したわけではないが、写真を見る限り、そんなに毛は 生えていないようだ。

第一、木から少しでも離れると、枝の印象などまるでなくなってしまう。

ここはなんと言っても「マメの色」でしょう。
アカハダノキ」は「赤肌豆の木」の意味で、豆果としては珍しく、熟成しても茶色くならずに赤い色の果実を表しているものと考える。
 
英語名 Scarlet bean : 
普通ならばこう名付けると思う。

英語名に倣うまでもなく、私は「ヒマメ 緋豆」を新しい名前として提案したい。
 
大日本インキによる『日本の伝統色』によると、緋色はこんな感じである。 (ディスプレイによって違ってくるが・・・)
まさに、「ヒマメ」の果実の外側の色。
種小名 lucidum : 強い光沢のある という意味
輝く新葉を表しているものと思われる。
時間が経つと くすんでくるのは、やむを得ない。
 
Archidendron属  ヒマメ属 (仮称)
Archidendron属の由来については、『植物學名辞典/牧野』にも 『園芸植物大事典』にも載っていない。

ラテン語で arche- は「原始的な・古代の」であり、dendron は「樹木」である。

何を根拠に「古い樹木」と名付けたのかは不明。
 

アカハダノキ(ヒマメ 仮名)は長い間 Pithecellobium属 (キンキジュ属)に分類されてきた。

果実が螺旋状になるところは似ているが、内部に果肉がないところから、1979年に Archidendron属に移された。

ジョージ・ベンサムが本種をPithecellobium属として記載したのは 1844年。
その後、ドイツに生まれ、後にオーストラリアに移った19世紀の植物学者ミューラーによって、1865年に Archidendron属が立てられたにもかかわらず、それから 100年以上ものあいだ、放って置かれたことになる。

参考に、キンキジュ属の「キンキジュ」を掲げる。
 
参考 キンキジュ  Pithecellobium dulce

 
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物學名辞典/牧野富太郎、清水藤太郎、
        植物学ラテン語辞典/豊国秀夫、
        羅和辞典/研究社
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