シナウリノキ 支那瓜の木
Alangium chinensis Harms. (1897)
← Stylidium chinense Lour. (1790)
科 名 : ミズキ科 Cornaceae
旧科名:   ウリノキ科
属 名 : ウリノキ属 Alangium Lam. (1737)
中国名: 八角楓
原産地 : 中国、台湾、東南アジア諸国、インド、ブータン、ネパール、パキスタン だけでなく、熱帯アフリカの 東部・西部・南部と分布域が広い
用 途 : ウリノキ同様 植物園に植えられるぐらいで、一般には流通していないようだ。

シナウリノキは園内の二箇所、正門を入ってすぐ右の自転車置き場と、20番通り中程、オオムラサキツツジの生け垣附近の左側に植えられている。

@:樹 形        2013.7.19.
高さ 約 7m。細いのに 上にも横にもよく枝を伸ばす。そのため樹形的には極めて散漫な形で整わない。
主幹が傾いているのは、恐らく 大昔の風のせい。


A: 20番通り 標識23番から見た景色
Y字路のコーナー、オオヤマザクラの黒い幹の後ろに たくさんのシナウリノキが生えている。

A:樹 形          2013.7.19.











標識23番
シナウリノキを通り過ぎて、正門の方向を振り返って見ている。ここには直径25センチほどの太い木があったが、2012年6月19日の台風4号の風で、根元から倒れてしまった。枝の伸びが早い上に 大きな葉を付けるので、根の張り具合とのバランスが取れないのだろう。現在 高さ 約6m。

根元で割れた Aのシナウリノキ       2012.6.26 撮影.
2013.7.19.
上に伸びている二本の幹が 少し太くなっている。周りには実生苗と思われる若木が無数に。

B 幹の様子    2001.3.4. A 幹の様子
Aの木のすぐ隣に生えていたもの。かなり前に完全に横倒しになってしまい、現在はひこばえが出ている状態である。

2007.5.2            枝振り           2001.3.4
勝手な方向に細長く伸びる。いうなれば 滅茶苦茶。

枝葉の出始め              2013.4.4.
葉の元に「托葉」はないので、最初に出る2枚の小さい葉は 恐らく「前出葉」 あるいは 「低出葉」だろう。葉柄が無く 2枚のうち片方は長く残る。
残った一枚      2013.7.19        落ち跡

展開したての若い葉 成熟した葉
初めは葉の表にも産毛が付いているが、すぐに落ちる。写真は葉の裏側で、特に葉脈の分岐点に少量の毛が残る。

枝は水平 ジグザグに伸びる

葉のサイズは様々        2013.7.19.
枝が伸び始める頃の葉は小さく、先では大きくなる。葉柄が赤くなることも。葉は浅く切れ込むが、一般に小さな葉では少なく 大きな葉では多い。切れ込みがないこともあるので、その数は0〜9。

切れ込みがない葉      2013.7.19.
左下の葉は 0.5 あり。白いジクザグは花が落ちた後の花柄。

左右 非対称
葉の一番の特徴は 左右が対称形ではなく、枝の先端側が広くなる事。この葉はシナウリノキの標準的なもので、右側の側脈(そくみゃく)が一本多く、主脈と合わせて 計4本。切れ込みの数は6〜7。

この葉は 葉脈 6本
この葉は 長さ 約27センチと大きくて、葉脈は6本、切れ込みは10もある。

花序    2011.6.16.
今年伸びた枝の葉腋から花序が 下向きに出る。

つぼみ         2007.6.3.
萼は極く小さく 分かりづらい。小さなおくらの実のようだ。長さは2センチ程度。

開 花         2011.6.16.
一度に咲くことはなく、枝に近い花から順次 咲いていく。大きくカールする花弁と 黄色い雄しべとの対比がおもしろい。雌しべは長く突き出る。

若い実         2013.7.19.
疎らにしか結実しない。

黒く 艶のある実             2013.7.19.
大きさは 長さ7ミリ程度。中には ラグビーボールの形の褐色の核が1つある。

始まった黄葉      2013.10.19.
一斉に色付くことはない。

2013.10.19 冬芽    2014.1.21.
「冬芽」は葉柄の中(枝の中)に隠れていて、葉が落ちるまで見えない。 両方の写真とも 上側が主幹。

  
シナウリノキ の 位 置
写真@ : F16 b 自転車置き場 道路寄り
写真A : C8 d 20番通り オオムラサキのY字路 左側

名前の由来 シナウリノキ Alangium chinensis

和名 シナウリノキ、種小名 chinensis
            中国原産のウリノキ の意味
原産地のひとつを示している。トップに書いたように、原産地はアフリカにまで広がる非常に広い範囲であるため、種小名には花や葉などの 形態的な特徴を使うべきだった。

ウリノキ は見たことがないので、事典や植物学の先生の画像、Wikipedia などを参照した。

 ← ウリノキ Alangium platanifolium var. trilobum
果実は似ていないので、葉が ウリに似ているので名付けられたのは間違いない。

ウリノキは モミジウリノキ A. platanifolium の変種である。APG分類を採用している アメリカ農務省のデータベース GRIN でも、変種として正名となっている。両者ともに日本に自生しており、モミジウリノキは国内では比較的西日本に多く、ウリノキは全国に分布しているようだ。

ウリノキの雄しべは シナウリノキよりも長い。
ウリノキ
福岡教育大学 福原教授のテキスト より Wikipedia より
和名の命名順は、まず「ウリノキ」、次に「モミジウリノキ」、最後に「シナウリノキ」だろう。

ウリノキの観察をしていないのでなんとも言えないが、事典の写真や記載内容、変種名 trilobum から、ウリノキの葉は「葉脈が3本、切れ込みが浅い」という特徴がある。しかし前掲の写真では、やはり葉によって違いがあるようで、必ず3本・3裂ではない。

次にその葉が どんな「ウリ」に似ているのか? ウリの葉の形は千差万別で、切れ込みが深く複雑なもの (ニガウリ、スイカ など)もある。参考にキュウリの葉を挙げておく。
キュウリの葉
これなら 三角といえるだろうが、ウリノキの葉とは似ていない・・・。 尚、モミジウリノキの学名は プラタナスの葉に似た の意味。
中国名も含めて、様々な植物の葉になぞらえているのが面白い。
 
中国名 八画楓 :フウの葉に似ているが 八つに裂けている
楓の字は 日本ではカエデだが、中国ではフウであり 葉は3裂する。シナウリノキの葉の切れ込みの数が多いために 「八画」としたもの。
フウ

Alangium 属 : および 旧 Alangiaceae ウリノキ科
インドのマラバル海岸地方の現地名 Alaigi から名付けられたとあるが、意味はわからない。
インド Kerala州
Wikipedia より
 

ミズキ科 Cornaseae
APG分類(葉緑体の遺伝子解析)で、独立していたウリノキ科は ミズキ科に含まれることになった。
ミズキ科については、別項 ミズキ を参照のこと。


植物の分類 : APG II 分類による シナウリノキ の位置
ミズキ目 ウリノキ科やミズキ科の位置は APG分類で大きく変わった。
原始的な植物
 緑藻 : アオサ、アオミドロ、ミカヅキモ、など
 シダ植物 :  維管束があり 胞子で増える植物
小葉植物 : ヒカゲノカズラ、イワヒバ、ミズニラ、など
大葉植物(シダ類): マツバラン、トクサ、リュウビンタイ、ゼンマイ、オシダなど
 種子植物 :  維管束があり 種子で増える植物
 裸子植物 :  種子が露出している
ソテツ 類 : ソテツ、ザミア、など
イチョウ類 : イチョウ
マツ 類 : マツ、ナンヨウスギ、マキ、コウヤマキ、イチイ、ヒノキ、など
 被子植物 :  種子が真皮に蔽われている
被子植物基底群 : アンボレラ、スイレン、など
モクレン亜綱 : コショウ、モクレン、クスノキ、センリョウ、マツモ、など
 単子葉 類 : ショウブ、サトイモ、ユリ、ヤシ、ツユクサ、ショウガ、など
真生双子葉類 : キンポウゲ、アワブキ、ヤマモガシ、ヤマグルマ、ツゲ、など
中核真生双子葉類: ビワモドキ、ナデシコ、ビャクダン、ユキノシタ、など
バラ目 群 :
バラ亜綱: ブドウ、フウロソウ、フトモモ、など
以前の分類場所 ミズキ目  ウリノキ科、ニッサ科、ミズキ科、ガリア科
マメ 群: ハマビシ、ニシキギ、カタバミ、マメ、バラ、ウリ、ブナ、など
アオイ群: アブラナ、アオイ、ムクロジ、など
キク目 群 :
キク亜綱: ミズキ、ツツジ、など
ミズキ目  ミズキ科、ヌマミズキ科、シレンゲ科、アジサイ科、など
ミズキ科  ウリノキ属(←ウリノキ科 より)、ミズキ属
シソ 群 : ガリア、リンドウ、ナス、シソ、など
キキョウ群: モチノキ、セリ、マツムシソウ、キク、など
後から分化した植物 (進化した植物 )
注) 以前の分類とは クロンキスト体系とするが、構成が違うので、APG分類表の中に表現するのは正確ではない事もある。 その場合はなるべく近い位置に当てはめた。

小石川植物園の樹木 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ