ホウカンボク 宝冠木 の亜種
 Brownea coccinea Jacq. subsp. capitella D. Velazquez et Agostini (1992) 
← Brownea capitella Jacq. (1760)

 
和 名 : ショウホウカンボク 小宝冠木 (仮名)
科 名 : ジャケツイバラ科 Caesalpiniaceae
APG分類:  マメ科 Fabaceae
属 名 : ホウカンボク属 Brownea Jacq. (1760)
英語名 : lantern brownea
原産地 : ベネズエラ、トリニダード・トバゴ、ガイアナ、ブラジル
用 途 : 観賞木
撮影地 : インドネシア

ボゴール植物園の名札は標記の学名ではなく、Brownea capitella であった。

本種は2つの事典 『園芸植物大事典』と『朝日百科/植物の世界』には出ておらず、調べた結果、キュー植物園の『Index Kewensis』、アメリカ農務省の『GRIN』、ともに 「ホウカンボクの亜種」案を採用していたので、それに従うことにする。
 

亜種 とは :


動植物の分類カテゴリーは「科、属、種」の順であるが、ある二つの「種」が少しだけ違う時、別種とまでは言えない時 に使うのが、「種」の下位のランクである 「亜種」である。

条件としては、
基準となる種と形態的に違う部分(変異)があり、さらに独自の地理的分布を持つ
とすることが多いが、人によっては
基準となる種とは、重要ではない形態的な違いがある
  あるいは
主として地理的・生態的な違いがあり、「タネ」ができる。
というような場合にも、亜種と考えるケースがあるという。
この項の参考文献『植物の分類』

学名の表記方法は、基準となる種の後に subsp. または ssp. (subspecies の略) を付ける。
 
 
樹形 高さ 約7m
写真では花が目立たないが、下向きにぶら下がって咲くため、歩いているとよく見える。
 
地面近くの枝
黄緑色の葉は、どれも比較的新しく展開したものである。
 
葉の出方は「まとめて出る」タイプ。初めは細長い托葉に包まれているが、すぐに落ちてしまう。
出始めの色は、うす紫からサーモンピンク。
 
 
偶数の羽状複葉であるが、小葉にごく短い「柄」(小葉柄)がある。

同時枝
温帯の樹木のほとんどは、まず 主となる枝(先発枝)を伸ばした後、一定時間をおいて 脇芽(側芽)が伸びて枝となる。

これに対して、主軸と同時に複数の枝が伸びるケースを「同時枝」と呼ぶ。 亜熱帯・熱帯の樹木に多いが、日本で見られる種としては 「タブノキ および ホソバタブ」、「クロモジ」などがある。

 
つぼみ
左の状態で、直径5cm。
苞や萼の外側には、細かな毛がある。
 
花は 外側から咲き始める

 
満開の花
曇っている上に薄暗い木の下側なので、シャッタースピードが遅くなる。
 
散りかけの花
まさに散ろうとしている瞬間。
 
花弁の数は5枚であるが、分解してみないと形や数がわからない。
雄しべは基で合着しているのがわかる。
 
花軸
花がすべて散った後の様子で、密に咲く「総状花序」の中心部である。
 
名前の由来 Brownea coccinea subsp. capitella

和名 : なし
亜種名より、「ショウホウカンボク 小宝冠木」としたい。
 
命名年は異なるが、関係する3種のブロウネアを命名したのが、オランダの植物学者 ジャカン Nikolaus Joseph von Jacquin (1727-1817) である。
Wikipedia より
 
初めの命名では、本種を 亜種ではなく 「通常の種」と考えて、Brownea capitella とした。
 
学名 命名年 種小名の意味 和名
Brownea coccinea 1760  緋紅色の  宝冠木
B. grandiceps 1789  大頭の  大宝冠木
B. capitella 1809  小頭状の  小宝冠木(仮名)

亜種名 capitella : 小頭状の 
ジャカンの命名には大きな時間差があるが、以前の種小名 grandiceps (大頭の)を意識していると思われる。
 
種小名 coccinea : 緋紅色の 
コッキネア(ホウカンボク)の実物を見たことはないが、事典の花の色の記述も「緋紅色」となっている。

微妙な差はあるだろうが、似た色だと思われる。
 
属名 Brownea : 人名による
アイルランド生まれの医者で植物学者、ブラウン Patrick Browne (1720-1790) を顕彰したものである。
フランスやオランダで学び、26歳の時に医師としてジャマイカに移り住んだ。

属をおこしたジャカンとは 同世代である。

ラテン語の読み方では「ブロウネア」となるが、人名に由来する事から「ブラウネア属」とするのが正しい。
 
ホウカンボク属 宝冠木属 :
属名の和名はホウカンボク属で、「宝冠」とは 「宝石をちりばめた冠(カンムリ) 」の事である。

下向きに咲いていると「宝冠」のイメージが薄れてしまうが、ホウカンボク属の中には、横向きや上向きに咲く種類やケースもあり、時に 20 cmにもなるという豪華な花を表したものである。
ジャケツイバラ科 Caesalpiniaceae :
ジャケツイバラについては 別項を参照のこと。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press
        園芸植物大事典/小学館
        植物の世界/朝日新聞社
        植物學名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
        植物の分類/佐竹義輔
        植物用語事典/清水建美
        園芸・植物用語事典/土橋 豊
        GRIN/アメリカ合衆国農務省
        Wikipedia
        シンガポール植物園植物ガイド/
          シンガポール日本人会自然友の会
世界の植物 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ