オオベニゴウカン(白花)
Calliandra haematocephala Hassk. (1844)
科 名 : ネムノキ科 Mimosaceae
APG分類:   マメ科 Leguminosae
属 名 : ベニゴウカン属 Calliandra
Benth. (1840)
英語名 : pompon, powder-puff-tree
原産地 : ボリビア、インドネシア・ジャワ島、
パプア・ニュー・ギニア
用 途 : 庭木、観賞木
撮影地 : タイ
日本 温室、沖縄では戸外栽培

シリキット植物園の上部にある温室の、さらに少し上の段に研究室棟があり、斜面に植えられていたもの。

オオベニゴウカンの花は通常赤であるが、その白花種である。
国内の温室で撮った写真も加えてアップする。
 
樹形
奥の木と重なってわかりにくいが、根本から枝分かれして扇形に広がっている。

高さは 3m以上あり、それぞれの幹が思ったよりも太い。
事典によると「1〜3mになる低木」とあるので、これは大木だ。
 
横から 傾斜30度

 
葉の様子 (ここには3枚の葉)
カリアンドラ属 (ベニゴウカン属)の葉も「2回羽状複葉」である。

しかし、通常の羽状複葉と違う特徴がある。ネムノキ属のように何対もの「羽片」があるのではなく、通常はただの「1対」しかない事だ。
 
Calliandra surinamensis ネムノキ
ペアで一枚の葉
 
葉の詳細 と つぼみ
「小葉」の形は左右対称ではなく、葉の付け根側の幅が広い。
葉柄や枝には 柔らかい毛が付いている。

花は葉の付け根に付く。
樹勢が強いと、一カ所から複数の花序が出る。
 
つぼみ
左下の緑の濃い小さな方が、萼に包まれたつぼみである。

黄緑色の大きい方は、花弁が伸びてきた状態である。

中には長い雄しべがたたまれている。
伸びる前の 雄しべ

 
萼 と 花弁
長い雄しべが展開すると、周りからは花弁さえ見えなくなってしまう。

裏側から覗くと、ちゃんと黄緑の萼・白い花弁があることがわかる。
 
紅白の競演
草津市立水生植物園
 
名前の由来
オオベニゴウカン Calliandra haematocephara

和名 オオベニゴウカン : 大型のベニゴウカン
同じ属の「ベニゴウカン Calliandra eriophylla」と較べると、葉も花も大きいところから名付けられた。

このページで取り上げたのは白花であるが、比較のために通常の 赤い「オオベニゴウカン」と「ベニゴウカン」を並べる。
オオベニゴウカン ベニゴウカン
ベニゴウカンの花は下向きに咲くことが多く、雄しべが開いている角度は90度程度である。
これに対してオオベニゴウカンは上向きに咲くことが多く、開く角度も180度を超え、見る方向によっては球形に見える。

種小名 haematocephala : 血紅色の頭ある
ラテン語の haem, haemo が血であり、haemat は「血の色の」である。
また cephalatus は「頭がある、頭状の部分がある」という意味。

「頭」というからには、ベニゴウカンのような房状ではなく、丸い形が必要となろう。

滋賀県草津市立水生植物園の温室では、鉢植えで樹高 1.5m程度にもかかわらず、直径12cmもの まさに「白髪の頭」が咲いていた。

英語名 pompon
「ポンポン」は、
  ・洋服や帽子に付ける丸い飾り
  ・チアリーディングや遊技に使う丸い房
である。
オオベニゴウカンの花は、正に「ぽんぽん」!
 
英語名 powder-puff-tree
powderpuff は化粧刷毛である。
「ベニゴウカン」の方がその形に近い。

Calliandra
ベニゴウカン属 : 紅合歓 属
学名は、ギリシア語の kallos (美しい) + andros (雄しべ)に由来し、長く目立つ雄蕊にちなんでいる。

和名のベニゴウカン属 は、この属を代表する「ベニゴウカン」の花が、ネムノキ(中国名 合歓)に似ており、雄しべの色がネムノキよりも濃い紅色であるところから名付けられた。

世界の熱帯・亜熱帯に 約200種。
 

ベニゴウカン Calliandra eriophylla Benth. (1844)
テキサス、カリフォルニア、メキシコ原産。
別名 ヒネム 緋合歓。
ベニゴウカン
ベニゴウカンの雄しべは太くて針のようだ。重たいためか、下向きに咲く。 複葉の数は6〜8。

種小名のeriophyllaは、軟毛葉の意味。
葉軸および葉の裏に細くて白い毛が生えているところから。
 
ネムノキ科 : Mimosaceae
エングラーの分類では「マメ科」に含まれ、ネムノキ亜科となる。
ネムノキに代表される長い雄しべが特徴の花を咲かせ、主に熱帯・亜熱帯地方に分布する。
花びらに相当する「花冠」もあるらしいが、まるで目立たず、確かめたことがない。今年の花どきには拡大写真を撮ってみよう。

主な「属」としては、アカシア属、ネムノキ属、ベニゴウカン属、ギンゴウカン属、オジギソウ属がある。 66属 約 3,000種。
 
 トピックス

単葉、複葉

植物の「一枚の葉」の形態分類について、おさらいをしよう。
単葉 複葉 (三出複葉)
カエデ科 チドリノキ カエデ科 ミツデカエデ
 
複葉 (掌状複葉) 羽状複葉
トチノキ科 アカバナトチノキ メギ科 ヒイラギナンテン
 
2回羽状複葉 3回羽状複葉
ネムノキ科 ネムノキ メギ科 ナンテン
これで一枚の葉
鳥足状複葉 単身複葉
サトイモ科 マムシグサ ミカン科 ユズ
  
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press
        園芸植物大事典/小学館
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
        植物用語事典/清水建美
        園芸・植物用語事典/土橋 豊
世界の植物 −植物名の由来− 高橋俊一 五十音順索引へ