アメリカサイカチ アメリカ皂莢
Gleditsia triacanthos L. ( 1753 )
科 名: マメ科 Fabaceae
属 名: サイカチ属 Gleditsia
  J. Clayton ex. Linn. ( 1754 )
英語名: honey locust
原産地: アメリカ東部、中央部
用 途: (サヤ)の繊維が甘いために、昔から食用にされていた。
優良な材は家具や杭などに用いられたが、成長が遅いために市場に大量に出回ることはない。

薬草園の手前のロープで囲われた区画の中央にあった大木が、2021年8月の大風で、完全に倒壊してしまった。
特記以外の写真は 小石川植物園で撮影。

かつての 姿

2013.1.8

2010.10.7
左写真は 40番通り(アジサイ通り)から サクラ林方向を見ている。右はサクラ林から西方向を見ている。手前の道は30番通り。
かなりの高さがあったが、測定していなかった。国内では植栽例が少なく、最大のアメリカサイカチだったと思われるだけに、非常に残念。
大木だった

2017.4.19

2010.10.17
「黒い幹」という印象が深く、園内でも大きな木のひとつだった。


切断処理された倒木      2022.4.7.
2020年春から夏にかけてはコロナによる長期間の閉園があり、その後長らく訪れなかったので、いつ被害にあったのかを正確には把握していない。
幹が折れずに根こそぎ「倒壊」したので、上部ではなく根が弱ったものか、それともこれまでにない異常な風が吹いたのか。


以下の特記無き写真は、すべて小石川植物園の倒壊前に撮影したもの。
A: 刺

2010.9.29

2017.4.13
幹が太くなっていたためか、典型的な鋭いトゲはほとんど見られず、長いトゲを伴う徒長枝が目立っていた。右写真のトゲもすでに完全に枯れていたもの。
花、雄株だったか ?
2012.5.30
次の2枚も
ロープ内にはいれないため、また下枝がなく、下部に咲いている花は少なかった。遠くからの撮影でピントが合っていない。
樹冠上部では無数に咲いていて、落ちた小花を見ると雄花のようだった。雄株だったために実が生らなかったものと思われる。
芽吹き 束生する葉

2017.4.13

2017.4.19
サイカチと同様に、2年目以降は葉を束生する。


 
アメリカサイカチの 位 置
B3 d 30番通り右側、ロープの中


名前の由来 アメリカサイカチ Gleditsia triacanthos
 和名 アメリカサイカチ:
日本や中国産の「サイカチ」に対して、アメリカ産のサイカチ。分布は北アメリカ大陸で、カナダ、アメリカ東北部・中北部・東南部・中南部。世界中で野生化している。
 種小名 triacanthos: 3本の刺がある の意味
命名はリンネの『植物の種』(1753) によるが、それ以前に Melilobus 甘味莢果の、 Acacia americana アメリカアカシア などと呼ばれていて、triacanthos の形容詞も使われていた。
写真Aで示した、幹につく強烈なトゲは3本では済まないことは明らかなのに、なぜなのか?
B:3本のトゲ

flickr, Creative Commons / by Jesus Cabrera

太い幹ではなく、長枝から伸びたトゲに由来すると思われる。
C:1年生枝のトゲ

flickr, Creative Commons / by Melissa McMasters
伸び出した長枝の右側が枝先方向。赤いトゲは葉腋から少し「離れた位置」についている。ジャケツイバラ亜科では「縦列複芽」が顕著で、トゲは主芽から伸びたものである。
次年度には葉とトゲの間に成長する複芽に葉を束生する。
ジャケツイバラの複芽
写真B、C のサイカチのトゲは枝が変化したものであり、ジャケツイバラの同時枝に相当する。
 Gleditsia (Gleditschia) サイカチ属:人名にちなむ
リンネと同世代、ドイツの植物学者 グレディチ (1714- 1786) を顕彰して名付けられた。
クレイトンが命名していたものを、代わりにリンネが『植物の属 第2版』に記載したもの。
現在は Gleditsiaの属名が使われていが、古い図鑑 例えば『牧野 新日本植物圖鑑』(北隆館 1961)では、属名の綴りが Gleditschia となっている。
詳しくは、サイカチの項の 「命名物語」  で。
 英語名:honey locust
ハチミツのように甘い locust。 では、locust とは?
 locust、locust tree:イナゴ、イナゴマメ
locust はイナゴあるいはバッタ類の総称で、イナゴマメの幼果がバッタに似ているために名付けられたとされる?
Wikipediaによるとイナゴマメの果肉は糖分を含んで甘く、そのまま、または乾燥して食用あるいは食品原料にする。古代から甘味料の材料として使われていたそうだ。
Ceratonia siliqua
Flickr より、カリフォルニア州 The Ruth Bancroft Garden 提供
アメリカサイカチはそれに honey が付けられているので、イナゴマメよりもさらに甘いことになるが、本当なのだろうか?
なお honey がついているが、蜜源植物ではない。



植物の分類 : APG II 分類による アメリカサイカチ の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
マメ目  キリァイア科、マメ科、スリアナ科、ヒメハギ科
マメ科  アカシア属、ネムノキ属、サイカチ属、 など多数
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

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