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APG分類: | バラ目 アサ科 Cannabaceae | |||
旧科名: | イラクサ目 ニレ科 Ulmaceae | |||
属 名 : | ムクノキ属 Aphananthe Planch.(1848)nom. cons. |
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英 名 : | Muku tree | |||
中国名: | 糙葉樹 ( cao ye shu ) | |||
原産地 : | 関東以西の本州、四国、九州。 朝鮮半島、台湾、中国大陸の暖帯・亜熱帯 | |||
用 途 : | 寺社に植えられた。熟した果実は甘く、昔は子供のおやつだった。 鳥が好んで食べる。 材は強靱で建築材・船舶材・器具に用いられる。 粗い毛のある葉は 骨や角細工の研磨に用いた。 |
植物園には崖地を中心に何本ものムクの大木があるが、それが植えられたものなのか、樹齢がどのくらいなのかはわからない。 まずは 比較的わかりやすい場所にあり、目通り(地面からの高さ 約 1.5 m) が 60cm以上の大木の 写真を。 言葉だけでは 場所の実感がわかないので、やはり地図が必要となる。 |
①:奥の大木 2011.2.3 |
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奥から温室方向を見ている。カリン林は右側。高さ20.5m。 以前の分類では ニレ科だったムクノキは、仲間の ケヤキ や エノキと樹形・枝の様子が似ている。 |
ムクノキ の位置、 ① ② ③ |
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②:冬の姿 2012.2.21 |
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上の段の崖地に近い場所。すぐ近くの坂道を少し下りたところから見上げて、なんとか全体を。 径 65cm。 |
③ : 瘤付き |
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標識43 から左側に下りたところ。 傾斜地で 露出した根の一部が幹化しているようだ。辞典に「ときに木 疣(いぼ)ができる」とあるのがこれだろうか? 径75cm。 |
2011.4.5 ④:ヤナギ池のムクノキ 2012.6.26 | |
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池のほとりに生えている木で、唯一、手に取れる枝がある貴重なもの。 高さ 約 15.5 m。 目通り 約 60cm。 |
ムクノキ の位置、④ ⑤ ⑥ |
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⑤:70番通りの大木 2012.6.7 | |
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ヤナギ池の先 ラクウショウのところから見上げた写真。 根本は写っていないが 径 120cm。 右の写真はそこをずっ~と通り過ぎて、正門方向を振り返ったもの。(▲) ところでその左側がポッカリと空いている。(地図では⑤の隣の●) |
ギャップ |
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2011年の春に ムクノキの大木が撤去された場所だ。 根本が腐って危険になったためである。 次の写真が地面すれすれの切断面。 腐っている部分が多くて「幹」の形をなしていない。 |
2011.5.13 |
崖線や台地の降雨がしみ出してくるおかげで、下の段の池は「給水無し」で済んでいる。 育成部の人の話では 1mも掘ると水が湧くほど地下水位が高く、どうしても根が腐りやすいそうだ。 確かに、付近のムクノキも幹が腐ってきているものが多い。 |
⑥:3本のうちのひとつ |
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⑥:まるで 森林地帯 |
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中島池の手前、カツラがあるあたりで、ムクノキはラベルが付いている両側の2本。 |
⑦:西側塀沿いの3本 |
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中央奥に3本が重なっている。中央の一番高いものが 約 20.6 m。 支柱があるのは ウンナンエノキ。 |
ムクノキ の位置、⑦ ⑧ |
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⑧:全体像がよくわかる木 |
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70番通り ハナズオウの位置の左側。 自然樹形に近そうだ。 高さ 約 17 m。 |
⑦のうちの一本 | 傾斜地の木の根元 |
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左の木の青いテープは、道路拡張工事に伴って「剪定する木」のしるしである。径 約90cm。 地面付近が細長く伸びている。日本で育つ木としては珍しく、幹の最下部が「板根状」になる。 |
巨大板根の例 Koompassia excelsa |
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板根とは 横に張り出した根の上部が板状になったもの。呼吸根の一種といわれ、根の下部は地中深くには入っていない。樹種によっては 背の高い木を支えているようにも見える。 その様子は トピックスの「板根の実態」をご覧下さい。 |
立派な板根 高さ cm |
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若い木の幹 径 21cm | ②:太くなると 径50cm |
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初めのうちは伸びた部分の色が変わるだけだが、太くなると樹皮が剥がれてくる。何年目頃からなのかは わからない。 |
葉の様子 2011.7.8 |
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きれいに互生する。両面に短く粗い毛が生えていて、さわるとザラザラする。まるでサンドペーパーのようで、昔は 研磨用に使われた。(今でもか?) 次の写真は 葉の裏側、表よりも色がうすい。 |
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いちめんに生えているわけではない。 |
托 葉 2014.5.19. |
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二枚の托葉が付くが やがて落下する。 |
ジグザグの枝 2012.5.18 |
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緑が今年出た枝、二年目の枝は 樹皮がうっすらと剥げている。 |
雄花のつぼみ 2011.4.26 |
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花は 雌雄別。雄花はたくさん付いて分かり易いが 極めて小さく、黄緑色で目立たない。 |
開花中の雄花 2011.4.29 |
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花被片(萼)と雄しべは5個。恐らく雌花はまだ咲いていない。 来年の宿題である。 |
できたての青い実 2012.5.18 |
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二つに裂けた雌しべの柱頭が まだ残っている。たくさん付く雄しべ花序の元の方に咲くのだろう。 |
大きくなってきた実 2012.5.29 |
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偶然だが 11日後に同じ実を撮ったもの。サイズが倍増している。 |
黄葉の開始 2012.10.31. |
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熟れた実 2012.10.31. |
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もっと前から順次熟れていた。葉が黄色くなってくると一気に秋の気配へ。 |
干からびてきた実 2008.11.2. |
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フラッシュ使用 |
実の直径は1cm強。柱頭や花被片が最後まで残るものもある。干からびてもなかなか落ちない。 おいしい!とは言えないが、甘くて食べられる。果肉を食べ終わると、硬い核が シャリシャリと歯にあたる。 なお ムクドリ 椋鳥 は、ムクの実を好んで食べる事から名付けられたようだ。 |
梅林にいた つがいのムクドリ 2012.7.22 |
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核 |
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名前の由来 ムクノキ Aphananthe aspera |
和名 ムクノキ 椋の木 : | |
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エノキ | ムクノキの樹皮 |
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和名 椋 |
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種小名 aspera : ざらざらした という意味 |
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中国名 糙葉樹 cao ye shu |
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ムクノキ属 Aphananthe 属 : |
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アサ科 Cannabaceae : |
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旧科名 ニレ科 Ulmaceae : | |||||||
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エノキ属 エノキ と、 ムクノキ属 ムクノキ の違い | |
辞典の説明文に ほかの属との違いが説明されていることはめったにないが、『園芸植物大事典/小学館』に エノキとの違いが載っていた。 | |
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ムクノキの葉 | |
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エノキの葉 | |
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子葉の比較は 種子を撒いて発芽を待ってから・・・。 |
2012年の秋から冬にかけて 両方の種子をプランターに撒いた。思いも掛けず、冬のさなかに ひとつずつが芽を出した。 ムクノキの子葉は そのイメージを裏切る細さだった。ともに子葉には毛がないが、エノキの本葉には毛が認められる。 |
ムクノキ | エノキ 共に 2013.1.15. |
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最初の本葉は 両方ともに「対生」で、葉脈はすでにその特徴を示していた。 2013.2.5 | |
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二番目からは「互生」となった。 2013.3.7 | |
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ムクノキ | エノキ |
原始的な植物であるイチョウの葉は 長枝では互生するので、植物の起源が対生だったとは言い切れない。 子葉や最初の本葉が なぜ 対生なのか? とりあえずの説として、初めはなるべく多くの葉を出して光合成をするため、を挙げておく。 参考までに、イチョウと同じ裸子植物であるヒノキ科 (旧スギ科)では、輪生状に複数の子葉が出る。 |
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ムクノキの実生 その後 | |
樹木形態・分類学が専門の 八田洋章先生から、「高木は実生苗もどんどんと上に延び、低木は早いうちから枝分かれする」というお話を聞いていた。ところが! 育てているムクノキの実生は、早くも、しかも双葉の腋からも 枝が出だした。 |
2013.4.1. |
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双葉の腋から | ①:最初の本葉の腋から |
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独特な双葉の形から ムクノキであることは 間違いない。観察を続けることにしよう。 実生苗は 一年間で1m88センチ伸び、頂部を枯らして越冬した。翌年には茎頂の直下、あるいは二番目の腋芽が主軸として伸び出したが、伸びはわずか10センチ程度だった。 |
茎頂脱落 | 二年目の春の状態 |
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▼が 昨年の茎頂。腋芽が主軸として成長していく。(仮軸分枝) 写真右:中間部の6本の枝は昨年出たもので、二列互生そのままの枝振り。観察は 一年少々で終了することにした。 |
下部の側枝 2014.5.19. |
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双葉の位置や 第一葉の対生の腋芽から伸びた枝も健在で、2年目の新葉が出ている。 |
植物の分類: | APG II 分類による ムクノキ の位置. |
クロンキストの分類でのムクノキは、マンサク亜綱・イラクサ目・ニレ科 に位置していたが、APG分類では全く違う位置、「マメ群・バラ目」の中に移っている。 属する科もニレ科から「アサ科」となった。 |
原始的な植物 |
↑ | 緑藻 : | アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など | |||||
シダ植物 : | 維管束があり 胞子で増える植物 | ||||||
小葉植物 : | ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など | ||||||
大葉植物(シダ類): | マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど | ||||||
種子植物 : | 維管束があり 種子で増える植物 | ||||||
裸子植物 : | 種子が露出している | ||||||
ソテツ 類 : | ソテツ、ザミア、など | ||||||
イチョウ類 : | イチョウ | ||||||
マツ 類 : | マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など | ||||||
被子植物 : | 種子が真皮に蔽われている | ||||||
被子植物基底群 : | アンボレラ、スイレン、など | ||||||
モクレン亜綱 : | コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など | ||||||
単子葉 類 : | ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など | ||||||
真生双子葉類 : | キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など | ||||||
以前の分類場所 | イラクサ目 | イラクサ科、アサ科、クワ科、ニレ科、など (イラクサ目はなくなる) |
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ニレ科 | ケヤキ属、ニレ属、エノキ属、ムクノキ属 (バラ目に移動↓) | ||||||
中核真生双子葉類: | ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など | ||||||
バラ目 群 : | |||||||
バラ亜綱 : | ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など | ||||||
マメ 群 : | ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など | ||||||
バラ目 | バラ科、クロウメモドキ科、ニレ科、アサ科、クワ科、など | ||||||
アサ科 | ムクノキ属、アサ属、エノキ属、など | ||||||
アオイ群 : | アブラナ、アオイ、ムクロジ、など | ||||||
キク目 群 : | |||||||
キク亜綱 : | ミズキ、ツツジ、など | ||||||
シソ 群 : | ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など | ||||||
↓ | キキョウ群: | モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など | |||||
後から分化した植物 (進化した植物 ) |
小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ |