セコイアメスギ セコイア雌杉
Sequoia sempervirens Endl. (1847)
← Taxodium sempervirens D.Don (1824)
科 名 : ヒノキ科 Cupressaceae
旧科名 :  スギ科 Taxodiaceae
属 名 : セコイア属 Sequoia Endl. (1847)
          nom. cons.
和 名 : セコイア、 イチイモドキ 一位擬
英語名 : redwood, coast redwood
原産地 : 米国西海岸、オレゴン・カリフォルニア
用 途 : セコイア属には本種 1種のみ。赤褐色の材は比較的強く、化粧板やテーブルにも使われる。
日本ではメタセコイアとは違って、あまり植えられることはない

樹高では 世界で 一・二を争う高木として有名。高さは100m以上、直径が8m、樹齢では2,200年程度が推定されているそうで、年輪には キリスト生誕以降のすべての気候が刻まれている事になる。
アメリカのセコイア
Wikipedia より

小石川で植えられている場所は 上の段奥の針葉樹林で、2011年の秋までは9本だったのだが、台風で倒れたために 現在は8本。周りに木が多いために、高さは測定できない。

また 間隔が狭すぎて、枝が周囲に均等には出ていない。筑波植物園のものはもう少しマシなので、並べて掲載する。

@ : 樹 形  メタセコイア と セコイア
主幹だけが上に伸び、水平に出る枝は全く太くならない。一般的な広葉樹との大きな違い。 筑波植物園、葉の色が濃いのがセコイア
梢を見上げる
日が当たらない枝は 次々と枯れ、やがて落下する。自生地の高木も枝葉が付いているのは上の方だけなので、そういう性質なのだろう。

神戸森林植物園   2007.5.12.
多少日当たりの良いこの木は、地面すれすれまで枝が残っていた。

細い枝

幹の穴     2012.1.25.
枝が落ちた後に 丸い穴が空いている。これは セコイアの樹皮が厚く残るためである。その厚みは30センチにもなるそうで、落雷による山火事にも耐えるという。
2011年秋の台風で倒れた木が伐採された時に、その厚みを見る事ができた。

地面近くの切り株      2011.10.6.
長径 80センチ。中心部まで腐っていたところに、弱い方向から風を受けて倒壊した。ここでは樹齢がわからない。
搬出のために玉切りされた幹
地面からの高さはわからないが、材の長径 約35センチの所で、年輪の数は「36」。別のもう少し太いもので、「42」だった。
根元ではもっと多いはずだが、伐採時点で戦後 66年なので、「終戦後」に植えられたということになろう。

長く残る樹皮
幹が太るために全周囲には残らないが、この部分には 22年分の樹皮が残っていた。樹齢の 半分以上の期間が残っている。またその一年分の厚みは年輪と同じか ずっと厚い。ただし密度は低い。

筑波植物園でも 剥がれた樹皮の断面を見ることができた。小石川のものよりもさらに密度が粗く、ハニカムコア状になっていた。
筑波植物園の樹皮            2013.12.7.
小石川の断面は チェーンソウで切られたもの、筑波のは 乾燥した状態で折れたもの という違いがあるが、筑波の方が ひとつの層の厚みが約7ミリと厚く、夏冬の差がはっきりしていた。

今年出た新しい枝・葉の様子      2012.12.1.
すべての小さな一枚一枚が葉で、生え方には二つの型がある。一つは羽状複葉のように見える部分で、本来螺旋状に生えているものが、二次的に 表を同じ向きにして、互生で二列に並んでいるように見える。
もう一つの型は 枝先のの部分で、羽状ではなく鱗片状になっている。
葉の表 と 裏側             2013.12.7.

 
セコイア の 位 置
写真@ : C 3a 20番通り奥 右側、針葉樹林

名前の由来 セコイア Sequoia sempervirens

セコイアメスギ セコイア雌杉
園の名札は「セコイアメスギ」となっているが、事典には「イチイモドキ」が正式和名となっている事が多い。また単に「セコイア」と呼ぶ場合もある。
セコイアメスギ の名は、同様に巨大となる「セコイアオスギ」Sequoiadendron giganteum と対をなすものである。

種小名 sempervirens : 枯れる事のない の意味
ラテン語 semper は「常に」、virens は「緑の、若々しい」で、常緑に由来する。

最初の命名時には セコイア属がまだ定義されておらず、ヌマスギ属 Taxodium として記載された。ヌマスギは落葉樹なので、これと対比して「常緑の」と名付けたのだろう。

また、2,000年以上といわれるセコイアの寿命も関係しているかもしれない。現在では伐採されることはないが、昔は巨大なノコギリで切り倒していたので、樹齢も判っていただろう。

セコイア、Sequoia 属 : 人名による
アメリカインディアンを母とする混血の Sequoyah セクォイア (1770 - 1840) を顕彰したものとされる。セクォイアは チェロキー属のためのアルファベットを考案した。
セクォイア
Wikipedia より

当然のことながら Metasequoia属よりも 先に命名された。
メタセコイア と セコイア
筑波植物園、葉の色が濃いのがセコイア
「保留名」 になっている理由は未確認だが、恐らく、エンドリヒャーが Sequoia 属を定義した時の「科」が、現在は使われていない Coniferae (仮称 針葉樹科) だったため。


メタセコイア と セコイア  
別の属に分けられている両者の違いはどこなのか? ポイントは メタセコイアの「対生」。(記述は メタセコイアの項と重複)
和名
属名
   メタセコイア(別項参照)
メタセコイア属
セコイア (セコイアメスギ)
セコイア属


筑波植物園
2012.2.4
落 葉 常 緑

落葉の
メタセコイア
常緑の
セコイア
葉の付き方 対生(十字対生だが2列生となる) 互生・螺旋状 (ただし2列生となる)
雄花 穂状または円錐状の花序 単 生
雄しべ 対 生 螺旋状
球果の鱗片 十字対生 螺旋状
左側が上から見た状態 この写真は ハワイ大学カー教授 撮影
染色体の数 2n = 66 2n = 22
メタセコイア セコイア

英語名 : redwood
redwood は 材が赤褐色のため。
 
ヒノキ科 Cupressaceae : 
ヒノキは昔からスギ科に近縁とされていたが、葉の形や並び方が違い、また スギの雄花は枝に群がり付くが、ヒノキの雄花は枝の先端にひとつずつ付くところも違う、などの理由で 別の科と見なされていた。

しかし、APG分類では スギ科のほとんどの属は ヒノキ科に含まれることになり、スギ科は消滅した。
スギの雄花
ヒノキの葉と球果 ヒノキの雄花
ヒノキ科の基準属となっているのは イトスギ属 Cupressus属で、由来はいくつかあるようだが、「イトスギ C. sempervirens 」の原産地のひとつである キプロス島 Cyprus にちなむ、というのが分かり易い。

なお、ヒノキ属の学名 Chamaecyparis は、chamai (小さい) + kyparissos (イトスギ)で、ヒノキの果実がイトスギに比べて小さいことに拠る。

旧科名 スギ科 Taxodiaceae :
分類学での旧スギ科の基準属は ヌマスギ属 Taxodium属 であった。日本では ヌマスギ (ラクウショウ) は自生していないため、スギ科 という名称で呼ばれていたが、ヒノキ科に統合された。以前は 10属 15種 と種類が少なかったが、ヒノキ科と一緒になって倍増した。

学名 Taxodium の由来は、Taxus イチイ属に edios 似る ということだが、ヌマスギの葉は柔らかく イチイの葉とは異質である。セコイア (セコイアメスギ)に「イチイモドキ」という和名があるが、学名からすると、本来 ヌマスギ属に付けるべき名称である。これらの近縁種に混乱があった事を示している。

本種 セコイアも はじめはヌマスギ属に分類されて、Taxodium sempervirens と命名された。

新宿御苑のヌマスギ


植物の分類 : APG II 分類による セコイア の位置
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
ヒノキ科 ヒノキ属、スギ属、コウヨウザン属、セコイア属、ラクウショウ属、他
セコイア属  セコイア(セコイアメスギ)一種のみ
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

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