ゲッケイジュ 月桂樹
Laurus nobilis Linn. (1753)
科 名 : クスノキ科 Lauraceae
属 名 : ゲッケイジュ属 Laurus Linn.
中国名: 月桂 yue gui
英 名 : laurel , bay tree
ギリシア語: Dáphnê
原産地 : 地中海北部沿岸地方
トルコ、ギリシア、イタリア半島
用 途 : 良い香りのする葉を香辛料とする。家庭料理でも普通に使われる。
庭園樹、記念樹、鉢植えで観賞する。
 
                  ① : 樹 形             2011.4.15
養生所の井戸の右側、ツツジ園の所にある。 後ろのクスノキと重なっているが、色の濃い部分がゲッケイジュで 高さは 約 10.5 m。
2011.2.3
北側から ツツジ園方向を見ている。

幹 の 様子
丁度 標識33番のところである。 
幹は灰色。 地下から芽が出て株立ち状になっている。
 
           ② : 震災記念碑横のゲッケイジュ      2011.4.10
     ゲッケイジュ↑                    震災記念碑

              雌花のつぼみ 筑波植物園        2011.10.8
同じ日に 雄花のつぼみも観察したが、雌花の方がサイズが小さかった。

                   雄花のつぼみ            2011.3.23

                     雄 花              2011.4.15
薬は撒かないので、カイガラムシ天国。

『朝日百科/植物の世界』では「雌雄異株」、『園芸植物大事典』は「単性または両生」と記載が異なるが、植物園には雄花しか咲かず、実は生らないようだ。

                    雄花の詳細             2011.4.15
4本ずつ三重に付く雄しべ。 一番内側の雄しべの左右には、蜜を出す「腺体」がある。 ( 印 )   花の構造は同じ仲間のタブノキによく似ている。

                     新 芽              2009.4.22
新葉は花が終わってから。 初めだけ産毛が付いているがすぐに落ちる。

                     新 緑              2009.6.30
波打ってツヤのある葉が大変きれいであるが、少しするとすぐにカイガラムシが付き、それが出す汁にほこりが付いて、ひどい状態になってしまう。

自宅のものはそれ程ではなく、植物園だけがひどいのかと思っていたら 『園芸植物大事典』に、「日本ではカイガラムシの被害が多く、このため、観賞樹としての利用は比較的少ない」とあった。 
葉の裏は表と較べると白い。
2009.2.21

                筑波植物園の果実           2011.10.8
赤茶色に熟しかけているが、筑波でもカイガラムシが付いていて、黒サビ病のようになってしまっている。

 
ゲッケイジュの 位 置
写真①: D9 d 養生所の井戸右側、標識33番、高さ約 10.5 m
写真②: C5 ab 震災記念碑手前 右側

名前の由来 ゲッケイジュ Laurus nobilis

ゲッケイジュ 月桂樹 : 
現在の中国名も同じく「月桂」であるが、国語辞典で「月桂」を見ると、「中国の伝説で、月の中にあるという想像上の木」となっている。

中国で「桂」といえば「モクセイ」のことで、地中海産の「月桂樹」を指すことはない。 つまり 日本に入ってきた時に、中国の別の植物名を付けてしまった事になる。
 
種小名 nobilis : 高貴な の意味 
古代ギリシア・ローマの 勝利・栄誉の象徴だけでなく、エリザベス朝(1558-1603)時代以来、王室詩人を「桂冠詩人」として認定していたのだから、リンネが命名した18世紀には「高貴な」域にまで達していてもおかしくない。
 
Laurus 属 : 緑 に由来する
由来はケルト語の laur または blaur 緑色 で「常緑」というごくありふれた内容である。

英語名はこの属名から。 ローレル または ベイ・リーフと呼ばれるのは、葉を陰干ししたものである。 生の葉も使われるそうだ。
bay leaf ベイ リーフ の由来がわからない。
 
クスノキ科 Lauraceae
クスノキ科の基準になる属は「ゲッケイジュ属 Laurus」である。

クスノキ属の 50種に対して、ゲッケイジュ属は世界に2種しかないが、地中海に自生するゲッケイジュは、ギリシア・ローマの時代から尊重されていたのだから、代表となるのも当然であろう。

詳しくは 別項 クスノキ を参照していただきたい。




Wikipedia より
月桂樹といえば必ず取り上げられる、アポロンとダフネのギリシア神話。
ローマのボルゲーゼ美術館にあるベルニーニ(1598-1680)の傑作。 
とても石像とは思えない。 自分で撮った写真を載せたいものだ。



植物の分類 APG分類による ゲッケイジュ の位置
原始的な植物
緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
シダ植物 : 維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など          
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
種子植物 : 維管束があり 種子で増える植物
裸子植物 種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
被子植物 種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
クスノキ目 ロウバイ科、モミニア科、クスノキ科、ハスノハギリ科 など
クスノキ科 ニッケイ属、ゲッケイジュ属、ハマビワ属、タブノキ属 など
単子葉 類 : サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
進化した植物 (後から分化した植物)
ゲッケイジュ属は 単子葉植物以前、早くに分化した植物のひとつである。

花弁や雄しべなどは 葉が変化したものと考えられている。 雄しべが中心軸の回りに3重に付く様子は原始的な構造を示しているが、モクレンのように「無数に付く状態」からは、一段進化(変化)している。

小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ