オオバキンカチャ 大葉金花茶
Camellia euphlebia
     Merrill ex Sealy (1949)
科 名: ツバキ科 Theaceae、チャノキ連
属 名: ツバキ属 Camellia Linn.
 原始ツバキ亜属、Archecamellia
中国名: 顕脈金花茶 xiân mài jin hua cha
原産地: 中国 広西壮族自治区、ベトナム
用 途: 観賞用。

キンカチャとよく似ており、植栽場所もキンカチャのすぐ近く。GRIN のデータベースに載ってはいるものの、「学名は検証できていない」となっている。


植栽場所
メインスロープを登り始めてすぐのクランクを過ぎた左側。スダジイの大木の下だが、一番手前に植えられているので午前中は陽が当たる。
樹 形       .2022.8.18.
高さ 約1.8 mほど。なかなか上に伸びない。左から光が来るので、葉がすべてスロープの方を向いている。樹皮は灰白色。

伸長と開花は冬

枝の伸び方      2022.8.18.
真夏の状態。スロープに近い位置に植えられているので、ストロボなしで撮影できる。写真にすると、裏に凹んだ葉脈がよりくっきりとする。
ここの環境では毎年4葉をつけている。が年枝境で、先端部の前年に伸びた部分は ① と ③葉が落ちてしまっている。
芽鱗痕と第1葉の間には早落性の低出葉があり、間隔が長い。第2葉が最も大きく、最後の第4葉が一番小さい。第3と第4葉の節間はごく短い。
葉 裏       2022.8.18.
葉裏はかなり明るい。鋸歯はさほど鋭くなく、特に基部近くはほとんど無しの状態。

成長しだした頂芽     2024.11.17.
夏から時間が経ってしまったが、頂芽が成長を始めている。この枝には蕾がないが、ほかの多くの枝では蕾も生長している。
側枝についた蕾      2024.11.17.
3葉をつけた前年枝(側枝)の葉腋(腋芽の第1芽鱗の腋と推定される)にひとつずつついた蕾。ほかの枝でも、頂芽についている蕾は見かけなかった。早いうちから 萼がはっきりとわかる。
出 葉          2024.12.8.
高出葉がぐんぐん伸びて中から白い葉裏の普通葉が出てくる。
ほかの枝では、すでに完全に開葉したものもある。高出葉は 10センチ近くなるものもある。
三 色          2024.12.15.
大きく広がると 葉裏は緑が濃くなってくる。

開 花          2024.12.22.
開花にはばらつきがあるが、年末までにはほとんどが開花した。花は下向きに咲く。
満 開        2024.12.28.
キンカチャに較べて 花弁が小さい。薄暗いためにブレているが、3つに分かれた柱頭が見える。



オオバキンカチャ と キンカチャ の比較

オオバキンカチャ キンカチャ
冬芽の成長:
2024.11.23

2022.10.23 全般的に1ヶ月以上早い
オオバキンカチャ キンカチャ
低出葉:
2024.12.28 最後の低出葉は 特に白い

2022.10.27 淡いピンク色
葉のサイズ: 和名は「大葉キンカチャ」だが ともに大小があり、どちらが大きいとは言えない。
オオバキンカチャ キンカチャ
葉の形:
2022.8.18 幅広の楕円形、
基部は鈍形、先は尖らない

2022.8.18 細長い楕円形、
基部は楔型、先は尖る
葉脈: 側脈間の凹凸が整っているオオバキンカチャの方が「美しい」と言えよう。
オオバキンカチャ キンカチャ
花柄、萼:
花柄は短い
早くから萼が濃くはっきりとわかる

花柄は少し長め。蕾が大きくなって
いるが、まだ萼は黄色みがかっている
オオバキンカチャ キンカチャ
花:
花冠のサイズか小さい
外側の花弁と内花弁のサイズ差が無い
雌しべは葯よりも長い

内花弁は外側よりもずっと大きい
雌しべは見えていない

 
オオバキンカチャの 位 置
E 14 cd メインスロープ左側、植え込み内
温室内でも 鉢植えされている。


名前の由来 オオバキンカチャ Camellia euphlebia
 オオバキンカチャ 大葉金花茶:
ごく近縁の「キンカチャよりも 葉が大きい」のが理由だが、両者ともに葉のサイズには大小があり、一概にそうとは言い切れない。
 種小名 euphlebia:美しい葉脈のある
本種を記載したのはアメリカの植物学者 シーリー J. Robert Sealy (1907-2000) で、キュー植物園の機関誌『Kew Bulletin 1949』に、「New Name in Camellia」を寄稿した。

中 略
命名者は シーリーではなく「Merrill ex Sealy」となっていて、メリルである。
ラテン語「ex」は、もともとの「~から(場所)、~以来(時)」から転用されて、由来・区分・材料・原因・移り変わり などにも使われようになった。命名者の場合は、
  メリルの観察・記述を シーリーが正式に発表したもの
ということを示す。
最後の2行にはっきりと「種小名はメリルが提案したもの」と書かれている。


参考: 同じ「黄色いツバキ、キンカチャ」の命名にも、このふたりが関与していて、シーリーはこの号の数ページ後に現在の正名である Camellia petelotii を記載している。
詳しくは、キンカチャの項の 命名物語 を参照のこと。
学 名 命名者 属名・備考 など
1924  Thea petelotii  メリル   最初の命名、異名
1949  Camellia petelotii  シーリー  現在の正名
1965  Teopsis chrysantha  フー  キンカチャの異名
1975  Camellia chrysantha  津山 尚  同 異名、長く使われていた

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