マルバチシャノキ 丸葉萵苣の木
Ehretia dicksonii Hance (1862)
科 名 : ムラサキ科 Boraginaceae
属 名 : チシャノキ属 Ehretia
            P.Browne (1756)
中国名: 粗糠樹 ku kang shu
原産地 : 関東地方、四国、九州、沖縄
台湾、中国大陸、ベトナム、ブータン、ネパール
用 途 :


ムラサキ科の植物は ほとんどが草本だが、何種かの木本がある。 マルバチシャノキは園内の3箇所に植えられている。

@ : 奥のマルバチシャノキ      2013.9.21
上の段 20番通りを奥まで歩き、カリン林を過ぎた所に植えられている。 見えているのは シロマツの幹で、左手奥にあるマルバチシャノキの幹は見えていない。 高さ 9. 5 m。 2013年は 大量の実が生った。

          2本が一緒に      2012.5.31
裏側から。 写っているのは全体ではなく、左側に枝が伸びている。

地面近くまで 枝が 幹の様子
垂れ下がった枝に たくさんの実が付くこともあるが、2012年は全く無し。
樹皮は細かく割れて長く残るために、ヒビの深さは深い。


A : 斜面下の小さな木
標識62番の所。 根元付近の幹は空洞となっているが、元気は悪くない。

A : 幹の様子

                   つぼみは枝先に付く         2011.4.26

                 丸い葉と生長したつぼみ         2009.5.10
葉は両面ともに粗い毛と細かな突起があり、ザラザラしている。
特に表面には 短い刺が、葉柄から縁への方向に向かって生えている。 指に刺さることはない。 ザラザラしているためにほこりが溜まりやすく、特に雨が当たらない所などは、まるで 泥を振りかけたように汚くなる。

                 細かな花は集散花序          2011.5.24
黄色かったつぼみは 開くと白くて、緑の葉とのコントラストが美しいが、花弁は茶色く汚れやすい。 (次の写真の下側に)

                   花の詳細             2011.5.24
萼 ・花弁 ・雄しべの数は5つ、緑の雌しべの先がふたつに分かれている。 オレンジの葯は成熟すると黒くなる。 花粉は白いようだ。

                 @ : 鈴生りの実            2011.10.6
手に取れる枝に こんなに生る年もある。 ほこりで葉が汚くなっている。

                  @ : 黄色くなる            2000.10.1
実の先端が尖っている。 鳥は食べないので 甘くないのだろう。

実 と 種子                      2013.9.24
果実の中には2個の種子が入っているが、種子の曲面側には毛があり、柔らかい果肉がなかなか取れない。 写真は ていねいに洗い落として、乾燥させた状態である。

                   冬の落ち葉             2011.2.3
緑の葉は「ザラザラ・ごわごわ」 だが、分厚く硬いわけではないので、落ち葉は「シワシワ」。

 

マルバチシャノキ の 位 置
写真@: C3 c 20番通り カリン林を過ぎた所、2本
C3 a @ のすぐ奥に 2本
写真A: F12 c 標識62番手前右側、土手下

名前の由来 マルバチシャノキ Ehretia dicksonii

マルバチシャノキ
同じ属の チシャノキに較べて、葉が丸いところから。
チシャノキ
30番通りにある チシャノキ については、別項で取り上げている。

 ← 萵苣の木
チシャノキの由来は、若葉が食用となり その味が 萵苣(チシャ)・レタス に似ているため、といわれているが 味見した事はない・・・。
 
種小名 dicksonii : 人名による
命名者の Henry Fletcher Hance (1827-1886) はイギリスの外交官で、香港・広東・アモイなどに赴任し、仕事の傍らで植物研究を行った人物である。 
Dickson は、George Frederick Dickson だと思われるが、1839年に活躍した という事しかわからず、ハンスとの接点も不明である。
 
Ehretia 属 : 人名による
18世紀 ドイツ生まれの植物学・昆虫学者で 植物画家エーレット Georg Dionysius Ehret (1708-1770) を顕彰したもの。

リンネと同世代であり、東インド会社の総督で資産家だったクリフォード氏の元で、リンネと共同して『クリフォード氏植物園誌』(1737)を出版した。
 
ムラサキ科 Boraginaceae : 
香水を取るヘリオトロープ、歌にもうたわれるワスレナグサ、そして古来 紫色の染料として使われたムラサキなどを含み、約100属2,000種もの種類がある比較的大きな科である。

ムラサキ科の基準属はBorago属。 学名の由来はラテン語 borra で「剛毛の」の意味であり、この属あるいはムラサキ科の植物が硬い毛で覆われていることが多いため。

日本でのムラサキ科の代表選手「ムラサキ」は、いまや自生しているものが少なくなり、「危急種」に指定されている。 花は白いが 根の表皮から紫の染料を採る。 葉や茎には軟らかい毛がある。
                             ムラサキ                       2008.5.17
奈良万葉植物園で。 高さ 70cm。 これがマルバチシャノキと同じ科とは・・・。

の根の様子や染色については、チシャノキの後半に掲載している。



植物の分類 APG II 分類による マルバチシャノキ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
 目名称 不定  クロタキカズラ科、ムラサキ科、バーリア科、 など
ムラサキ科  ルリジサ属、ムラサキ属、カキバチシャノキ属、チシャノキ属、など
以前の分類場所  シソ目  レンノア科、ムラサキ科、クマツヅラ科、シソ科
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
目名称 不定 : シソ群ではあるものの、まだどの「目 もく」に属すか、確定していない科。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ