ドウダンツツジ 燈台?躑躅
Enkianthus perulatus
    C. K. Schneid. (1911)
← Andromeda perulata Miq. (1863)
科 名 : ツツジ科 Ericaceae
属 名 : ドウダンツツジ属
Enkianthus Lour.(1753)
中国名 : 台湾吊鐘花 tai wan diao zhong hua
原産地 : 本州、四国、九州。  台湾
用 途 : 庭園樹。近年になって、葉が赤茶色・紫褐色などの染料として使われるようになった。

2012年の紅葉は一段と美しかった。ドウダンツツジは日本庭園を中心に植えられているが、そのほとんどが丸く刈り込まれており、自然樹形の大きな株はない。

日本庭園の紅葉         2011.12.10.
梅園のドウダンツツジ      2012.12.5.

自然に近い? 樹形       2011.5.6.
筑波植物園。花が咲いている。
枝は水平から 40ないし50度ぐらいの角度で斜め上に伸びる。
真っ直ぐの幹では 車輪状に枝が出るが、斜めの枝では偏りが出る。
新しい枝は赤い。葉の形は 細長い菱形だが、植物用語では「広倒披針形」となる。倒 は付け根の方が狭いため。
落葉した状態        2013.1.5.

①: 刈り込まれていないドウダン  2012.12.5.

②:チュンベリーの黒松近くのドウダンツツジ 2000.4.15.
この株が 自然樹形なのかどうかは不明。高さ3mぐらいだった。
冬の様子         2015.1.4.
15年経って大きくなったが、雪の被害で手前が倒れてしまっている。中を見ると、とてもひと株とは言えない状態だ。

葉の形 と 花の様子
若葉と赤い枝、真っ白の花のコントラストが美しい。

花は枝の付け根から 長い花柄でぶら下がる。サイズは長さ 7~8ミリ。スズランに似てはいるが、口が窄まっているところが違う。
スズランの花
Wikipedia より

葉 と 花        2001.4.15.
斜めに出た枝の上に葉 下側に花が下がるので、花がよく見える。
 
ドウダンツツジ の 位 置
写真① : D5 a 標識36番から下りる階段の左側
写真② : D4 d 日本庭園から階段をのぼった所
その他 日本庭園とその上部斜面


名前の由来 ドウダンツツジ Enkianthus perulatus

ドウダンツツジ 燈台躑躅 :
牧野富太郎が『植物一家言』の「ドウダンツツジとは、どういう意味なのか」で述べている説を要約すると、
元来は燈台ツツジの意で、燈明台の一種に 三本の棒を上の方で結ぶ「結び燈台」というのがある。ドウダンツツジの枝は、痩せ長くて叉をを成して分岐する その様が、あたかも結び燈台の叉分せる脚棒のようだから。
実際に トウダイツツジ と言っている地方があり、その類似品 Azalea 並びに Enkianthus 両属の諸種を、ドウダンツツジと呼んでおり、ミツバツツジやオンツツジなども含まれている。
自作の結び灯台
三つ叉
探せばそうなっている枝もあるが、あくまで三叉の部分 あるいは 結び目から上の部分だけであり、全体の姿が「燈台」に見えることはない。 トウダイグサとは違って、どうもこじつけのような気がする。

一方で、ドウダンツツジ属の中国名は 吊鐘花 diao zhong hua 属、ツツジは 杜鵑花 du juan hua である。これらの音をもじって ドウダンツツジに当てたことも考えられる。

perulatus : 芽層ある の意味
ドウダンツツジで 芽層 といえば、冬芽が 赤橙色の芽鱗に包まれている様であろう。

Enkianthus 属 : 膨らんでいる花 の意味
ギリシア語の enkyos 孕んだ + anthos 花 から。
 
ツツジ属・科 躑躅 : 
まず 漢字の「躑躅」は ツツジに漢名のひとつを当てただけで、ツツジの直接の由来ではない。平安前期から使われ始めたそうだ。
「躑躅 てきちょく」の意味は 「躊躇する、足踏みする」であり、本来 中国に自生して猛毒のある「シナレンゲツツジ 羊躑躅」のことを指す。羊がこの葉を食べてもがいて死んだという話、あるいは 食べるのに躊躇するため、とされる。
ツツジの由来には様々な説がある。
『語源辞典』の吉田金彦氏は それを一つに絞らず、①ツヅキサキキ(続き咲き木)、②ツヅリシゲル(綴り茂る)、に加えて、中国の「躑躅 teki-tchok」が伝わってさらに変化した朝鮮語の ③ tchyok-tchyok あるいは tchol-tchuk という言葉も伝来していただろう事を重ね合わせて以下のように推定している。
「ツツジが次々と咲いて 群がっている」様を、” ツドウ 集う ” の語根 ” ツ 処 ” を重複させた「ツツ」に、似たようなものを表す接辞語 ” ジ ” を付けた語となった。

Ericaceae :
ツツジ科の基準となる属が Erica属で、科名は Ericaceae である。
erica の由来は、ギリシア語の ereiko 破る ということだが、
ツツジ類で「破る、破れる」といえば、果実だろ。
なお、中国のツツジ科は 杜鵑花科である。「杜鵑 du juan」 はホトトギスで、5月頃「ホトトギスが鳴くころに咲く花」の意味。

現在の学名になる前の属名 Andromeda属 については、ネジキの項を参照していただきたい。



植物の分類 : APG II 分類による ドウダンツツジ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
以前の分類場所  ツツジ目  キリラ科、ツツジ科、リョウブ科、イチヤクソウ科、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
 ツツジ目  サガリバナ科、ツバキ科、カキノキ科、ツツジ科、エゴノキ科、など
ツツジ科  ホツツジ属、エリカ属、ネジキ属、アセビ属、ツツジ属、など多数
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

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