オオホザキアヤメ 大穂咲き菖蒲
Cheilocostus speciosus C.Specht (2006)
← Costus speciosus Smith (1791)
← Banksea speciosa Koenig (1783)
別 名 : フクジンソウ 福神草?
科 名 : オオホザキアヤメ科 Costaceae
属 名 : Cheilocostus 属
Cheilocostus C.Specht (2006)
原産地 : インド、ネパール、スリランカ、インドシナ半島、中国南部、台湾、インドネシア、パプアニューギニア
用 途 : 観賞用として栽培される。

撮影地 :
シンガポール

一日で萎んでしまう花であるが、華やかで見栄えがする。

シンガポール植物園ではふたつの場所に植えられているのを見かけた。
ひとつは「ジンジャー・ガーデン」。 もうひとつは正門から小川に沿って登って行った先のトイレ横の植え込み。
 
高さ 1.2m〜1.8m
葉のボリュームの割には 花が少ない。 3mにもなることがあるそうだ。
 
葉の様子
葉は茎に螺旋状に付く。
 
つぼみ から 咲き終わった花まで
紅がかったえんじ色の「苞」は、いつまでも花序に残っている。
つぼみの時に淡いピンクだった「萼」は、3枚。
花弁はラッパ状で、1枚のように見える。中心部は黄色い。
 
花  右は背面から

 
名前の由来 オオホザキアヤメ Cheilocostus speciosus

和名 オオホザキアヤメ : 大きな花で穂咲きになるアヤメ
この花が「アヤメ」に似ているかどうかは問題だが、それは別として、アヤメに代表されるアイリス属(イリス属)の花の数は、一本の茎にせいぜい数個まで。

本種は茎の先に無数の花が付く形であるため、「ホザキアヤメ」としたものである。
 
アヤメ ジャーマンアイリス

用語の解説 穂咲き

一本の軸(花軸)にたくさんの花が付く形を「総穂花序 (ソウスイカジョ)」と呼ぶが、いくつかのタイプがある。

総状花序 : 基本タイプで、それぞれの花に柄(花柄)が付いているものをいう。例として「フジ」をあげる。

穂状花序 : スイジョウ と呼び、花の柄が無くて、花軸に直接花が付いている形。これが「穂咲き」である。
 
総状花序 ノダフジ 穂状花序 ヘラオオバコ

別名の「フクジンソウ」についての由来は不明。
種小名 speciosus : 美形の という意味
なんといっても大型の綺麗な花。長径は10cmにもなる。

しかし、同じ属にもっと綺麗な花がないとも限らない。
命名は「早い者勝ち」 である。
 ← Kaempferia speciosa Thunb. (1825)
 
Cheilocostus ケイロコスツス属 : 唇弁のあるコスツス属
cheil 唇」と 「コスツス」を合成した名前である。

長い間「コスツス属」に分類されていたが、つい最近(2006年)、新しい属が認められて分類し直された。
『Checklist of Selected Plants Families』/Kew Gardens

「唇」は恐らく花の中央に見える、仮雄しべ(花粉を作らない雄しべ)が変形したものの事であろう。
しかし、コスツス属と新しい属の相違点など、詳しいことはわからない。 「唇」が発達していないものが、コスツス属に残されたのかも知れない。
 

costus の由来は『園芸植物大事典』に、
「プリニウス (22-79) によって用いられた古名で、おそらくアラビア語 koost に由来する」
とあるが、koost の意味までは書かれていない。

プリニウスは紀元1世紀の政治家で博物学者。
日本はまだ、「倭の奴の国王」の時代である。
 
オオホザキアヤメ科 Costaceae :
コスツス属は、基本的にエングラーの分類によっている『園芸植物大事典』では「ショウガ科」に分類されている。

クロンキストの分類によっている『朝日百科/植物の世界』は「オオホザキアヤメ科」である。

以下に、両者の違いをまとめてみた。
 
 
部位 オオホザキアヤメ科
Costaceae
ショウガ科
Zingiberaceae
茎がある
茎はなく、葉が集まった偽茎


2列互生
葉の付き方 螺旋形に付く
花の付き方 茎の尖端に付く
偽茎の中を通って地下から
変化した唇弁 もとの仮雄しべの数は5本 もとの仮雄しべの数は2本
精油の香り なし あり

参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館
        植物の世界/朝日新聞社
        植物學名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
        園芸・植物用語事典/土橋 豊
        植物用語事典/清水建美
世界の植物 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ