ネジキ 捩木 Lyonia ovalifolia
var. elliptica Hand.-Mazz. (1936)
← Andromeda elliptica
    Siebold & Zucc. (1846)
科 名 : ツツジ科 Ericaceae
属 名 : ネジキ属 Lyonia Nutt. (1818)
異 名 : Lyonia ovalifolia ssp. neziki Hara
原産地 : 東北地方南部から九州まで。乾いた尾根筋や斜面。
用 途 : 庭に植えられることがある。硬い材が櫛や細工物に使われる。

ツツジ科と聞くと低木と思ってしまうが、ネジキは7mにもなるそうだ。小石川には弱った木が一本と 分類標本園に小さな木があるだけで、良い写真がない。筑波植物園の写真も交えて掲載する。

①:樹 形      2012.5.19.
高さだけは4m以上ありそうだが、日陰がちなために 枝がまばらだ。左の太い木はクロマツ。

①:幹    2007.3.18.
幹自体だけでなく 伸び方も捩れている。

比較的細い幹
筑波植物園。太さ 7センチ。この木は捻れがあまり目立たない。

②:新 緑        2012.4.24.
葉の出たては赤かったものが きれいな黄緑色になってきたところ。新芽の先の方には つぼみらしきものが付いている。

分類標本園のネジキ       2000.6.17.
今年伸びた枝は きれいな赤。葉にもまだ赤味が残っている。

①:葉の様子       2001.5.29.
長さ 6~10センチもあって、一般的なツツジの葉とは大違い。

花の様子        2012.6.2.
筑波植物園で撮影。東京はもう少し早くに咲くのだろう。この写真では、枝が赤くなっていない。
花は、前の年に出た枝(前年枝)から出る。花序の初めの方には葉が付き、先の方には髭のような苞が付いている。

果 実          2013.1.5.
下向きに咲いていたのに 反転して上向きの果実となる。

一年目の枝は赤で冬を越す     2013.1.5.
筑波植物園。
 
ネジキ の 位 置
写真①: D6 c 標識35番の先 左側
写真②: 分類標本園 井戸側4列目 右側


名前の由来 ネジキ Lyonia ovalifolia var. elliptica

ネジキ 捩木 : 捩れる木 の意味
幹の状態そのままの名前である。
カーソルを乗せると、捩れ具合を表示する。

変種名 elliptica : 楕円形の という意味
種小名 ovalifolia : 広楕円形の の意味
先は尖っているものの、楕円形の葉の形を表している。

シーボルトとツッカリーニが付けたネジキの元の学名は、
   Andromeda elliptica
だったが、後に Lyonia ovalifolia の変種とされたため、結果的に同じ意味の形容詞が重なってしまった。
 
Lyonia 属 : 人名による
『園芸植物大事典/小学館』での読みが「ライアニア」となっているのは、アメリカの植物学者 ジョン・ライアン John Lyon ( ? -1818頃)を顕彰したため。しかし ライアンについての詳細は わからない。

属の命名者は イギリス人の トーマス・ナットール (1786- 1859)で、1808年から 41年まで アメリカに渡って研究を行った時に、ライアンと親交があったものと思われる。
トーマス・ナットール
Wikipedia より
 
元の学名 Andromeda elliptica Siebold & Zucc.
アンドロメダはギリシア神話に登場する美しい女性 エチオピアの王女で、最後には星座となった。

Andromeda属(ヒメシャクナゲ属) を記載したのはリンネで、それまで色々な人がたてていた、Ledum , Chamaedaphne , Poliifolia の各属と Ericae属の一部をまとめた上で、『植物の種』に12種を記載した。

釣鐘型の花が咲くツツジ類の中で、雄しべが8本のものを 「エリカ属」、10本のものを 「アンドロメダ属」としたものと思われる。
これに倣った人たちが 多くの植物をアンドロメダ属として記載した。例えば 日本にやってきたチュンベリーは、アセビを Andromeda japonica (1784) とし、シーボルトも 本種ネジキをアンドロメダ属とした。

しかし、現在残っているのは A. polifolia Linn. (1753) ヒメシャクナゲ のほかに1種だけで、その他は別の属に分類し直されてしまっている。
ヒメシャクナゲ
写真は「日本の植物たち」の春日健二さんにお借りした。
               春日さんへのメール:kasuga☆mue.biglobe.ne.jp(☆を@にして下さい)

ツツジ属・科 躑躅 :
詳しくは ドウダンツツジの項に記載した ツツジ科へ。



植物の分類 : APG II 分類による ネジキ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
以前の分類場所  ツツジ目  キリラ科、ツツジ科、リョウブ科、イチヤクソウ科、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
 ツツジ目  サガリバナ科、ツバキ科、カキノキ科、ツツジ科、エゴノキ科、など
ツツジ科  ホツツジ属、エリカ属、ネジキ属、アセビ属、ツツジ属、など多数
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

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