オオヤマザクラ 大山桜
Prunus sargentii Rehder (1908)
科 名 : バラ科 Rosaceae
属 名 : サクラ属 Prunus
別 名 : エゾヤマザクラ、ベニヤマザクラ
英語名 : noryh Japanese hill cherry , Sargent cherry
原産地 : サハリン、千島、北海道、本州北部、中部では亜高山地帯。 朝鮮半島
用 途 : 公園木
備 考 : 本州中部では、ヤマザクラよりもずっと高い地帯に自生する。北海道での花見は、おもに本種となる。

サクラの学名は 各所、各人でまったく違うため、サクラ属に関しては、米国農務省のデータベース
GRIN Germplasm Resources Infor. Network』
の学名で統一する。

小石川植物園には2本のオオヤマザクラがある。 日光分園のものはもう少しピンクが濃いが、本園の花は真っ白である。

@:樹 形         2012.4.9.
上の段のメイン通路である20番通り。サクラ林を通り過ぎて 水飲みがある標識23番のさらに先、Y字路の部分に植えられている。
手前に木があるために 上部は写っていない。花が咲いているのだが目立たない。 高さ 13.5m。
次の写真はY字路を通り過ぎて、左の道で振り返ったもの。
 2012.4.9 2013.8.7.

A:下の段のオオヤマザクラ    2013.8.7.
高さ 10m。 @の木よりも古いようで、主幹の一本は 折れている。
2013.3.22

日光分園のオオヤマザクラ 2013.8.10.

@:幹の様子 @:若い枝
右の枝はひこ生えで、直径3センチ。左の写真 太い幹にも 少しだけ銀色 (灰白色) の皮が残っている。

春の若葉         2012.4.9.

@:小石川植物園の花      2012.4.9.
手に取れる場所には 花は少ない。
花の様子         2000.5.2.
日光分園のもの。本園よりも少し赤みがかっている。すでに葉が開きかけているが、開花時は葉の展開は少ない。

葉の様子        2013.8.7.
事典に「葉の裏が白い」とあるが、ほかのサクラ類と較べて 特に白いわけではない。蜜腺は葉柄の中間より少し上部にある。
今年の新枝に すでに皮目が現れている。       2013.8.7

 
オオヤマザクラ の 位置
写真@: C8 d 20番通り、標識23番先のY字路
写真A: F14 a 60番通り左側、クルミ科林 付近

名前の由来 オオヤマザクラ Prunus sargentii

オオヤマザクラ : 大きなヤマザクラ
サクラ属 サクラ亜属の中をさらに分類した時に、「ヤマザクラ群」に含まれる。 ヤマザクラ群の特徴は
高木、葉の縁は単鋸歯、萼筒は基部が次第に細くなる、蜜腺は葉柄の上部につく、果実は苦くて食べられない
などである。

オオヤマザクラはヤマザクラよりも葉のサイズが大きく、鋸歯も粗い。花も大きめで通常は色が濃い。

鋸歯の比較
緑色の葉オオヤマザクラ。黄色のヤマザクラよりも、鋸歯が尖って切れ込みが深い。
ヤマザクラについては、後日 掲載する予定。

種小名 sargentii : 人名による
アメリカの植物学者 サージェント C. S. Sargent (1841- 1927) を顕彰したもの。1872年に開設された、ボストンのアーノルド樹木園の初代所長となり、45年間奉職した。
Sargent
命名者は ドイツ出身の 園芸家・植物分類学者の レーダー Alfred Rehder (1863-1949) である。元は新聞記者だったがアーノルド樹木園に雇われて、初めは図書館の本を購入するためにヨーロッパに出かけるなどしていたが、すぐに植物に関する才能の頭角を現し、1919年からは、所長のサージェントと共に 園の機関誌の編集を行った。 (Wikipedia より)

本種の命名は 1908年、サージェントは存命中の時期で、ドイツ樹木学協会の機関誌に発表したもの。

極東に自生するオオヤマザクラの標本が、ボストン アーノルドに至った経緯は 不明。 誰が採取したのだろうか?

 レーダーによる サクラ属の命名
ウワミズザクラのマキシモヴィッチの時と同様に、レーダーによる サクラ属の命名を調べてみた。
Index Kewensis Ver. 2.0 (1977) によると、レーダーが学術誌などに記載を始めたのは 1905年で、生涯に 850 種以上を発表しているが、1919年以降は、おもにアーノルド樹木園の機関誌に記載している。

発表年 学 名 和名・その他の名 分布・備考(= は正名)
1908  Prunus sergentii★  オオヤマザクラ  本種
1917  P. hypotricha  毛背桂桜  中国四川省 原産
1919   Journal of the Arnold Arboretumの刊行が開始される
1920  P. x arnoldiana    ?  栽培品種
 P. x meyeri    ?  栽培品種
1921  P. x Amygdalo-Persica    ?  (異名) = P. x persicoides
1922  P. argentea ★  (銀白色の)  イラン、イラク、シリア、トルコなど
 Amygdalus argentea を訂正
 P. x dunbarii    ?  栽培品種
 P. kansuensis ★  甘粛桃  中国甘粛省 原産
1926  P. petunnikowi    ?  カザフスタン 原産
 Amygdalus petunnikowi を訂正
1939  P. x schimitii    ?  栽培品種
 P. x skinneri    ?  栽培品種
1946  P. x gondouinii ★  duke cherry  栽培品種、
 Cerasus gondouiniiを栽培品種に訂正
学名の後に★を付けたものは、GRIN に載っている種。

サクラ属に注目すると 12種 または 13種で、園芸家であるだけに 栽培(園芸)品種への命名や 属の訂正が多い。語尾に ” i ” や ” ii ” が付くものは人名と考えられ、園長であったサージェント以外への献名も多い。


Prunus サクラ属 : スモモ から
ラテン語のスモモ prunum (『植物学名辞典/牧野』によると proumne)に由来する。
リンネ以前に、トゥルヌフォール(1656-1708)が命名していた。

「サクラ」の由来は、別項 サクラ・コレクション を参照の事。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ