モミジバフウ 紅葉葉楓
Liquidambar styraciflua Linn. (1753)
別 名 : アメリカフウ
科 名 : フウ科 Altingiaceae または
マンサク科 Hamamelidaceae
属 名 : フウ属 Liquidambar Linn.               (1737)
英 名 : American sweet gum, red gum
原産地 : アメリカ合衆国、メキシコ、
中央アメリカ
用 途 : 街路樹・公園樹・緑陰樹、
芳香油を採る、材は家具に使われる

小石川植物園ではボダイジュ並木の右手 ユリノキの手前に2本 (@A)、20番通りの標識24番を過ぎた所の左側に1本 (B)。

街路樹など、園外で撮った写真も使って掲載する。

ボダイジュ並木横のモミジバフウ
冬は 落葉樹の樹形ウォッチングに最適の季節。正門方向を見ている。

@は 高さ25mとひょろ長く、枝があるのは 上3分の2だけ。
Aは 高さ11mと生育が悪い代わりに、手に取れる位置に枝がある。

A:秋のボダイジュ並木 2010.11.11.
前掲写真とは少し見ている方向が違う。上部の黄色い葉は、左右にある二本のユリノキ。@の木は Aの ほぼ真後ろにある。

B:樹 形     2011.2.3.
北方向を見ている。高さ 約20m。それほど樹木が混み合っていない恵まれた環境に植えられているが、周囲の樹木のためか、一部の枝が上を向いている。また通常は主幹が真っ直ぐで 枝振りもきれいなのだが、この木は曲がっている。太さは 目通り 約 55センチ。

2010.11.11              幹               2007.4.15

豊島区大塚公園 太さ 70センチ

多摩森林科学園

枝先に残る果実       2008.4.10.
ニューヨーク植物園
2015.1.23             @:冬 芽              2013.3.8
真冬の芽の色は褐色で皮質の芽鱗で保護されている。右写真では芽鱗のズレが始まっている。

@:伸び出した花序      2011.4.15.
望遠で撮っているので ボケている。そこで 落下した花序を。
2011.4.24.
筑波植物園。なぜたくさん落下したのかは不明。
左右の花序で、基の方にひとつだけ付いているのが雌花。ほかは雄花のようだ。花弁はないそうだ。

@:新 緑        2011.4.26.
伸びきらないこの時期が ちょうどカエデの葉のようだ。切れ込みの数は 5〜7。
若い実     2011.6.4.
葉の切れ込みが5つだと、イロハカエデのイメージからずれる。

枝に付く翼        2011.6.4.
これはコルク質が発達したもので、枝の片側に付くことが多い。事典には2年枝に付く と出ている。
実際に付くのは長く伸びた枝で、早い時は1年目の冬から盛り上がりが始まる。左の写真は2年目の4月。右写真の翼を見ると、3本の筋があるが、年輪と同じ原理なのだろうか?

成熟してきた果実      2007.11.18.
福岡植物園

B:黄 葉        2010.11.16.
東京では真っ赤にならないことが多い。

筑波市の街路樹            2013.11.2.
筑波なので東京よりも寒く、紅葉がみごと。ここの並木は二本を狭い間隔で植えた、ほかでは例を見ない特徴がある。    2011.8.6

落下した果実             2011.1.25.
球形の集合果は直径4センチ程度。尖っているのは花柱が堅く残ったもの。同属のフウよりも本数が少ないが、堅くてアクセサリーになる。
果実が落ちる頃には 中の種子は飛散してしまっていて、いまだに種子の写真を撮っていない。

 

モミジバフウ の 位 置
写真@: C7 ac ボダイジュ並木の先、右手
写真A: C7 a ボダイジュ並木の先、右側
写真B: C6 b 20番通り 標識24番を過ぎた左側

名前の由来 モミジバフウ Liquidambar styraciflua

和名 モミジバフウ : 葉の形がカエデに似た フウ
葉は5裂または7裂で、後者はまさにカエデのイメージ。
5 裂 7 裂

イタヤカエデ 5裂 イロハモミジ 5〜7裂

別名 アメリカフウ : アメリカ原産の フウ

 ← フウ : 中国名 楓 または 楓香樹
発音は Feng 、 または Feng - xiang - shu。原産地は 中国中南部および台湾である。
「楓」をカエデと読むのは日本でのことで、葉の形が似ているうえに紅葉するところからか、「カエデ(意味は蛙手) 」に 楓 の字を当ててしまった。葉が似ているといってもフウは 3裂なので、同じく中国原産の「トウカエデ」の葉に似ている。
フ ウ フウの紅葉

種小名 styraciflua : 蘇合香を流出する の意味 
「蘇合香」とは、フウ属の樹皮から採取した芳香を有する灰色の半流動性樹脂で、古くは沈香に配合して種々の香を作ったという。
Liquidambar フウ属 : 
ラテン語 liquidus 流体の + アラビア語 ambar 琥珀 の合成。アメリカフウなどから芳香のある樹脂が採れるためで、種小名と似たような意味である。
ラテン語読みでは「リクイダンバル」となるが、ここは英語読みして「リキッドアンバー」の方がわかりやすい。
マンサク科 Hamamelidaceae
花の形や実の形が異なる属が含まれる科で、フウ属、マンサク属のほかに、トサミズキ属、マルバノキ属、イスノキ属などがある。
マンサク Hamameris japonica
2011.3.20 小石川植物園
折りたたまれていた花弁に 皺が残っている。
マンサク属はフウ属とは違って、ひとつの花に雄しべと雌しべがあり、4枚の花弁もある。

マンサクの由来には2つある。
  @ まず咲く の意味
  A 満作 の意味
「まず咲く」説は、開花が現在の暦で2月〜3月、つまり旧暦では正月を迎えてから「真っ先に咲く」、あるいは 葉が出る前に「まず 咲く」ところから名付けられた、というもの。

花に関しては「ウメ」の方が 早いように思うし、葉が出る前に咲く花と言えば「サクラ」だと思うのだが・・・。
「満作」説は農民の「忌み言葉」によるものである。

春の山に早くから咲く花は美しいかも知れないが、マンサクは実を付けないために、「シイナ花」と呼ばれた。
「シイナ・粃」は実の入らないモミのことで、「凶作」に通じるということから嫌われて、反対の言葉である「満作」になった、というもの。

イネとは直接関係がないが、「アシ」が「悪し」に通じることから、「ヨシ」という別名が付けられている例もあるので、十分にあり得ることである。

フウ科 Altingiaceae : 人名による
APG分類の考え方以前から、マンサク科の中の「フウ亜科」を独立させて、「フウ科 Altingiaceae」とする考え方があった。アメリカ農務省のデータベース GRIN では、フウ科またはマンサク科 となっている。

人物の詳細は不明。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ