キワタノキ 木綿の木
Bombax caiba Linn. ( 1753 )
別 名 : インドワタノキ
科 名 : アオイ科 Malvaceae
旧科名 : パンヤ科 Bombacaceae
APG分類:  アオイ科
属 名 : キワタノキ属 Bombax Linn. (1753)
英語名 : red silk-cotton tree
中国名 : 木綿
原産地 : インドからオーストラリア
用 途 : 以前は種子の周りの綿を、クッションなどの詰め物として利用した。
撮影地 : ジャマイカ

キングストンのホープ植物園の中で、数少ない名札が付いた木のひとつ。

その名前 Bombax malabaricum はキワタノキの「異名」だが、この木は本当に「キワタノキ」だろうか?
 
付いていた名札 樹形

疑問点は2つ。
まず花の開き具合が、参考にしている事典の写真よりもかなり小さい。さらに樹形が不自然なことである。

沖縄で見たキワタノキは、パンヤ科によくある、「直幹と水平に張り出す枝」というスタイルだったが、この木は古びた幹にもかかわらず高さが3mもなかった。ハリケーンで折れたのか?
 
水平の太い幹 一部にトゲが残っている



 
古びた幹の根元 葉の様子

 
どれも全開しない花 実の中には綿が見える

 
花のアップ
果実
果実は4室の中軸胎座。果皮が4つに割れ、大量の綿毛が付いた種子(黒い粒)がある。種子の数はそれほど多くない。
 
心配な点はあるが、『園芸植物大事典』に記載されている以下の特徴、
  ・葉は掌状複葉
  ・幹は灰褐色
  ・幹に円錐状の突起 (トゲ)
  ・紅色の花
  ・雌しべの柱頭が5つに分枝
  ・雄しべは2輪に付く
  ・楕円状の果実
  ・種子に長い毛
などが合っているので、間違いないだろう。
 
名前の由来 キワタノキ Bombax caiba

キワタノキ 木綿の木 : ワタがなる木 の意味
本来は中国名のように「キワタ」だけでよいはずだ。
ただし日本では「木綿」の読みは「モメン」であり、通常のワタの事になってしまう。

カタカナだけなら「キワタ」でよいが、漢字の「木綿」は、先に「モメン」として使われてしまっていたので、わざわざ「キワタノキ 木綿の木」としたのかもしれない。
 
 参考 モメン について
「木綿」の項をある百科事典で調べてみたが、その由来については書かれていなかった。
綿毛が種子に付いたままのものを「実綿 (ミワタ)」、種子から取った綿毛を「繰綿 (クリワタ)」、その綿毛を加工・精製したものを「木綿 (モメン)」と呼ぶそうだ。

「ワタ」の項を見ると、ワタには木綿綿 (モメンワタ) のほかにも色々な種類があり、真綿、絹綿、羊毛綿、カポック綿 (パンヤ)、合成繊維綿、羽毛 などがあることがわかった。

この中で「真綿」は煮た繭を開いて伸ばしたもので、日本にワタが伝わる前は、「ワタ」と言えば「マワタ」のことを指したそうだ。

つまり、それまでの「ワタ (マワタ)」と区別するために、新しくはいってきた「ワタ」には何かを付け加える必要があったわけで、厳密には一年草であって木本 (モクホン)ではないのだが、木の綿、モクメンが「モメン」となったと思われる。

次第にモメンの方をワタと呼ぶようになったため、モメンに対してこれまでの「ワタ」は「真の綿」、「マワタ」と呼ばれるようになった。
 
種小名 ceiba : カヌーという意味
カリブ海地域のインディアンの呼び名で、同じパンヤ科の「パンヤノキ属 Ceiba属」の太い幹で、丸木舟を作ったことによる。
『園芸植物大事典』
Bombax属 キワタノキ属 :
ワタのギリシア名 bombax に由来する。

リンネはそれまでにエイトンが定義していた Xylon属と、トゥルヌフォールが定義していた Ceiba属を「Bombax属」としてまとめたうえで、本種キワタノキの種小名として ceiba を使った。

すぐ次の年の1754年、ジョン・ミラーが Ceiba属を定義し直したために、ceiba が属名と種小名の両方に使われることになり、混乱を招いている。
 
旧パンヤ科 Bombacaceae
APG分類では アオイ科に統合された。
基準属が Bombax 属 キワタノキ属だった。 もともと 分類学上も「ワタ」の属する「アオイ科」に近かった。

熱帯に分布し、果実や種子を食用にしたり、果実の毛を綿のように利用したりと、有用種が多い。

28属200種ほどの小さなグループで、バオバブノキ属、キワタノキ属、トックリキワタ属、パンヤノキ属、ドリアン属、バルサ属、パキラ属などがあった。
 
参考文献 : Species Plantarum 復刻版/植物文献刊行会
        Genera Plantarum ed.5 復刻版/植物文献刊行会
        Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        日本大百科全書/小学館
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