メグスリノキ 目薬の木
Acer nikoense Maxim. (1868)
APG分類: ムクロジ科 Sapindaseae
旧科名:  カエデ科 Aceraceae
属 名 : カエデ属 Acer Linn. (1735)
別 名 : チョウジャノキ 長者の木
英 名 : Nikko maple
原産地 : 宮城県以南の 本州、四国、九州
用 途 : カエデ類の中では材が硬く、建築材や器具材として使われる。

東京の紅葉は遅く、11月末か12月初めである。 メグスリノキはピンクがかった赤と緑が混じる紅葉で、真っ赤な紅葉とは違った美しさがある。

雌雄異株だが背の高い木であるために花は見えず、雌雄の別はわからないが、実が落ちてこないので 雄株のようだ。
園外でも まだ花を見たことがないので、カエデ属の実感がない。

           樹 形    2011.5.15
40番通り、「中島池」のほとりの 標識45番手前の右側。 45番から 44番に登る坂道の途中に2本がある。 写真では右側の2本。 高さをうまく測れないが、15m ぐらいはありそうだ。
左側が「中島池」。

    @      斜面に生える二本の木        A
上の木 @は根元付近で二股に分かれている。 直径 約60cm。

       @       幹 の 様子      A
細かな皮目があるが、遠目にはなめらか。
Aは目通りで60〜50cm。

芽だし         2013.4.5.
文京区の住宅で。芽鱗がずれて縞模様となり、毛だらけの新葉が顔を出す。

 2009.6.12              三出複葉             2011.5.17
葉は対生で 3枚の小葉を持つ。葉の裏や枝にも毛が生えている。
若い葉を裏から見ると中央脈がピンク色で、ここに紅葉の時の色が現れている!

             枝や葉柄の毛      2009.6.12
小平薬草園

               日を透かすと いっそう美しい        2010.12.4
2012.12.9.

落葉を並べて       2012.12.9.
裏と表を交互に。中央は イロハモミジ。

萎れた落葉       2010.12.7.
光を透かした方がきれいなのは、葉裏が最後まで白いため。薄手で柔らかい葉である。
表と裏         2012.12.9.
南風に煽られて 葉裏が見えた。日が当たって いっそう白く見える。

 
メグスリノキ の 位 置
@ A: E8 b 標識45番から44番への坂道右側。 2本

名前の由来 メグスリノキ Acer nikoense

和名 メグスリノキ : 目薬の木
樹皮や葉を煎じた液を 洗眼に使ったため。
観光地や道の駅などで「目薬の木」を売っている。写真左の商品には樹皮が入っている袋もあるが、材を細かく刻んだものも多い。一部に樹皮は付いているが、効き目やいかに?

別名 チョウジャノキ : 長者の木
若い枝や葉だけではなく 果実にも粗い毛があるそうで、「オキナグサ」 のように 長者のヒゲ・白髪を連想しての名である。
種小名 nikoense : 日光産の の意味 
命名者 マキシモヴィッチは1860年頃 日本に2年間ほど滞在し、日本の植物学に重要な役割を果たした人物である。

本人が日光を訪れたかどうかは不明だが、帰国後も助手の 須川長之助が採取活動を行ったので、その標本を元にした可能性がある。

 メグスリノキの学名について
国内の植物事典・図鑑のほとんどは メグスリノキの学名として
   Acer nikoense Maxim.
を採用しているが、米国農務省のデータベース GRIN、
Germsplasm Resourdes Information Network は、まったく違う見解を取っている。
 
 メグスリノキ:
   Acer maximowiczianum Miq. (1867 Dec.)
   Acer nikoense hort. は メグスリノキの異名
その根拠は、
   Acer nikoense (Miq.) Maxim. (1867)
     ←  Negundo nikoense Miq. (1867)
 は ブドウ科ツタ属の一種なので 無効。
   解説:
初めにミクエルが命名し マキシモヴィッチがカエデ属に命名し直した Negund nikoense の標本は、カエデ科ではなく ブドウ科ツタ属の一種であった。

このため Acer nikoense Maxim. (1867)は無効であり、メグスリノキの正名はミクエルが命名した別の標本による
   Acer maximowiczianum Miq. (1867)
が正しい、とする考えである。


 旧分類 Acer カエデ属、カエデ科 : 
和名は「かえるで 蛙手」 が短くなって → かえで。 

属名の由来は、ラテン語 Acer には「鋭い、激しい」などの意味があり、やはり葉の形から。 事典には「Acer campestre コブカエデ」のラテン名から、とあるのだが、コブカエデの葉の先端は鋭角ではない。
コブカエデの葉
Wikipedia より
ムクロジ科( APG分類)
これまでの分類は「カエデ科」だったが、APG分類体系での大きな変更点のひとつ。 カエデ科とトチノキ科が「ムクロジ科」に編入された。

花の形態などは頼りにならず、結果を受け入れて頭を切り替えるしかない。
ムクロジの花

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ