シラキ 白木
Neoshirakia japonica Esser (1998)
← Shirakia japonica Hurusawa (1954)
← Sapium japonicum Pax et K.Hoffm. (1912) 名札
← Stillingia japanica Sieb. et Zucc. (1846)
科 名 : トウダイグサ科 Euphorbiaceae
属 名 : シラキ属 Neoshirakia Esser (1998)
旧属名 :  シラキ属 Sapium Jacq. (1763)
中国名 : 白木烏桕 bai mu wu jiu
原産地 : 山形・岩手県以南の山地
朝鮮半島、中国
用 途 : 白い材を細工物に、また薪炭材に使われる。以前は 種子から採れる油(シラキ油)を、灯油・塗料・頭髪油として利用した。

小石川植物園の名札は Sapium 属であるが、『植物分類表/大場秀章』、 「GRIN」ともに、Neoshirakia属という 15年ほど前に立てられた新しい属に分類している。 

紅葉するシラキ        2011.11.15.
斜面に生えているため、夏の写真だと周囲の緑に重なってわからないため、まず紅葉の写真を掲げた。トウダイグサ科のシラキは、以前はナンキンハゼと共に Sapium属に分類されていた。花や実の形が似ており きれいに紅葉するなど、ナンキンハゼと共通点が多い。

シラキ の位置
60番通り

 
仮称 シラキ坂。直接上の段にはつながっていない。


こんな場所に植えるわけはないので、実生だろう。人通りがほとんどない道なので、踏みつけられずに生き残ったものだ。

シラキの幹
日が当たると銀白色に見えるが、実際は灰色。近くにあるクロキよりは明るい色である。胸高の直径は 約11センチ。

クロキの幹

展開した新葉       2011.4.29. ナンキンハゼ
柔らかい葉で 形はナンキンハゼとは違う。

花 序          2012.5.5.
新しく出た枝の先に付く。

成 葉         2012.5.23.
葉の色が濃くなっている。

雌雄同株        2011.5.24. ナンキンハゼ

ナンキンハゼも 同じ
花序の基部に 数個の雌花が付き、雌花が先に熟す。

雌性先熟        2012.5.18. ナンキンハゼ

共に花弁は無く柱頭は3裂

雄花は全く開いていない

カミキリムシの一種?     2012.5.23.
雄花はまだ花粉を出していないようだが・・・・。

雄花の開花       2013.5.28. ナンキンハゼ

ナンキンハゼには
たくさんのハチが来る
雄花が咲く頃には雌しべの柱頭は枯れていて、すでに子房が膨らんでいる。雌雄の花に時間差があるのは、自家受粉を避けるため と言われている。しかし両者とも、植物園には1本しかないし、近所に植わっている樹種ではない。

薄手の葉         2002.6.1.
幼果がたくさん生っている。

            シラキの若い果実             2013.6.18.
果実には3裂した柱頭が残っている。子房は3室で 各室に1つの種子。雄花の枯れた花序も まだ付いている。
しかし この後の観察を忘れ、熟した状態は見逃してしまった。

まずは黄葉       2010.11.13.

美しい紅葉   2011.11.16.

 
シラキの 位 置
F13 a 60番通り メタセコイア林の横から右に登る坂の途中
この坂を「シラキ坂」とする
 

名前の由来 シラキ Neoshirakia japonica

シラキ 白木 :材が白いため
初めは幹が白っぽいからだと思っていたが、事典には「材が白いため」とある。幹の内部は切ってみないと判らない。

種小名 japonica : 日本原産の
原産地の一つを示している。

シラキ属ほど 何度も属名が変更された例は 珍しい
西暦 属名・学名 命名者 備考・命名の由来
1756  Sapium  パトリック・ブラウン  粘る の意味から。属名だけで 種は記載していない
1759  Excoecaria  ジーン・ミューラー  めくらにする、枝を燃やした時の煙で目を痛めるため
1767  Stillingia  リンネ  英国の植物学者 B.Stillingfleet氏(1702-1771)を顕彰
1790  Triadica  ローレイロ  三数性の構造による
1846  Stillingia japonica
 シーボルト
 シラキに対する 最初の命名
1858  Triadica japonica  バイロン
1863  Excoecaria japonica  ミューラー
1912  Sapium japonicum  パックス、ホフマン  近年は この学名が使われていた
1954
 
 Shirakia
 Shirakia japonica
 古沢潔夫  シラキ に由来
 それまでの Sapium 属との相違点などは不明
1998
 
 Neoshirakia
 Neoshirakia japonica
 Bingtao Li &
 Hans-Joachim Esser
 新しい シラキ属 の意
 中国の研究者による命名

Neoshirakia シラキ属 : 新しいシラキ属
古沢潔夫(1916-2001)が 1954年に起こした Shirakia属が、すでにシダ類の属名として使われている事がわかったために、新しい属を立てたそうだ。
カナダ ブリティシュ・コロンビア大学のホームページより
 
 Sapium サピウム属 : 粘る の意味から
旧シラキ属。サピウム属のある種から鳥黐(とりもち)を採ったので、「粘る」の意味のラテン語古名にちなむ といわれている。
どんな理由で シラキ属が サピウム属から分けられたのか、その相違点は不明。

 Triadica ナンキンハゼ属 :
tri は3つの、adica が不明だが、三数性の構造によるものだ。 双子葉植物で 三数性は珍しい。
もと シラキとともに サピウム属に分類されていたナンキンハゼも、独立した属とされている。

トウダイグサ科 灯台草科 Euphorbiaceae :
20~40cmの雑草で、本州から沖縄までどこでも見ることができる。
名前は 草の形を中世の照明器具のひとつ「灯台」に例えたものといわれている。 詳しくは 別項 トウダイグサ を参照
トウダイグサ



植物の分類 : APG II 分類による シラキ の位置

以前、植物の外観や構造などの形態学的な解析で分類していた時には、よくわからない植物が トウダイグサ科に入れられていたという。葉緑素の核酸の塩基配列などを分析する手法の研究が進み、APG II 分類では、トウダイグサ目は キントラノオ目にまとめられた。

APG分類では、科 や 属 もまとめられることが多いが、トウダイグサ科の中から新たにコミカンソウ科が分けられたり、トウダイグサ科の中で新たな属が作られるなど、研究が進んだ。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物 (シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
以前の分類場所 トウダイグサ目  ←消滅。ツゲ科、シムモンドシア科、トウダイグサ科
トウダイグサ科  コミカンソウ属、トウダイグサ属、アブラギリ属、など
マメ 群 : ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
キントラノオ目  ヤナギ科、スミレ科、トケイソウ科、トウダイグサ科など
トウダイグサ科  トウダイグサ属、トウゴマ属、シラキ属、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

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