イランイランノキ
Cananga odorata Hook. f. & Thoms. ( 1855 )
← Uvaria odorata Lam. (1783)
シンガポール 、ドミニカ共和国
日本 温室
科 名 : バンレイシ科 Annonaceae
属 名 : イランイランノキ属 
Cananga Rumph. ex Hook. f. & Thoms. (1855 )
英語名 : ilang-ilang
現地名 : Kenanga
原産地 : 不明
用 途 : 香水の原料。
鑑賞樹、公園樹、街路樹
 
シンガポール植物園で見かけたものは、高さ1.5m程度の小さな木で、事典で調べるまでは、15mにもなる木であるとは思ってもみなかった。
 
シンガポールの木


根本の方には地衣類などが付いており、若木とは言えない。
 
もしかすると「変種」の チャボイランイランノキ (矮性種) かも知れない。
 
ドミニカ共和国では ところどころに街路樹としても植えられており、国立植物園のものは高さが10m近くあった。
シンガポールにも街路樹で有名なところがあるらしい。
 
ドミニカ共和国の木  ( 左右は別の木 )

 
右の木はまだ木肌が若々しく、一気に伸びていった感じが受け取れる。

枝が落ちた跡が まるで「一つ目小僧」のようになっていた。

 
黄色く色づいたイランイランノキの花には強い香りがあり、『園芸植物大事典』と『植物の世界』で記述に違いがあるが、少なくとも近年までは香水の原料とされていたようだ。
 
完全なつぼみ ( 奥 ) たくさん付く花
花序には7〜10個程度の花が付く。左の写真の手前のふたつは、まだ「開花」とは言えまい。この状態での花弁の長さは7mm ぐらいである。
 
成長途中の花 成熟した花
花の機能として受粉の準備ができた時きに、初めて香りを放ち 虫を誘うことになる。右の写真では、内側の3枚の花弁中央部が茶色くなっている。
 
中央が雌しべ、その周りを数多くの雄しべが取り囲んでおり、強烈な香りがする。花を小瓶に差しておくだけで、その水に香りが移った。
 
どんな花でも つぼみの時は小さく、開花するまで あるいは 開花してからも大きくなるのが普通である。
しかし イランイランノキの花は、開花時に1cmぐらいの花弁が、最後は7〜9cmにまで伸びてしまう。
 
成長する花弁
つぼみの状態と 開花後 時間が経った花。
ようやく 黄色くなってきているが、この程度では まだ香りはそれほどではない。
 
シンガポール植物園の花は、先端がカールする傾向がある。
 
咲き始めは完全に黄緑色の花が、黄色く色付くまでに、少なくとも2週間はかかりそうだ。
 
3月22日 夕方 4月3日 朝 (11日後)
すでに開花した花が 10日以上経っても まだ色づいたとは言えない状態である。
 
実のすがた
ひとつの花に複数の実が生る「集合果」が、バンレイシ科の特徴である。果床には短い柄で付いている。
バンレイシなどのように合生 (合着) していないので、花がたくさん咲いた後のようにも見える。
 
熟すと黒くなり、各果実には 茶色の平たい種子が複数はいっている。
 
名前の由来 イランイランノキ Cananga odorata
 
和名?: イランイランノキ
英語名 あるいは現地名そのままで 和名と言えるかどうか疑問であるが、とにかくユーモラスな名前である。
 
中東の「イラン」の木かと思ってしまう。
 
これはインドネシアのタガログ語で「花のなかの花」という意味で、香りのよい花を賞賛したものである。
種小名 odorata : 芳香のある という意味
「臭気がある」という意味でも使われる。
 
大量の花を蒸留して香水原料の精油を作る。さらにカナンガ油と呼ばれる二番油も作られるという。
Cananga イランイランノキ属 : ?
朝日新聞社『植物の世界』によると、イランイランと同じく インドネシアの、アンボン島の現地名から命名されたという。
由来や意味は不明。

事典によると2種のみ、Index Kewensis によると4種があるようだ。
バンレイシ科 Annonaceae : ハイチの地名に由来する
バンレイシについては、別項「トゲバンレイシ」のアンノナ属を参照されたい。
 
参考文献 : Index Kewensis Ver.2.0/Oxford University Press、
        園芸植物大事典/小学館、
        週間朝日百科/植物の世界・朝日新聞社、
        植物学名辞典/牧野富太郎・清水藤太郎
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