ヒメタイサンボク 姫泰山木
Magnolia virginiana Linn. (1753)
科 名 : モクレン科 Magnoliaceae
属 名 : モクレン属 Magnolia Linn. (1735)
英語名: laurel magnolia, swamp bay,
swamp-laurel, sweet magnolia
原産地 : 北アメリカ東部。アメリカ合衆国のマサチューセッツ州からフロリダ州にかけて。
テネシー、ルイジアナ、ミシシッピー、テキサス各州
用 途 : 庭木、ただし 花が小さく数が少ない事と、樹形が良くないために 使われることは少ない。

正門守衛所のすぐ脇と、上の段 30番通りの標識36番を過ぎてすぐ右側。

タイサンボクと原産地がほぼ同じで、タイサンボクの名も冠しているが、「姫」の名の通り 葉が小さく薄手で、やさしい印象である。 トップの写真でも、日が差した葉が透けて黄緑になっている。 しかし香りはむしろ強いくらいだ。

なお、常緑樹林内の タイサンボク・ホソバタイサンボクの近くに、「ヒメタイサンボク」の名札が付いたものが3本あるが、葉が厚く、完全に常緑で 明らかに間違いである。

@ : 樹 形             2012.5.29
中央で 葉の色が明るい部分がホソバタイサンボクである。 半落葉性だが関東ではほとんど落ちてしまう。 もっと南だと冬でも残るそうだ。
                        ↑                2012.2.5


                 A : 新緑の美しい葉          2012.5.31
30番通り 標識36と37の中間右側。 のびのびと育っているので、あまり低い位置には花がない。

                     A : 幹の様子                2012.5.31

                   葉 と つぼみ            2012.5.31
花はタイサンボクより少し早いが、最盛期は重なる。 葉葉のサイズは大きくても20cm程度。 裏には白い毛が残る。 これも茶色の毛のタイサンボクとは違う点である。
日を斜めから当てると 毛の影ができる。

3種のタイサンボク 葉の比較 すべて枯葉       2011.6.16
ヒメタイサンボク 表・裏 / タイサンボク 表・茶色い毛の裏 / ホソバタイサンボク 表・裏

新葉が出そろった5月後半に古い葉が落ちる。 タイサンボクにも もっと小さい葉はあるが、ヒメタイサンボクがより小さい事がわかる。 葉の裏は枯葉でも白く、タイサンボクやホソバタイサンボクの茶色い毛とは対照的。

さらに手に取ってみると、厚さ ・柔らかさの違いがよくわかる。

               @ : 開きかけの花           2011.6.16

                 A : 甘い香り            2001.6.10
花の直径はタイサンボクよりも小さく、いずれも 15cmぐらい。

                     若 い 実              2000.7.27

裏が白い落ち葉            2013.1.8



 
ヒメタイサンボク の 位 置
写真@: F15 b 正門守衛所 横
写真A: C5 b 30番通り 標識36の先 右側
参考 B B6 c 名札が間違っていたホソバタイサンボク
  現在は 名札はすべて外された

 参考 : 常緑で葉の厚い、ヒメタイサンボクの名札が付いていた木 B

本当のヒメタイサンボクとの比較
     B の葉 表 ・裏      ヒメタイサンボク 4枚 裏 ・表 ・ 裏 ・表



名前の由来 ヒメタイサンボク Magnolia virginiana

ヒメタイサンボク 姫泰山木 : 
タイサンボクの仲間だが、全体に小型であるところから。

厳密には、モクレン属の中をさらに細かく分類した「節」では、タイサンボクとは違うグループになる。

「タイサンボク」の由来は、別項「タイサンボク」を参照の事。

種小名 virginiana : バージニア原産の の意味
スウェーデン人でリンネの使徒(弟子)のひとりであった、ペール・カルムなどによるアメリカ探検によってもたらされた情報であるが、原産地のひとつを示している。

モクレン科 Magnoliaceae : 人の名前に由来する
17世紀フランスの植物学者で、地中海に面するモンペリエの植物園園長であった、ピエール・マニョール(1638-1715) を顕彰したものである。

英語名 : laurel magnolia , swamp-laurel
ローレル・モクレン(月桂樹木蓮)、沼地の月桂樹、の名は、薄く細長い葉を月桂樹になぞらえたものである。 葉の裏が白っぽいところも似ているが、ゲッケイジュの方が皮質で硬い。

ゲッケイジュ の葉



植物の分類 APG II 分類による ヒメタイサンボク の位置

花の各器官は「葉」が変化したものと考えられている。 モクレン類は 1本の軸の周りに「花弁・雄しべ・雌しべ」が多数付く花の構造が原始的であり、被子植物の中では 早くに分化した植物とされている。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類) : マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、ヘゴ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
モクレン目   ニクズク科、モクレン科、バンレイシ科、など
モクレン科   モクレン属、ユリノキ属、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、イネ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱 : ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
マメ 群 : ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群 : アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱 : ミズキ、ツツジ、など
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群 : モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )           

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ