ソシンロウバイ 素芯蝋梅
Chimonanthus praecox Link (1822)
cv. Concolor
園の名札: C. praecox var. grandiflorus
   (Lindl.) Makino cv. Concolor
科 名 : ロウバイ科 Calycanthaceae
属 名 : ロウバイ属 Chimonanthus Lindl.
(1819) nom.cons
英 名 : wintersweet , Japanese allspice
中国名 : 素芯蝋梅
原産地 : 中国各地
用 途 : 庭園樹として植えられる。
備 考 : cv. は cultivar(cultivated variety) の略
栽培品種 あるいは 園芸品種のこと

「ロウバイ」の栽培品種であるため、名前の由来部分では ロウバイと記述が重複する。
正門をはいり、正面の坂を上り始めるとすぐにクランクになっているが、その右手に ロウバイの仲間が何本も植えられている。

 2011.6.21                ロウバイ ↓


早い開花   2014.12.21.
マンサクよりも早く咲き出す。2014年は一段と落葉が遅いような気がする。近づかないとわからないが、花が咲き出している。

開花期の様子   2012.2.5.

中央の花弁はわずかに赤紫   2011.1.23.
ウメのような香り。

色が濃いめのものも     2012.2.5.
花粉は出つつあるが、雄しべは閉じている。

花の比較        2012.2.5.
落ちていた花を並べてみれば 違いは歴然。 右↑がロウバイ。

開いた雄しべ       2012.2.5.
ロウバイは 雌しべが先に熟す(雌性先熟)タイプ。写真は雌花期から 雄花期への移行時期で、これから雄しべが中心に集まる。すでに花粉が出始めている。

中心が雌しべだが、不完全な雄しべ (仮雄蘂) もあるので、雌しべは見えていないかもしれない。詳細を見るために、福岡教育大学の福原先生の写真をお借りする。
先生は 驚異的な接写技術で撮影した鮮明な写真を公開しており、教材テキストページの写真および文章は、「リンクおよび適正な引用には 制限がない」となっている。
               雌花期の状態(©福岡教育大学/福原教授)

開花初期の雌花期では、雄しべが外側に大きく開く。

右の写真にカーソルを乗せると、筆者が書き加えた各部の名称を表示する →

受精後に大きく成長するのは、花床部分である。
雄花期の状態(©福岡教育大学/福原教授)

雄花期には 雄しべが中心に集まり 花粉を出す。この状態で昆虫類に花粉が付くように、葯が外側を向いている。

まるで洋服ブラシのようだ。

中央には、仮雄しべ(仮雄蘂)が 一段とはっきり写っている。

受精したものは、幼果が大きくなりつつある。


株立ちの様子  2012.2.5.

二株あるソシンロウバイ

道路から見て 右の写真のすぐ後ろに
二株目がある。
2012.11.21


葉の様子 ソシンロウバイ ロウバイ
撮影は ともに 2012.10.3
葉の形 ・ それにともなう葉脈の形 ・ 反り などに多少の違いがある。

2007.5.13 京都植物園      芋虫のような 実の様子         2008.7.5
先端に付いている突起は 雄しべ あるいは 仮雄しべが残ったもの。
果実のように見えるが、膨らんだ部分は 「花床」が発達したもので、子房ではないので「偽果」と呼ぶ。 その発達の様子と「突起物」の観察は、ロウバイ の項に掲載した。


 
ソシンロウバイ の 位 置
E15 bd

坂の右手 2株

名前の由来 ソシンロウバイ
 Chimonanthus praecox の栽培品種

ソシンロウバイ 素芯蝋梅 : 花の色の様子を表す
「素」は白い意味を表すので「ソシンカ 素芯花」は芯まで白い花である。ロウバイ の中心部が暗い赤紫なのに対して、ソシンロウバイは ほとんど赤みがないか、わずかであるため。

 ← ロウバイ 蝋梅
以下の要素が重なって ロウバイになったと思われる。
 蝋: ・花が蝋細工のような半透明
    ・花の色が蜜蝋のような淡い黄色
    ・12月(臘月)に咲く 
          ←こちらは偏が「にくづき」
 梅: ・香りが梅に そっくり!
    ・丸いつぼみが 梅に似ている
    ・開花が梅と同じく早春である

臘月のいわれ :
「臘」とは 冬至の後、三回目の戌の日に行う祭りのことで、先祖百神を合わせて祀り、猟の獲物を供える。
          『広辞苑』および『漢和中辞典』
ここから、陰暦十二月を 「臘月」と呼ぶようになった。

栽培品種名 Concolor : 同色の の意味
中心が赤くなっていない という事で、ソシン と同じ意味で使われている。

植物園の名札は APG以前の考え方で、Chimonanthus praecox var. grandiflorus (Lindl.) Makino cv. Concolor であり、cv. が 栽培品種(園芸品種)であることを示している。

以前は、ソシンロウバイはロウバイの「変種」あるいは「品種」とされていたためだが、APG分類の考えでは すべてロウバイの栽培品種となったようだ。

concolor の名は 牧野富太郎が、ロウバイの変種
  Chimonanthus praeccox var. concolor (1909)
として記載したもの。

種小名 praecox : 早期の という意味
花が、冬の終わり 春の初めに早く咲くことから。

Chimonanthus ロウバイ属 :
ギリシア語の cheimon 冬 + anthos 花 で、冬咲きの花

ロウバイ科 Calycanthaceae
ギリシア語の kalyx 萼 + anthos 花 で、萼にも同じ色が付き花弁のように見えるところから。実際、どこからが花弁か わからない。
クロバナロウバイ Calycanthus属は ロウバイ属よりも早くから知られていて、基準属となっている。
クロバナロウバイ
別名
アメリカロウバイ
小石川植物園
分類標本園
 
ソシンロウバイの萼は?
一部 あるいは 全部が 黄土色をしている花被片は、明らかに萼 と言えよう。
萼としての分化(進化)が進んでいない、ひとつの花に複数の子房があるなどが、原始的な植物の特徴を示している。



植物の分類 APG II 分類による ロウバイ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
クスノキ目  ロウバイ科、モミニア科、クスノキ科、ハスノハギリ科、など
ロウバイ科  ロウバイ属、クロバナロウバイ属
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

小石川植物園の樹木 -植物名の由来- 高橋俊一 五十音順索引へ