アルストニア スコラリス
Alstonia scholaris R. Br. (1810)
← Echites scholaris Linn. (1767)
科 名 : キョウチクトウ科 Apocynaceae
属 名 : アルストニア属 R. Br. (1809)
英 名 : blackboard tree, Indian devil tree, ditabark, milkwood pine, white cheesewood
原産地 : 中国南部、インド亜大陸、東南アジア、オーストラリア(クイーズランド)
用 途 : 公園などに植えられる。
樹皮にアルカロイド その他を含み、マラリアの治療薬であるキニーネの代用とされる。
ほかにも、下剤・強壮剤・解熱剤・コレラの予防薬・傷薬など。
材は軽く、漁網の浮き、家庭用品、瓶の栓などに使われ、日本にはハイヒールの踵用に輸入されているそうだ。
撮影地 パキスタン

高さ 約18m
ラホール市ジーナ植物園。正式にはローレンス・ガーデンと言うようだが、広い公園の中にはクリケット・グラウンドもある。
白い建物は、現在 図書館として使われている。

本種は日本の植物事典では取り上げられていないようで、『朝日百科/植物の世界』には属としての簡単な説明だけがあり、「高さ 40m、幹の直径2mにもなる」とあった。

この木はその大きさからすると まだ小さいが、これでもか という程、葉を繁らせていた。
 
幹の様子

 
葉 と 花 の様子


キョウチクトウの葉は3枚の輪生だが、こちらはもっと枚数が多い。
 
花は枝の尖端に付く。
満開の花
黄緑がかった色をしている。
 
キョウチクトウ科の特徴 ねじれた花弁
ねじれて咲く花を見て もしかしたら・・・ と思ったが、キョウチクトウ科の木がこんな大木になるとは夢にも思わなかった。
 
果実の様子
キョウチクトウ科の果実は、一般的に 二つの実がペアで生る。

Wikimedia にあった古い時代に描かれた図版によると、ササゲのように細長い果実となっている。
テイカカズラ
図版のオリジナルは 1880年頃の発行で著作権は失効しており、本図はパブリック・ドメインとなっているため、掲載に問題はない。
 
名前の由来  Alstonia scholaris
 
和名 : なし
下記の理由から、「黒板の木」 (仮名)
 
種小名 scholaris : 学校の という意味
初めに本種を命名したのはリンネだが、なぜ「学校」なのかは不明。

英語名 blackboard tree を頼りに こじつけてみると、「昔、大木となるこの木の材を"黒板"として使ったため」 となる。
軽いので「野外教室」での持ち運びに便利であろう。

もしそうだとすると、少々「とんち」の効いた命名である。

元の分類の Echites属についても、事典には記載がない。
 
Alstonia アルストニア属 : 人名による
18世紀前半に、エジンバラで植物学博士を務めた、チャールズ・アルストン (Charles Alston 1685-1760) を顕彰して名付けられたものである。
 
英語名 :
Indian devil tree : アルストニア属全般を devil tree と呼ぶようだが、根拠は不明。
もこもこと繁った、樹形によるものだろうか・・。

ditabark : 意味や由来は不明。

milkwood pine : 本種もキョウチクトウ科特有の白い樹液が出るのだが、松には見えません。

white cheesewood : cheesewood は「トベラ」の事であるが、トベラの花も黄色がかった白である。
それに さらに white が付くのはどういうことであろうか・・・
 
キョウチクトウ科 Apocynaceae :
サンユウカ の項で一度説明しているが、補足して再度掲載したい。
 

Apocynaceae は、キョウチクトウ科の基準属である アポキヌム属 Apocynum Linn. (1735) に基づいて名付けられている。

その意味は、牧野富太郎の『植物学名辞典』によると apo(離れて) + kyon(犬) となっているが、意味がはっきりしない。

同じキョウチクトウ科の「サンユウカ属 Ervatamia」の中国名は「狗牙花属」であるが、これは花弁の先端部分の小さな突起(副花冠)を「犬の牙」に例えて、名付けたものである。

アポキヌム属にも、そのような副花冠があるのであろう。
サンユウカ
アメリカ農務省GRINによるとサンユウカの学名は
Tabernaemontana divaricata である。

花弁の先端に突き出ているのが「副冠」。
 

アポキヌム属は基準属となっているにもかかわらず、日本ではキョウチクトウ科を代表する属ではない。

しかし、日本にも「バシクルモン」という、変な名前の多年草がある。 
バシクルモン
北海道から新潟県にかけての日本海側に分布。

外国語のような名前は、アイヌ語の「パスクル(カラス)」と「ムム(草)」に由来する 『植物の世界』 とあるが、ピンクのかわいらしい花なので、カラスには不似合いである。

別名 オショロソウ。
Apocynum venetum Linn.
var. basikurmum H.Hara
写真は春日健二氏 (kasuga@mue.biglobe.ne.jp)のホームページ「日本の植物たち」の中からお借りした。

キョウチクトウ (夾竹桃) : Nerium oleander var. indicum
竹よりもさらに狭いほどの葉を持ち、桃のようなピンクの花を咲かせるため。

和名 キョウチクトウは漢名の音読み。インド原産で、江戸時代に日本に渡来した。

以前は地中海原産のセイヨウキョウチクトウ(西洋夾竹桃 Nerium oleander )とは別種とされていたが、新しい分類では、セイヨウキョウチクトウの「変種」とされている。
花の色にはピンク、うすいピンク、白などがある。
シロバナキョウチクトウ

 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎、
        Wikipedia (英語版)、
        Google Earth、
        Wikimedia
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